パナソニック鉛電池事業を譲受(2015年・GSユアサの決断)

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論点縮小市場で同業の撤退分を引き受けるか
GSユアサ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
製造会社ごと引き取る方式での取り込みと、国内鉛蓄電池事業の集約

何をなぜ決めたか:製造会社ごと引き取る方式での取り込みと、国内鉛蓄電池事業の集約

概要

2015年10月29日、GSユアサはパナソニックの鉛蓄電池事業を譲り受けることで基本合意し、2016年4月15日に株式譲渡契約等を締結した。国内のパナソニック ストレージバッテリー株式85.1%と中国・瀋陽の出資持分、タイの鉛蓄電池事業を対象とし、同年9月30日を企業結合日として取得を完了、同社をGSユアサ エナジーへ改称した。村尾修社長のもとで進めた国内鉛蓄電池の集約の一環である。

背景

国内の自動車用鉛蓄電池は補修需要の縮小で大幅な拡大が望めない成熟市場となっていた。GSユアサ自身が日本電池と湯浅の統合で生まれた会社であり、残る国内の競合はパナソニック系だった。パナソニックは成長分野への集中に向けたグローバル事業再編のなかで、鉛蓄電池から退く方針を選んだ。

内容

譲受の対象は株式取得2社(国内のパナソニック ストレージバッテリー、中国のパナソニック ストレージバッテリー瀋陽)と事業譲受1社(パナソニック エナジー タイの鉛蓄電池事業)で、従業員は合わせて約1,500名、取得価格は約300億円の概算とされた。基本合意に含まれていたインドのパナソニック・ミンダ ストレージバッテリー インドは、生産・販売活動を行っていないとして譲受対象外となった。国内のパナソニック ストレージバッテリーについては、取得原価16,057百万円で議決権の85.1%を取得し、残る14.9%を2年後に追加取得する枠組みを取った。

含意

譲受でGSユアサは、縮小する国内自動車用鉛蓄電池の供給を一段集約し、グローバルシェアの拡大につなげた。自動車電池国内セグメントの外部売上高は2016年3月期の50,986百万円から2017年3月期に67,598百万円、2018年3月期に89,240百万円へ伸び、セグメント利益も3,291百万円から6,143百万円へ増加した。2018年9月28日には残る14.9%を2,811百万円で追加取得して完全子会社とした。

いつ何が起きたか5件
考察:撤退する側と、引き受ける側
考察

考察:撤退する側と、引き受ける側

拡大の望めない市場で競合の事業を買収すると聞けば、逆張りの一手に見えるかもしれない。だが、この譲受の芯にあるのは、鉛蓄電池を捨てる事業ではなく守る事業として抱え直す判断であった。パナソニックが成熟市場から退いたのに対し、GSユアサは約300億円の概算価格で国内・瀋陽・タイの鉛蓄電池をまとめて引き取り、国内のパナソニック ストレージバッテリーは取得原価16,057百万円で85.1%を取得してGSユアサ エナジーとして連結に組み入れた。同じ成熟市場を、一方は撤退する対象と読み、一方は集約して守る対象と読んだところに、この取引の性格が表れている。

もっとも、拡大が望めないと自ら記した市場の事業を買収した以上、その報われ方は、鉛蓄電池をどれだけ効率よく回せるかにかかっていた。GSユアサは統合で国内二強を一つにし、海外では地産地消の拠点を広げ、この譲受でパナソニック系まで取り込んで、鉛蓄電池の担い手をみずからに寄せていった。集約が供給の重複を減らす一方で、成熟した本業をどこまで稼ぐ力へ変えられるかは、その後の運営に残された課題であったといえる。撤退する側と引き受ける側の差は、同じ市場をどう値踏みしたかの差でもあったと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

GSユアサ:自動車電池国内セグメントの推移

外部顧客への売上高(百万円)セグメント利益率(%)
GSユアサ:自動車電池国内セグメントの推移
(百万円)外部顧客への売上高セグメント利益備考
2012年3月期58,7844,266
2013年3月期55,6483,931
2014年3月期56,9053,310
2015年3月期51,7472,397
2016年3月期50,9863,291
2017年3月期67,5985,676GSユアサ エナジーの業績は10月から6か月分。利益はのれん等償却前に測定を変更
2018年3月期89,2406,143譲り受けた事業の通年寄与が表れた最初の期
2019年3月期91,4607,766
2020年3月期88,0596,976
2021年3月期83,6398,669
2022年3月期81,4945,878
出所:ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第8期〜第18期【セグメント情報等】(報告セグメントごとの売上高、利益又は損失。2017年3月期以前のセグメント名は「国内自動車電池」)
出所:ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第8期〜第18期【セグメント情報等】(報告セグメントごとの売上高、利益又は損失。2017年3月期以前のセグメント名は「国内自動車電池」)

GSユアサ:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
GSユアサ:のれんと無形固定資産の推移
(百万円)のれん無形固定資産総資産備考
2012年3月期−2,172278,426のれんは連結貸借対照表に区分掲記がない
2013年3月期−2,347290,368
2014年3月期−2,390340,462
2015年3月期−2,637359,522
2016年3月期−4,073346,523
2017年3月期5,59914,332370,508取得でのれん6,084と無形固定資産5,341を計上し、区分掲記が始まった
2018年3月期4,34912,226389,216総資産は税効果会計の表示区分変更を反映した遡及処理後の数値
2019年3月期3,34710,357384,243
2020年3月期1,9956,426385,416
2021年3月期6594,419431,913
2022年3月期02,894480,7635年償却が終わり、のれんの残高はなくなった
出所:ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第8期〜第18期(連結貸借対照表)
出所:ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第8期〜第18期(連結貸借対照表)

譲受の条件

譲受の条件
科目概要備考
契約の相手会社パナソニック及びその子会社基本合意は2015年10月29日、株式譲渡契約等の締結は2016年4月15日
株式取得の対象パナソニック ストレージバッテリー/同瀋陽所在地は日本と中国。譲受後の議決権の所有割合は85.1%と95%。譲受前は0%
事業譲受の対象パナソニック エナジー タイ鉛蓄電池事業と乾電池事業を営み、鉛蓄電池事業のみを譲受対象とした
譲受対象外となった会社パナソニック・ミンダ ストレージバッテリー インド基本合意では対象だった。生産・販売活動がなく売上高に影響はないとされた
譲受対象事業の従業員数約1,500名株式取得2社と事業譲受1社の合計。2016年4月15日時点
取得価格約300億円取得価額の合計の概算で、株式譲渡契約等で定めた方法により調整される予定とされた
譲受対象事業の売上高約500億円(2015年3月期)2013年3月期は約400億円、2014年3月期は約450億円。単純合算で監査を受けていない
企業結合日2016年9月30日連結損益計算書への取り込みは2016年10月1日から2017年3月31日まで
法的形式と議決権比率現金を対価とする株式の取得・85.1%パナソニック ストレージバッテリー。結合後の商号は㈱GSユアサエナジー
取得原価16,057百万円対価は現金及び預金。取得のための支出は現金同等物を差し引いた純額12,971百万円
取得関連費用493百万円アドバイザリー費用等
受け入れた資産・負債資産20,225百万円・負債8,506百万円固定資産11,193百万円を含む。非支配株主持分は1,746百万円
のれん6,084百万円今後の事業展開で期待される将来の超過収益力から発生。5年間の均等償却
のれん以外の無形固定資産5,341百万円契約関連資産4,104(5年)、技術関連資産1,143(10年)、商標権94(20年)
通期換算の業績影響売上高29,176百万円・営業利益454百万円期首に企業結合が完了したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
完全子会社化2018年9月28日・2,811百万円残る14.9%を追加取得。2016年の株式取得と一体の取引として会計処理した
出所:ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第12期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第13期(2017年3月期)【企業結合等関係】・第15期(2019年3月期)【企業結合等関係】
出所:ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第12期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・第13期(2017年3月期)【企業結合等関係】・第15期(2019年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • GSユアサ「パナソニック株式会社の鉛蓄電池事業譲受に関する基本合意書締結のお知らせ」(2015年10月29日)
  • GSユアサ「パナソニック株式会社の鉛蓄電池事業譲受に関する株式取得完了のお知らせ」(2016年10月3日)
  • ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第12期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
  • ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第13期(2017年3月期)【企業結合等関係】【セグメント情報等】
  • ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書 第15期(2019年3月期)【企業結合等関係】
  • ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書「第12期(2015年4月1日〜2016年3月31日)有価証券報告書」
  • ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書「第13期(2016年4月1日〜2017年3月31日)有価証券報告書」
  • ジーエス・ユアサ コーポレーション 有価証券報告書「第15期(2018年4月1日〜2019年3月31日)有価証券報告書」

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