GSユアサの直近の動向と展望
GSユアサの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
車載用LiBの採算悪化と売価スキームの見直し
阿部貴志体制の最初の課題は、車載用LiBの採算性である。2025年3月期4Qの営業利益25億円は、新車メーカーとの売価一括是正による一時的な押し上げが主因で、2026年3月期の車載用LiB営業利益予想は20億円にとどまった。見直し後の第六次中計目標(売上1,000億円・営業利益50億円)から30億円下方修正した水準である。阿部は「営業利益20億円というのはあるべき姿ではない」と述べ、目標未達を明示した(決算説明会 FY24)。20年の仕込みを経てセグメント独立した事業が、採算面で合格点に届かない状態である。車載LiBの単価決定権を完成車メーカーが握る構造は、第1期の新車メーカー向け鉛蓄電池と同じ性格を持つ。
原因は原材料と売価のスプレッド悪化である。リチウム価格の急落が半年遅れで売価へ反映されるスライド方式のため、市況下落局面で売価が先行して下がり、粗利が縮む構造だった。2024年度内に主要メーカーと契約形態変更の交渉を進めており、2025年度にはスプレッド影響を最小化するスキームへ変更する方針である。2026年3月期2Qでは、鉛蓄電池事業部が長年築いた新車メーカーとの価格交渉ノウハウをLiBへ横展開したことで、HEV用の売価是正が実を結び始めた(決算説明会 FY25-2Q)。過去20年、鉛蓄電池部隊が補修市場の崩壊を経て体得してきた単価設計の知見が、車載LiBの採算改善へ初めて使われる段階に入っている。
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-2Q
第七次中計が掲げる産業用LiBへの投資宣言
2025年11月の第2四半期決算説明会で、阿部は第七次中計の方向性として収益基盤を固めたうえで攻めに転じると説明した。既存事業で稼いだキャッシュを注力分野へ投じる計画で、特に産業用リチウムイオン電池(LFP・大型分野)への本格投資を明言した。これまでは栗東事業所の既存ラインを流用して産業用LiBを作ってきたが、LEJ栗東事業所の新規大幅増設を検討している(決算説明会 FY25-2Q)。車載LiBの採算問題が棚上げされたのではなく、産業用という別の伸びしろを新たに立ち上げる構えである。鉛蓄電池で稼ぎLiBへ仕込む第2期の型が、車載ではなく産業用という軸で繰り返される布陣となる。
BEV用LiBについては、BEVの潮流が遅れている現実を踏まえ、滋賀横江工場のフル稼働をホンダと協議している。工場はBEV用とPHEV用の両方を生産できる設計で、BEV需要が想定を下回った場合はPHEV用をメインへ切り替える。投資済みの設備をどう稼働させ続けるかという運用設計の段階に入った。防衛関連ビジネスも成長領域と位置づけ、潜水艦用LiBの置換需要や人工衛星用・熱電池等の特殊電池で10%超の利益率を見込む。第1期に補修市場で稼いだ構図と同じく、値下げ圧力の弱い顧客層へ回帰しつつLiBを次の本業にできるか、第七次中計がその試金石になる。鉛の時代に得意客から離れて苦しんだ歴史を踏まえ、再び弱い交渉相手を抱える領域へ事業重心を戻す構えである。
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-2Q