佐世保重工業を完全子会社化(2014年・名村造船所の決断)

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論点造船不況下で同業を買収するか
名村造船所:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
株式交換を通じた傘下入りと、伊万里・函館を加えた3拠点体制の構築

何をなぜ決めたか:株式交換を通じた傘下入りと、伊万里・函館を加えた3拠点体制の構築

概要

2014年5月23日、名村造船所は取締役会で佐世保重工業を完全子会社とする株式交換を決議し、同日付で株式交換契約を締結した。佐世保重工の普通株式1株に名村株0.128株を割り当て、名村は新株20,539,134株を交付した。佐世保重工は同年9月26日に上場を廃止し、10月1日に効力が発生している。

背景

有価証券報告書は結合の理由として、過剰建造能力という業界の構造問題が解決されず日本・韓国・中国の造船所の競争が激化していること、省燃費性能や国際ルールへ対応する設計力・開発力の強化と、一隻当りの開発・建造コスト削減による競争力強化を実現する規模の拡大が必須であることを挙げている。

内容

佐世保重工業の事業は船舶・機械の製造販売と船舶の修繕で、名村は資産513億円・負債276億円を受け入れた。取得原価は245億円、のれんは186百万円にとどまり当期に一括償却している。連結従業員は918名増加して3,153名、名村・函館どつく・佐世保重工の2013年竣工量合計は151万総トンで国内3位となった。

含意

好況のなかで組み上げた3拠点体制は、その後の商船市況の悪化で固定費の重荷に転じた。新造船セグメントは2017年3月期に96億円の損失へ落ち、連結営業損益は2017年3月期から2022年3月期まで6期続けて赤字となった。名村は2021年2月に佐世保重工の新造船休止を決議し、82億円の減損損失を計上している。

いつ何が起きたか9件
考察:拡大と縮小のあいだで
考察

考察:拡大と縮小のあいだで

この判断を、規模拡大の失敗という一語で片づけるのは早い。名村建介社長は現金を一円も出さずに245億円の買い物をした。対価は新株20,539,134株で、むしろ佐世保重工が抱えていた現金214億円がそのまま連結へ入っている。のれんが186百万円しか立たなかったことも見逃せない。払った額は相手の時価純資産とほぼ同じで、将来の超過収益力に上乗せを払っていない。手元資金を保ったまま竣工量国内3位の生産網を組むという意味では、取引の設計そのものは安く済んでいる。

高くついたのは買値ではなく、買ったあとの固定費であった。新造船セグメントは2017年3月期に96億円、翌期には203億円の損失を計上し、連結営業損益は6期続けて赤字となる。そして2021年2月、名村は佐世保の新造船休止を決議し、建物・ドック船台・土地を含む82億円を一括で減損した。取得時に受け入れた固定資産199億円の相当部分が、7年で回収不能と判定されたことになる。皮肉なのは、そこから撤退して伊万里へ絞った先に2025年3月期の営業利益率18.5%があることで、規模を追う正しさと絞る正しさが同じ会社の10年のなかで入れ替わっている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

名村造船所:新造船セグメントの推移

売上高(百万円)セグメント資産(百万円)
名村造船所:新造船セグメントの推移
(百万円)売上高セグメント利益セグメント資産備考
2011年3月期113,4949,220113,558
2012年3月期101,88214,47685,286
2013年3月期98,27815,00576,303
2014年3月期100,05422,88474,469
2015年3月期106,85122,023140,641佐世保重工業の連結は10月から。セグメント資産が66,172百万円増加した
2016年3月期111,3985,699148,321
2017年3月期103,937△9,602147,194低採算船の売上計上が進み、セグメント損益が損失に転じた最初の期
2018年3月期98,009△20,294132,363
2019年3月期95,537△4,273125,354
2020年3月期90,174△15,61792,103
出所:名村造船所 有価証券報告書 第112期〜第121期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上高・利益又は損失・資産)
出所:名村造船所 有価証券報告書 第112期〜第121期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上高・利益又は損失・資産)

名村造船所:連結業績の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
名村造船所:連結業績の推移
(百万円)売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益備考
2010年3月期131,6048,8136,281
2011年3月期136,0346,6102,273
2012年3月期122,63311,6775,640
2013年3月期118,41413,5548,008
2014年3月期124,55922,29112,687
2015年3月期135,63521,58914,652佐世保重工業の連結は第3四半期から。特別損失2,402百万円を計上した
2016年3月期147,2026,6397,311
2017年3月期137,208△9,320△11,308
2018年3月期134,887△19,418△20,554
2019年3月期124,589△4,114621
2020年3月期111,887△16,022△18,030
出所:名村造船所 有価証券報告書 第111期〜第121期(連結損益計算書)
出所:名村造船所 有価証券報告書 第111期〜第121期(連結損益計算書)

買収の条件

買収の条件
科目概要備考
被取得企業佐世保重工業株式会社事業の内容は船舶、機械の製造販売ならびに船舶の修繕
企業結合の法的形式株式交換名村造船所が株式交換完全親会社、佐世保重工業が株式交換完全子会社
取締役会の決議日2014年5月23日同日付で両社間の株式交換契約および株式交換に関する合意書を締結
株主総会の承認2014年6月24日名村造船所は6月24日、佐世保重工業は6月25日の定時株主総会で承認
佐世保重工業の上場廃止日2014年9月26日最終売買日は2014年9月25日
企業結合日(効力発生日)2014年10月1日連結財務諸表に含めた業績は2014年10月1日から2015年3月31日まで
株式交換比率佐世保重工業1株に名村造船所0.128株第三者算定機関は名村が三菱UFJモルガン・スタンレー証券、佐世保重工がKPMG FAS
交付した株式数20,539,134株契約時の予定は20,539,297株。端数は現金で支払った
取得した議決権比率100%株式交換直前に所有していた議決権比率は―%
取得原価24,582百万円交付した普通株式の時価24,257百万円と取得に直接要した費用325百万円の合計
取得に直接要した費用325百万円アドバイザリー費用等
受け入れた資産合計51,300百万円流動資産31,311百万円、固定資産19,989百万円
引き受けた負債合計27,634百万円流動負債19,848百万円、固定負債7,786百万円
のれん186百万円取得原価が時価純資産額を上回った差額。当期に一括償却した
株式交換に伴う現金の増加額21,078百万円連結開始時の現金21,403百万円から取得に直接要した費用325百万円を控除
増加した資本剰余金24,257百万円新株発行による増加。資本金の増加はない
通期換算した売上高の増加15,096百万円期首に結合したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純損益の影響△1,440百万円同じ概算で営業損失160、経常損失199百万円。監査証明を受けていない
出所:名村造船所 有価証券報告書 第115期(2014年3月期)【重要な後発事象】・第116期(2015年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
出所:名村造船所 有価証券報告書 第115期(2014年3月期)【重要な後発事象】・第116期(2015年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 名村造船所 有価証券報告書「第115期(2014年3月期)【重要な後発事象】」
  • 名村造船所 有価証券報告書「第116期(2015年3月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 名村造船所 有価証券報告書「第111期〜第121期(連結損益計算書、セグメント情報、従業員の状況)」
  • 名村造船所 有価証券報告書「第122期(2021年3月期)【連結損益計算書関係】【セグメント情報】」

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