Chandler Macleodなど豪州2社を買収(2015年・リクルートHDの決断)

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論点アジア太平洋の派遣基盤を買収で得るか
リクルートHD:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
相次ぐ取得による、北米・欧州に続くアジア太平洋の人材派遣基盤の確保

何をなぜ決めたか:相次ぐ取得による、北米・欧州に続くアジア太平洋の人材派遣基盤の確保

概要

2015年1月、リクルートホールディングスが豪州の人材派遣会社2社の取得を相次いで決めた経営判断。1月30日にPeoplebank Holdings Pty Ltdの議決権100%を子会社16社ごと取得し(取得原価101億97百万円、みなし取得日1月31日)、1月14日にはChandler Macleod Group Limitedの発行済株式100%を豪州子会社を通じて290百万豪ドル(約267億円)で取得することを決め、4月16日に子会社とした。

背景

会社は安定的かつ持続的な成長を目指して国内既存事業の強化とグローバルな事業基盤の獲得・拡大を進めており、長期ビジョンとして2020年を目途に人材メディア事業と人材派遣事業でグローバルNo.1となることを掲げていた。人材派遣の海外展開はすでに北米と欧州で組み上がっており、残る空白がアジア太平洋であった。2014年10月の上場で調達した資金の一部が、その空白を埋める原資に充てられている。

内容

取得した2社は性格が異なる。Peoplebankは豪州・香港・シンガポール等で事業を展開し、取得原価101億97百万円に対してのれんは暫定59億16百万円、翌期の配分確定で33億88百万円(5年定額)に落ち着いた。Chandler Macleodは2014年6月期の連結売上高1,413百万豪ドルを持つ豪州等の総合人材派遣会社で、子会社112社ごと取得原価267億13百万円で取得し、のれん160億10百万円(7年定額)と顧客関連資産148億85百万円を計上した。

含意

海外派遣領域の売上高は2015年3月期の2,856億円から2016年3月期に4,758億円(前期比66.6%増)へ伸び、会社は2020年を目処に同領域を約1兆円規模へ育てる方針を掲げた。一方で豪州に帰属するのれんは、2020年3月期第4四半期にChandler Macleod関連で78億円、2023年3月期に44億円の減損損失を計上し、2022年3月期末の76億円から2025年3月期末には31億円まで縮んでいる。

いつ何が起きたか9件
考察:3か月で2社を買収した理由
考察

考察:3か月で2社を買収した理由

二つの買収は別々の案件でありながら、有価証券報告書の説明はほとんど同じ文で始まる。2010年の米The CSI Companies買収で国内の経営手法が海外でも応用可能と判断し、2011年に米欧へ広げ、その展開の速度と規模をさらに高める先として豪州を選んだ、という筋である。同じ理由づけを二度書いたということは、この2社が個別の投資判断というより、地域を一つ埋めるための一組として扱われていたことを示している。1月14日にChandler Macleodの取得を決め、1月30日にPeoplebankの株式を取得したという日付の近さも、それを裏づけている。

もっとも、二つの買い物の重さは同じではなかった。Peoplebankののれんは暫定59億16百万円が翌期の配分確定で33億88百万円まで下がり、その差は顧客関連資産や商標権へ振り替えられている。対してChandler Macleodは、のれん160億10百万円と顧客関連資産148億85百万円を積み、償却期間も7年と長く置かれた。その豪州ののれんが、2020年3月期に78億円、2023年3月期に44億円と二度削られ、2025年3月期末には31億円しか残っていない。海外派遣領域を2020年に約1兆円へという当時の目標に照らせば、豪州はその規模を運ぶ足場にはなりきらなかっただろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

リクルートHD:人材派遣事業と海外派遣領域の売上高

うち海外派遣領域(億円)国内派遣領域(億円)
リクルートHD:人材派遣事業と海外派遣領域の売上高
(億円)人材派遣事業うち海外派遣領域セグメント利益備考
2015年3月期6,7522,856407Peoplebankはみなし取得日が1月31日で、この期に業績を含まない
2016年3月期8,9004,758496Chandler Macleodが4月16日から、Peoplebankが通期で寄与した
2017年3月期10,6876,052633USG People B.V.が第3四半期から加わる
2018年3月期12,9887,895727IFRSへ移行。前期をIFRSで組み替えると売上収益11,708億円
2019年3月期12,9027,477829
2020年3月期12,4816,803812セグメント利益は調整後EBITDA。豪州で78億円ののれんを減損した
2021年3月期11,9886,288762
2022年3月期−−931売上収益は前期比15.0%増との記述のみで、実額の記載がない
2023年3月期15,852−1,022地域別の内訳が日本と欧州・米国・豪州の区分に改まった
2024年3月期16,342−979
2025年3月期16,669−974
出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第55期〜第57期(2015年3月期〜2017年3月期)【業績等の概要】人材派遣事業・海外派遣領域 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第58期〜第65期(2018年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】人材派遣事業
出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第55期〜第57期(2015年3月期〜2017年3月期)【業績等の概要】人材派遣事業・海外派遣領域 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第58期〜第65期(2018年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】人材派遣事業

リクルートHD:豪州に帰属するのれんの推移

豪州(十億円)
リクルートHD:豪州に帰属するのれんの推移
(十億円)豪州人材派遣事業連結合計備考
2020年3月期5.5184.8383.1第4四半期にChandler Macleodに関連する78億円ののれんを減損
2021年3月期7197.7399.3
2022年3月期7.6208.9436
2023年3月期3216462.9人材派遣事業の豪州で44億円ののれんの減損損失を計上した
2024年3月期3.3230.2510.6同じ期に米国で75億円ののれんの減損損失を計上している
2025年3月期3.1231508.1
出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第56期(2016年3月期)【企業結合等関係】のれんの金額と償却期間 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第60期〜第65期(2020年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】各セグメントに帰属する地域別のれん金額
出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第56期(2016年3月期)【企業結合等関係】のれんの金額と償却期間 / リクルートホールディングス 有価証券報告書 第60期〜第65期(2020年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】各セグメントに帰属する地域別のれん金額

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業Peoplebank Holdings Pty Ltd事業の内容は人材派遣会社の経営管理。子会社16社も同時に取得した
被取得企業Chandler Macleod Group Limited事業の内容は人材派遣会社の経営管理。子会社112社も同時に取得した
取得の法的形式現金を対価とする株式取得2社とも同じ。取得企業を決定した根拠も現金を対価とする株式取得であること
取締役会の決定日2015年1月14日Chandler Macleod社の発行済株式100%を豪州子会社を通じて取得すると決定
企業結合日2015年1月30日Peoplebank。みなし取得日は1月31日で、2015年3月期に業績を含まない
企業結合日2015年4月16日Chandler Macleod。連結した業績は2015年4月1日から12月31日まで
取得した議決権比率100%2社とも結合前は0%。2025年3月期の関係会社の状況でも100.0%
取得する株式の数547,985,086株Chandler Macleod社の普通株式。Peoplebankは株式数の記載がない
取得原価10,197百万円Peoplebank。現金9,705百万円と取得に直接要した費用492百万円の合計
取得原価26,713百万円Chandler Macleod。対価は全額現金。取得価額は290百万豪ドル(約267億円)
取得関連費用596百万円Chandler Macleodのアドバイザリー費用等。決定時の概算額は6億円
支払資金の調達方法上場によって調達した資金の一部Chandler Macleodの取得について記載。2014年10月に東証へ上場している
のれん3,388百万円Peoplebank。暫定5,916百万円を翌期に確定させた。5年間の定額法
のれんの修正額△2,528百万円顧客関連資産△2,714、商標権△708、繰延税金負債738等への振り替え
のれん16,010百万円Chandler Macleod。7年間の定額法。将来の超過収益力から発生
のれん以外の無形固定資産顧客関連資産14,885百万円ほかChandler Macleod。償却8-15年。商標権1,987(10年)、ソフトウエア764
受け入れた資産合計11,120百万円Peoplebank。流動資産9,843百万円、固定資産1,277百万円
引き受けた負債合計6,839百万円Peoplebank。流動負債6,621百万円、固定負債218百万円
受け入れた資産合計30,883百万円Chandler Macleod。流動資産12,637百万円、固定資産18,246百万円
引き受けた負債合計20,181百万円Chandler Macleod。流動負債12,561百万円、固定負債7,620百万円
通期換算した売上高の増加51,959百万円Peoplebank。2014年2月1日から2015年1月31日までの実績。EBITDA1,299
通期換算した売上高の増加27,747百万円Chandler Macleod。EBITDAは△446百万円。監査を受けていない概算額
被取得企業の規模連結売上高1,413百万豪ドルChandler Macleodの2014年6月期。連結EBITDA38、連結総資産389百万豪ドル
結合の理由海外人材派遣の加速・拡大国内で確立した経営手法が海外でも応用可能と判断した取り組みの延長
出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第55期(2015年3月期)【企業結合等関係】【重要な後発事象】 / 第56期(2016年3月期)【企業結合等関係】
出所:リクルートホールディングス 有価証券報告書 第55期(2015年3月期)【企業結合等関係】【重要な後発事象】 / 第56期(2016年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第55期(2015年3月期)【企業結合等関係】【重要な後発事象】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第56期(2016年3月期)【企業結合等関係】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第55期〜第57期(2015年3月期〜2017年3月期)【業績等の概要】【対処すべき課題】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第58期〜第65期(2018年3月期〜2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • リクルートホールディングス 有価証券報告書「第65期(2025年3月期)【関係会社の状況】」

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