上場企業の経営論点>M&A・業界再編
連続買収による成長
買収を一度きりの決断ではなく、繰り返し使える手続きに変えた会社がある。1919年、日清紡の宮島清次郎は岡崎紡績をはじめ同業を続けて買収し、1974年のアマダは不振に陥った同業を買い続けて企業再建そのものを事業に組み込んだ。これを手順として確立したのはニデックで、1997年のトーソクへの資本参加以降、買収と再建を成長の手順に据えている。ユー・エス・エスは地方の自動車オークション会場を取り込んで自社方式へ作り替え、ゼンショーHDはM&Aで多業態のフードチェーンを組み立てた。ツルハHDの連邦型M&Aも同じ手順の反復である。一件ごとの巧拙ではなく買収を仕組みにできたことが、これらの会社に業界の構造を書き換える速さを与えた。
財務諸表のどこを見るか
のれんの残高が売上高や純資産に対してどこまで積み上がったかを見る。連続買収では買収した会社の利益ではなく、のれん償却後の営業利益が伸びているかが分かれ目になる。キャッシュ・フロー計算書の投資活動区分にある「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」を年ごとに並べれば、買収の頻度と金額が読める。その原資が営業キャッシュ・フローか借入かも同じ計算書で確かめる。セグメント情報が買収のたびに組み替えられている会社は、既存事業の実力が見えにくくなる。
2020年代
ベインキャピタルとMBO 創業会長が主導した非公開化と、上場企業としての立場の返上 エイチアンドエフ買収 超大型プレス機と基板穴あけ加工機の2社を続けて取り込む連続取得 米Sonocoの事業取得 軟包装・熱成形容器事業に約1,800百万米ドルを投じた北米軟包装の面化 リデル炭鉱終掘で石炭撤退 連続M&Aによる脱石炭転換と、111年続いた石炭事業からの撤退 ケーヨーの完全子会社化 持分法適用だった関連会社の全株取得と、本体への吸収合併 リヴァンプ買収でグループ化 連続買収による総合コンサルティンググループ化 台数依存からの構造転換 台数依存からの脱却と、売上10兆円規模の商社化 丸石化学品など連続買収 自力成長からマジョリティ出資への方針転換と、大五通商・ノバセルの取り込み ピーエス三菱をTOBで買収 垂直統合M&Aの始動 フジコーと不織布統合 アンビックの不織布事業との統合と、「エフアンドエイノンウーブンズ」の発足 三栄建築設計を子会社化 公開買付けによる株式取得と、完全子会社としての取り込み 英Fulham Shoreを買収 現地企業の子会社化を通じた欧州レストラン事業の取得 イアスの子会社化 連続買収による半導体周辺装置とライフサイエンスへの多角化 コネクシオをTOBで買収 携帯販売大手を854億円で取り込む完全子会社化と規模の確保 竹井の買収 ラーメン・もつ鍋店の連続買収とカレーパン専門店の開業による業容の拡大 Cordoba買収で米ギター集約 相手方の全持分取得と、米国ギター事業のブランドの一本化 SHIFTグロースキャピタル設立 専門会社の設置による連続M&Aと買収後統合の仕組み化 フード&ドラッグ転換 食品スーパーの連続M&Aによる、売り場と品揃えの組み替え 新生銀行の連結子会社化 負ののれん2,637億円を生んだ企業結合と、非公開化までの追加取得 セイコーエレベーター子会社化 地域保守会社の連続買収と吸収合併による全国保守網の構築 米DCI社の子会社化 成長戦略を自力開発から海外M&Aへ切り替える方針の転換
2010年代
世界3位ブラマーの買収 業務用チョコレートを手がける同業の取り込みと、規模の一気の拡大 ユニーの完全子会社化 PPIHへの改称——総合スーパー大手を呑み2兆円企業 島根銀行との資本業務提携 複数の地方銀行への出資を重ねて広げる地域金融連合の形成 NDS等3社を子会社化 株式交換による3社同時の完全子会社化と全国体制の確立 リコーロジスティクス取得 大企業の物流子会社を引き受ける連続買収と、1兆円規模を掲げた成長構想 GFIホールディングス買収 東京金型・藤岡モールドに連なる買収による、化成品事業の三本目の収益源への育成 ホーク・ワンを買収 273億円を投じた、戸建の供給力を一段引き上げる規模の取り込み 米Glassdoorを1,430億円で買収 企業の口コミデータベースを1,430億円で買い足したHRテクノロジー事業の第2手 東和信用保証を子会社化 地方金融機関系の信用保証会社の連続取得によるグループ化 富士通エレクトロニクス買収 約205億円を投じた、売上5,000億円級グループへの規模拡大 宝酒造インターナショナル設立 海外日本食材卸事業を成長の主軸に据える戦略転換 ピーチを304億円で子会社化 独立系LCCの傘下入れによる低運賃市場への本格参入 丸亀製麺に次ぐ業態買収 持株会社への移行と、単一業態への依存からマルチブランド化への転換 YOHTを連続買収 オフハイウェイタイヤ事業への連続M&Aによる事業構成の転換 日新製鋼を子会社化 鋼材デフレ下での国内4位の取り込みによる高炉再編 欧州USG Peopleを買収 北米・豪州に続く人材派遣基盤を全株取得で一括して得た地域補完 パナソニック鉛電池事業を譲受 製造会社ごと引き取る形での取り込みと、国内鉛蓄電池事業の集約 ユニキャリアHD取得 買収を機とした商号変更と、三菱ロジスネクストとしての再出発 ナチュラルスピリット買収 米国外事業だけを切り分けて約6000億円を投じたブランドの取得 地場住宅会社を連続買収 東証2部への上場と1年での1部指定、調達資金を同業の取り込みに振り向けた全国展開 米でオログランデ工場取得 西海岸でのレディング工場の取得と、生コン・骨材までの買い足し Chandler Macleodなど豪州2社を買収 相次ぐ取得による、北米・欧州に続くアジア太平洋の人材派遣基盤の確保 独BKギウリニの取得 水処理薬品事業の取得を起点とする、欧米連続買収での海外事業の拡大 ワタミの介護とメッセージ買収 約800億円を投じ、介護という別業種を自前で抱えることを選んだ本格参入 米HCCの買収 898,012百万円を現金で投じ、成長の場を国内損保から米国のスペシャルティ保険へ移した スカイマーク再建へ出資 経営破綻した独立系の再建スポンサー就任と、デルタ航空との争奪戦 イオンの連結子会社化 公開買付けへの賛同と傘下入り、M&Aによる規模拡大の加速 ファーストウッドを子会社化 一社の取り込みを起点とした、建材・木材の垂直統合への踏み出し 佐世保重工業を完全子会社化 株式交換を通じた傘下入りと、伊万里・函館を加えた3拠点体制の構築 大阪カーライフグループ買収 買収を足がかりとした、自動車ディーラー事業への本格参入 ソニー系物流子会社の取得 持株会社への移行とのれん減損254億円と分社の再統合 インテリジェンスHD買収 全株式取得による転職メディア・人材紹介事業の取り込み アダストリアへの持株会社移行 複数ブランドを一つの傘に集めるマルチブランドSPAへの再編 独グローエを買収 米アメリカンスタンダード北米事業の取得に続く欧州大手の取り込み 日本医療データセンター等買収 医療・シニア・農業の連続買収による事業ポートフォリオの組み立て 海外レシピ買収で多角化 穐田誉輝体制のもとで進めた、レシピの外へも広げる事業領域の拡張 コジマの子会社化 郊外型量販店の傘下入りによる、「都市×郊外」の連合の形成 米ZOLLを買収 22.1億ドルを投じた、クリティカルケア事業への参入 本庄工場をEMSに転換 閉鎖寸前だった生産拠点の受託生産化と、他社工場を買う側への転身 ライフケアへの優先投資 資源の優先配分と、眼鏡レンズ事業の継続的な買い集め 三洋電機ロジスティクスの取得 航空貨物・家電系物流子会社の連続取得による事業領域の拡張 Doctors.net.uk買収 英国での買収を起点に、現地ポータルを束ねる海外展開の型の確立 バイオCDMO参入 医薬品の受託生産という新領域に向けた生産能力への集中投資 「そ・こ・か」戦略 古川弘成社長のM&A+A マルナカ2社を子会社化 中四国トップの食品スーパーの取り込みによる地盤の獲得 ソフマップの子会社化 時間をかけた段階的な取り込みと、完全子会社化への到達 AE&E Inova買収 欧州・豪州の環境プラント企業の連続取得と、日立造船からカナデビアへの商号変更
2000年代
三菱レイヨンの子会社化 総額約2100億円を投じた公開買付けによるグループへの取り込み 英・チェコに新会社設立 金融危機を「創業以来、最大のチャンス」と読み、M&Aと海外拠点を同時に増やした方針 ウエボス・ターメルトフーズ取得 経営不振の食品メーカーを買い続けた国内自社工場網の構築 独デマーグなど5社買収 欧州機械メーカーを続けて取り込む5社連続取得 くすりの福太郎など買収 連邦型M&Aによる全国チェーン化 ── くすりの福太郎からドラッグイレブンまで ケンブリッジの買収 ネットマークスへのTOBと合わせたサービス事業への転換 セントラルユニを買収 東証二部上場と、買収を通じた院内設備事業の新たな取り込み クリスタルグループ買収 請負最大手を投資ファンド経由で取り込む一方でのデューデリジェンスの省略 トラスト・テック買収 障害者雇用の特例子会社から、技術者派遣を本業に据える転換 ミドリ電化の完全子会社化 関西2位の同業を株式交換で取り込んだ全国2位連合の構築 MMD戦略の確立 M&Aによる多業態フードチェーンの構築 itelligence社買収 自前の海外拠点づくりを採らず、買収の連続だけで欧米へ出た十年余りの海外戦略 雪印物流・東急ロジスティック買収 大企業が手放すノンコア物流子会社の受け皿という成長モデルの確立 GMOグループ傘下入り 資本の傘を得たうえで進めた同業の決済代行2社の連続取得 旅の窓口買収で経済圏構築 宿泊予約からDLJ証券にまで及んだ連続買収と、三領域にまたがる事業圏づくり 福田泰久氏の社長就任 センコーの新社長が掲げた「陸運業界ビッグ5入り」宣言 日本テレコムの買収 固定・携帯通信への布石 欧州ノボフェルム買収 北米オーバーヘッドドアに続く買収による日米欧三極体制の確立 オムロンから駐車場事業譲受 営業権の譲り受けという形での駐車場設備事業への進出 コマツソフトの取得 金融に偏重した顧客基盤の是正を目的とした事業の取り込み
1990年代
1980年代
1970年代
1960年代
1910年代
M&A・業界再編のほかの問い
- 海外企業の買収 182
- 外資の傘下入り 33
- 合併と経営統合 220
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- MBO による非公開化 24
- 救済型の買収 75
- 破談と白紙撤回 38
- 買収・合併後の統合 85