サンリオMR.MEN取得と欧米ライセンス転換:国内物販で稼ぐ会社から、欧米でロイヤリティを取る会社への組み替え

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時期 2009年5月
意思決定者(推定) 辻信太郎・鳩山玲人 サンリオ 社長・サンリオ 取締役 海外統括事業本部長
論点 海外ライセンス事業への転換とキャラクターの拡充
概要

2009年5月に公表した海外成長戦略は、国内の物販で稼ぐ会社を、欧米でキャラクターの使用許諾料を取る会社へ組み替えるものだった。経営の基軸を売上高指向から利益指向へ転換し、国内外でライセンスビジネスに注力することを基本戦略に据えた。

その前年には他社流通のキャラクター商品の取引形態をロイヤリティ形態へ一本化しており、2009年3月期の売上高は前期比25.7%減の697億円へ落ちた一方、営業利益は65億円と前期比0.6%減にとどまった。2008年5月に三菱商事から入社した鳩山玲人氏が欧米のライセンシー開拓を担った。

背景

2005年3月期に1,011億円あった連結売上高は2009年3月期に697億円まで縮み、国内物販事業は消費環境の悪化と市場の縮小に直面していた。不採算店舗の整理とサプライチェーンの見直しが当面の課題として残り、テーマパーク事業も5期続けて営業損失を出していた。

一方で海外は、欧州地域でハローキティの認知が勢いづき、物販とライセンスがともに伸びていた。未開拓の中東やBRICsを含め、各国の代理店企業とライセンシーの開拓を成長の新たな原動力に育てる構えを取った。

内容

欧米では現地法人が商品を仕入れて売る形から、ライセンシーを開拓してロイヤリティを受け取る形へ収益の柱を移した。マネジメントの現地化を進め、欧州で築いた市場を保ちながら米州の成長戦略とアジア事業の再構築に着手した。

2011年12月、英国にSanrio Global Ltd.を新設し、Chorion LimitedからMister Men Ltd.とその100%子会社2社の発行済全株式を現金で取得した。1971年に英国で生まれた『MR.MEN AND LITTLE MISS』の権利を押さえ、キャラクター・ポートフォリオを広げる狙いだった。

含意

ロイヤリティ売上高は2010年3月期の215億円から2014年3月期の349億円へ伸び、北米セグメントの売上高は48億円から118億円へ増えた。連結営業利益は同じ4期で92億円から210億円へ膨らみ、売上高が横ばいのまま利益だけが倍以上になる構造へ変わった。

もっとも欧州セグメントの売上高は2011年3月期の149億円を頂点に減り続け、2015年3月期には85億円まで戻った。2016年に鳩山玲人氏が退社して辻家中心の経営に戻り、欧米のライセンシー開拓を担った体制は解けた。

筆者の見解

物販の会社が権利の会社に変わった4年

この戦略が動かしたのは、売上高ではなく利益の出どころだった。2010年3月期から2014年3月期にかけて連結売上高は738億円から770億円へほとんど動かないのに、営業利益は92億円から210億円へ膨らんでいる。差を生んだのはロイヤリティ売上高の215億円から349億円への伸びで、商品を仕入れて売る仕事を手放し、権利を貸す仕事へ入れ替えた結果が数字にそのまま出た形だといえる。英国3社の取得も、負債が資産を上回る会社を実質的な対価なしで引き受け、86種類のキャラクターの権利だけを取りにいった取引であった。

もっとも、権利で稼ぐ構造は伸びるときも縮むときも速い。欧州セグメントの売上高は2011年3月期の149億円を頂点に4期続けて減り、2015年3月期には85億円まで戻っている。ライセンシーの開拓で立ち上がった収益は、そのライセンシーとの契約が切れれば同じ速さで消える性質を持つ。2016年に鳩山玲人氏が退社し辻家中心の経営に戻ったあと、この戦略が残したのは高い利益率そのものではなく、物販に頼らずに稼げると分かったことのほうだったのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

英国キャラクター事業会社を取得した条件

科目 概要 備考
被取得企業 Mister Men Limited.(英国ロンドン) 100%子会社2社を含む3社。事業の内容はキャラクターライセンス事業
取得したキャラクター MR.MEN AND LITTLE MISS 1971年に英国で誕生。86種類が登場する絵本は世界30カ国以上で累計1億冊以上
企業結合を行った主な理由 キャラクター・ポートフォリオの拡大 ライセンス事業の強化を目指し、対象会社の発行済全株式を取得した
取得の法的形式 現金を対価とする株式取得 英国に新設したSanrio Global Ltd.がChorion Limitedから取得した
取締役会決議 2011年12月2日 同年12月5日に契約を締結した
企業結合日 2011年12月5日 連結財務諸表に含めた被取得企業の業績は12月5日から12月31日まで
取得した議決権比率 100% 企業結合日直前に所有していた議決権比率は-%
取得原価 0百万円 対価の内訳は株式の取得額のみで、百万円単位では0と表示している
受け入れた資産 3,472百万円 流動資産317百万円、固定資産3,155百万円
引き受けた負債 3,936百万円 流動負債136百万円、固定負債3,799百万円
のれん 463百万円 10年間にわたる均等償却。欧州セグメントに計上した
無形固定資産への配分額 3,155百万円 著作権及び商標権が2,847百万円。加重平均償却期間は全体で20年
取得した子会社の資本金 Mister Men Ltd.は92ポンド THOIPは100ポンド、Mister Films Ltd.は200ポンド。いずれも英国法人

出所:サンリオ 有価証券報告書 第52期(2012年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【関係会社の状況】

サンリオ:ロイヤリティ売上高の推移

(百万円) 連結計欧州北米 備考
2005年3月期 報告セグメントが事業の種類別で、ロイヤリティ売上高の区分開示がない
2006年3月期
2007年3月期
2008年3月期
2009年3月期 他社流通の取引形態をロイヤリティ形態へ一本化した期。区分開示はない
2010年3月期 21,5358,3763,329 海外成長戦略を公表した期。地域別の報告セグメントに改めた最初の期
2011年3月期 26,85811,9143,777
2012年3月期 29,88211,6295,735 12月に英国3社を取得。連結に取り込んだのは12月5日から12月31日まで
2013年3月期 31,1829,6728,060
2014年3月期 34,9749,60810,102 北米が欧州を上回る。連結計は窓のなかで最も大きい
2015年3月期 33,4478,4217,362
ロイヤリティ売上高
連結計(百万円)

出所:サンリオ 有価証券報告書 第50期〜第55期【セグメント情報】(うちロイヤリティ売上高)

サンリオ:欧州・北米セグメントの売上高とセグメント利益

(百万円) 欧州売上高欧州利益北米売上高北米利益 備考
2005年3月期 報告セグメントはソーシャル・コミュニケーション・ギフトなど事業の種類別
2006年3月期
2007年3月期
2008年3月期
2009年3月期
2010年3月期 12,2054,1024,887931 外部顧客への売上高とセグメント利益。連結の営業利益は9,289百万円
2011年3月期 14,9865,4305,593782 欧州の売上高はこの期が最も大きい
2012年3月期 13,1734,7947,4322,133
2013年3月期 10,1863,4829,8523,495 北米の利益が欧州に並ぶ。連結の営業利益は20,198百万円
2014年3月期 9,8533,19111,8833,988 連結の営業利益は21,019百万円で、窓のなかで最も大きい
2015年3月期 8,5832,6168,9941,827

出所:サンリオ 有価証券報告書 第50期〜第55期【セグメント情報】(報告セグメントごとの売上高、利益)

サンリオ:無形固定資産と総資産の推移

(百万円) 無形固定資産総資産 備考
2005年3月期 93,520 連結貸借対照表の表示区分が異なり、無形固定資産を照合できていない
2006年3月期 97,163
2007年3月期 96,253
2008年3月期 88,971
2009年3月期 44879,087
2010年3月期 49385,765
2011年3月期 33883,666
2012年3月期 3,86988,748 英国3社の取得で著作権及び商標権2,847百万円とのれん463百万円を計上
2013年3月期 4,00097,425 のれんの未償却残高は281百万円まで減る
2014年3月期 4,865117,585
2015年3月期 5,254122,124
無形固定資産
無形固定資産(百万円)

出所:サンリオ 有価証券報告書 第49期〜第55期(連結貸借対照表) / サンリオ 有価証券報告書 第49期・第50期・第55期【主要な経営指標等の推移】

同じ問いに直面した会社

買収によるグローバル経営2009年久光製薬株式公開買付けを通じて進めた米国の医薬品会社の全株取得米国における医療用医薬品事業の体制構築
2009年スクウェア・エニックス・ホールディングス13年後のEmbracerへの売却海外開発拠点の保有と資本配分
2010年資生堂初の大型クロスボーダーM&Aとなった海外ブランドの取り込み北米市場の強化とグローバルブランドの獲得
2010年カナデビア欧州・豪州の環境プラント企業の連続取得と、日立造船からカナデビアへの商号変更環境事業の海外展開と社名
2008年第一三共買収による事業構造の二本立て化と「複眼経営」への移行事業ポートフォリオと海外展開
出典・参考
  • サンリオ 適時開示「他社流通におけるキャラクター商品の取引形態の変更、及び業績(売上高)への影響について」
  • サンリオ 有価証券報告書「第49期(2009年3月期)【対処すべき課題】」
  • サンリオ 有価証券報告書「第50期(2010年3月期)【対処すべき課題】【セグメント情報】」
  • サンリオ 有価証券報告書「第52期(2012年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】」
  • サンリオ 有価証券報告書「第55期(2015年3月期)【セグメント情報】」

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