連続買収による成長
買収は長く、一度きりの大きな決断として扱われてきた。相手ごとに条件を詰め、社内に専任の部署は置かず、経営者が直接交渉した。案件が終われば体制も解散した。買収の機会が稀にしか訪れないという前提に立った進め方である。
買収を反復するには、取得できる会社が絶えず現れなければならない。しかし日本ではその供給が細かった。業績が悪化しても主力銀行が資金を出して経営を支え、創業者が持分を売却する動機も乏しかった。売却の対象になるのは、支援する銀行も引き取る同業もいなくなった会社に限られた。したがって買収を手順に変えた会社は、この供給が生じる場所を選んでいる。
1919年、日清紡の宮島清次郎氏は岡崎紡績をはじめ同業を続けて買収している。紡績は設備の操業度が採算を左右する産業で、取得した工場に自社の操業方法を移植すれば効果が数字に出る。何を測り、どの順で手を入れるかが、取得のたびに社内へ蓄積された。1974年のアマダは不振に陥った同業を買い続けて、企業再建そのものを事業に組み込んだ。石油危機の後で需要が縮小し、単独では立ち行かない同業が相次いだ時期にあたる。被買収企業の候補が途切れないとき、買収は反復できる作業になる。
買収を手順として確立したのはニデックである。1997年のトーソクへの資本参加以降、同社は買収と再建を成長の手順に据えた。対象の選び方、価格の決め方、派遣する人員、着手する項目の順序が定型になれば、案件ごとに一から設計する必要はない。つまり買収の巧拙は経営者個人の判断に帰されず、組織の手続きとして次の案件へ引き継がれる。
同じ手法は他の業種にも広がった。ユー・エス・エスは地方の自動車オークション会場を取り込んで自社方式へ作り替え、ゼンショーホールディングスはM&Aで多業態のフードチェーンを組み立てた。ツルハホールディングスのM&Aも同じ手順の反復である。いずれも小規模な事業者が地域ごとに分かれている業界で、対象の数が多く、一件あたりの金額は小さい。
こうした会社では、一件ごとの買収価格の巧拙は決定的ではない。同じ手順を年に何件回せるかが、取り込める数を決める。業界の構造が数年で書き換わるのは、買収を手続きに変えた会社が件数を積み上げた結果である。
財務諸表のどこを見るか
のれんの残高が売上高や純資産に対してどこまで積み上がったかを見る。連続買収では買収した会社の利益ではなく、のれん償却後の営業利益が伸びているかが分かれ目になる。キャッシュ・フロー計算書の投資活動区分にある「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」を年ごとに並べれば、買収の頻度と金額が読める。その原資が営業キャッシュ・フローか借入かも同じ計算書で確かめる。セグメント情報が買収のたびに組み替えられている会社は、既存事業の実力が見えにくくなる。
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連続買収による事業領域の拡大28事例
海外での連続買収22事例
買収と統合のほかの論点
- 海外企業の買収194
- 外資の傘下入り33
- 合併と経営統合237
- 買収・合併後の統合89
- 同意なき買収への対応32
- MBO による非公開化25
- 救済型の買収76
- 破談と白紙撤回39