この移行で不二製油が手放したのは、本社が個別の事業判断を握るという前提であったのだろう。地域統括会社に権限を渡し、各エリアが自分で買い、自分で建てる体制にしたことで、ブラジル・マレーシア・オーストラリア・米国と続く買収の速度は確かに上がった。売上高は10年で2.5倍近くになっている。組織の形を先に替え、そこへ案件を通していく順序で動いた点に、清水洋史社長が掲げた10年の工程表との整合がうかがえる。
ただ、地域に委ねた分だけ、事業そのものを横断して見る目は弱くなった。北米の業務用チョコレートで生じた収益の悪化が全社の利益を押し下げるまで、事業軸の管理の薄さは表面化しにくかっただろう。2025年に事業持株会社へ戻った判断は、エリアで速く動くことと、事業で深く管理することを同じ組織で両立させる難しさを示している。組織の形は経営の速度を変えるが、事業の中身までは決めない——10年をかけて往復した体制の変更は、その線引きを問い直す材料になる。