サンリオ ハローキティの誕生 自社キャラクターを版権で収益を上げるライセンスモデルの確立
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何をなぜ決めたか
- 概要
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1974年11月、前年に商号をサンリオへ改めたばかりの物販中心の会社が、社内で描かれた一匹の白い子猫を商品に載せた。翌1975年7月期の売上高は91.5億円と前期の46.8億円から倍増し、1976年4月には自社開発デザイン・キャラクターを他社の製品に使わせる使用許諾提携業務を開始する。
自社で生んだ図柄を自社の商品に載せて売り、同じ図柄を他社にも貸して料率で受け取る二階建ての収益構造が、ここで形になった。1976年7月期の売上高は195億円、当期純利益は14.6億円に達している。
- 背景
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出発点は借りる側だった。グリーティングカードの製造販売はハルマークからの技術援助契約に、PEANUTSのキャラクターを使った帽子や袋物、スニーカーの販売権は米国の権利元から取得した契約に依っており、この構図はキティが生まれた10年後の1984年7月期でも変わっていない。借りた権利は対象の品目も契約期間も相手が決め、更新されなければそこで終わる。辻信太郎氏は他社キャラクターに頼る限界を感じ、贈る心に値をつけるギフト事業を土台に、自前の図柄を持つ道を探った。
- 内容
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制作室の20代女性社員が動物や人物を毎日描くなかからキティが生まれた。辻信太郎氏は当初 『愛嬌もない』 とみたが、試験的に置いた小物が予想を超えて売れた。テスト販売で売れ筋を選ぶ制作体制と問屋を通さない直販網を組み、1976年4月から他社への使用許諾を始めた。
許諾の中身は、特定の製品に対して自社の特定のデザイン・キャラクターを使う権利を与え、対価は標準小売価格に一定の料率を乗じて受け取る形である。契約期間は締結日から満1年で、更新は毎年の判断に委ねられた。
- 含意
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在庫を抱えない版権収入の種がここで蒔かれた。ただし、その額が外から見えるようになるのは上場後で、1983年7月期のロイヤルティ収入は13億6,822万円、売上高582億円の2.3%にとどまる。翌1984年7月期は15億1,692万円で、使用許諾の相手先は国内が森永製菓ほか58社、海外がCBS TOYSほか16社だった。
金額は独立した区分を持たず、ギフト商品の売上高に含めて計上されている。零細企業の分野だったキャラクター商品を企業化した功績と、その版権が本業を支えるまでの距離が、同時にここに表れている。
いつ何が起きたか 11件
筆者の見解
借りる側から、貸す側へ
この判断の核心は、モノの機能ではなく"かわいい"という情緒に値をつけ、それを自社で生んだ図柄に載せた点にある。借りた権利は、対象の品目も契約期間も相手が決める。自社の図柄なら、誰にどの製品でどれだけの料率で使わせるかを自分で決められる。辻信太郎氏が愛嬌に乏しいとみた子猫が売れた事実は、どのデザインが当たるかを経営者が読み切れないことも示している。だからこそテスト販売で売れ筋を選び、直販網で運ぶ仕組みが要った。生む力と選ぶ力と届ける力の三つを統合したところに、この事業の性格がうかがえる。
版権が会社を支える収益源になるまでには長い時間がかかった。1983年7月期のロイヤルティ収入は売上高の2.3%で、1980年代を通じてその比率は2%前後を上下している。この時期のサンリオを動かしていたのは、あくまで自社で企画し自社で売るギフト商品であり、使用許諾はその余白から生まれる副収入だったとみるのが妥当だろう。キティという一頭の当たりに収益が偏る弱さも、後の世代へ持ち越された。1974年に社内から生まれた一匹の白い子猫は、会社の原型を形づくると同時に、その原型をどう更新するかという問いも手渡している。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
使用許諾(ライセンス)の条件
使用許諾(ライセンス)の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 供与の開始 | 1976年4月 | 自社開発デザイン・キャラクターを他社製品に使用させる使用許諾提携業務として開始 |
| 許諾の内容 | 特定の製品にデザイン・キャラクターを使用する権利 | 品目を限って許諾する。自社商品への使用は許諾の対象外 |
| 対価の算定(国内) | 標準小売価格に一定料率を乗じた金額 | 森永製菓ほか58社と締結(1984年7月31日現在) |
| 対価の算定(海外) | 標準小売価格又は卸売価格に一定料率を乗じた金額 | 米国ほかでCBS TOYSほか16社と締結(1984年7月31日現在) |
| 契約期間 | 契約締結日から満1年 | 更新可能。国内・海外とも同じ条件で、毎年の更新判断に委ねられる |
| ロイヤルティ収入 | 1,516,929千円 | 1984年7月期。売上高68,154,988千円の2.2% |
| 収入の計上区分 | ギフト商品に含める | 独立した区分を持たない。ビデオのロイヤルティは映画及びビデオに含める |
| 他社から取得していた権利 | PEANUTSキャラクターの販売権など | 帽子・袋物は1980年1月から1987年12月まで、スニーカー等は1年ごとの更新 |
出所:サンリオ 有価証券報告書 第24期(1984年7月期)【経営上の重要な契約】【営業の状況】、第27期(1987年7月期)【沿革】
売上高と当期純利益の推移(単体)
サンリオ:売上高と当期純利益の推移(単体)
| (億円) | 売上高 | 当期純利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1970年7月期 | 10.5 | − | CSVのみ。有報の逐語で照合できていない |
| 1972年7月期 | 12.6 | 0.37 | CSVのみ。有報の逐語で照合できていない |
| 1973年7月期 | 18.6 | 0.77 | 4月に商号をサンリオへ変更。有報の逐語では照合できていない |
| 1974年7月期 | 46.8 | 2.41 | 2月に自社開発キャラクターのギフト商品を発売。有報では照合できていない |
| 1975年7月期 | 91.5 | 5.57 | 1974年11月にキティを企画した期。有報の逐語では照合できていない |
| 1976年7月期 | 195 | 14.6 | 4月に使用許諾提携業務を開始。有報の逐語では照合できていない |
| 1977年7月期 | 322 | 27.8 | CSVのみ。有報の逐語で照合できていない |
| 1978年7月期 | 347 | 25.9 | CSVのみ。有報の逐語で照合できていない |
| 1979年7月期 | 337 | 13.8 | CSVのみ。有報の逐語で照合できていない |
| 1980年7月期 | 396 | 9.27 | 手元の有報は1983年7月期まで。それ以前は逐語で照合できていない |
出所:『サンリオの奇跡 : 夢を追う男たち』(角川文庫, 1982年)ほか
使用許諾によるロイヤルティ収入と売上高(単体)
サンリオ:使用許諾によるロイヤルティ収入と売上高(単体)
| (千円) | ロイヤルティ収入 | 売上高 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1983年7月期 | 1,368,223 | 58,255,183 | 上場の翌期。ロイヤルティ収入は売上高の2.3% |
| 1984年7月期 | 1,516,929 | 68,154,988 | 国内59社・海外17社と使用許諾契約(7月31日現在) |
| 1985年7月期 | 1,647,183 | 70,659,094 | ロイヤルティ収入はこの期が最も多い。売上高の2.3% |
| 1986年7月期 | 1,469,193 | 71,668,924 | |
| 1987年7月期 | 1,264,786 | 75,906,244 | 売上高は伸びたがロイヤルティ収入は2期続けて減り、売上高の1.7%へ |
| 1988年7月期 | 1,652,428 | 82,468,274 | 前期比31%増で1985年7月期の水準を回復 |
| 1989年7月期 | 1,650,990 | 92,617,431 | |
| 1990年3月期 | 1,083,057 | 72,459,565 | 決算期変更により1989年8月1日からの8か月決算。前後の期と長さが違う |
出所:サンリオ 有価証券報告書 第24期(1984年7月期)・第26期(1986年7月期)・第27期(1987年7月期)・第29期(1989年7月期)・第30期(1990年3月期)【営業の状況】商品種類別販売実績
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- 日経ビジネス 1976年8月30日号(日経マグロウヒル社)
- 日経ビジネス 1977年7月18日号(日経マグロウヒル社)
- 『サンリオの奇跡 : 夢を追う男たち』(角川文庫, 1982年)
- サンリオ 有価証券報告書「第24期(1984年7月期)【経営上の重要な契約】」
- サンリオ 有価証券報告書「第24期(1984年7月期)【営業の状況】商品種類別販売実績」
- サンリオ 有価証券報告書「第26期〜第30期(1986年7月期〜1990年3月期)【営業の状況】商品種類別販売実績」
- サンリオ 有価証券報告書「第27期(1987年7月期)【沿革】」