ANAホールディングス スカイマーク再建へ出資 経営破綻した独立系への少数出資と、連結に取り込まない距離の置き方
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2015年9月、ANAホールディングスが、民事再生手続中のスカイマークの株式を取得した経営判断。再生計画の認可決定が確定し、資本金の全額減資と180億円の再生増資が行われたのと同じ月の取得であった。投資ファンドのインテグラル系のファンドが主軸となる再建の枠組みに加わりながら、ANA側の出資は連結にも持分法にも含めない規模にとどめられた。
- 背景
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スカイマークは1996年11月、大手数社の寡占により運賃が高止まりしていた航空業界に競争原理を起こすべく設立された。2011年2月にはエアバス社とA380型機の購入契約を締結して大型機に踏み込んだが、2015年1月に東京地方裁判所へ民事再生手続開始を申し立て、同年3月に東京証券取引所第一部の上場を廃止した。羽田の発着枠を持つ独立系の行方が、国内航空の勢力図を左右する状況にあった。
- 内容
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ANAの有価証券報告書は、スカイマーク株式の取得時期を2015年9月とし、保有目的を増収等の相乗効果が期待できるためと記す。航空関連事業における受委託等の提携関係について更なる増収等の相乗効果を目指し、より広範な業務提携の可能性を追求する、というのが有価証券報告書の記載である。取得した株式は非上場株式として個別の銘柄開示の対象外であり、2016年3月期の企業結合等関係と重要な後発事象はいずれも該当事項なしであった。
- 含意
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スターフライヤー、エア・ドゥ、ソラシドエアに続き、最後の独立系スカイマークにもANAが資本で関与する構図となった。ただし出資は支配を伴わない規模にとどめられ、スカイマークの有価証券報告書でも関係会社の状況は該当事項なしとされている。2022年12月の東証グロース市場への再上場後、ANAの持株比率は12.93%で第2位、貸借対照表計上額は775百万円から9,269百万円へ増えた。
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筆者の見解
支配を持たずに関係を持つという選び方
この判断で目を引くのは、出資の規模である。ANAは民事再生手続中のスカイマークへ資本を入れながら、連結子会社にも持分法適用会社にもしなかった。2016年3月期の有価証券報告書には企業結合等関係も重要な後発事象も該当事項なしと記され、取得した株式は非上場株式として131銘柄58,021百万円のなかに埋もれている。破綻会社の再建には巨額の資金と経営責任が伴うが、その負担は投資ファンドが主軸となって引き受け、ANAは提携の相手方としての立場を確保した。支配を持たずに関係だけを持つ形を選んだと推察される。
結果として、この距離の置き方はANAの財務を守った。スカイマークの再建は進み、2016年3月に民事再生手続が終結、2022年12月には東証グロース市場への再上場に至っている。ANAの保有株式の貸借対照表計上額は、非上場時の775百万円から再上場後の9,269百万円へと評価が変わった。一方で、ANA自身の有価証券報告書がこの案件をほとんど語らないことは、少数出資という形式の裏返しでもある。最後の独立系がANA陣営と資本でつながった意味は、開示の薄さのなかで見えにくくなっている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
出資の条件
出資の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 再建の法的枠組み | 民事再生手続 | 2015年1月に東京地方裁判所へ申立て。同年3月に東証一部を上場廃止 |
| 再生計画認可決定の確定 | 2015年9月 | 同時に資本金の全額減資と180億円の再生増資を実施している |
| ANAの株式取得時期 | 2015年9月 | ANAの有価証券報告書【株式の保有状況】に記された取得時期 |
| 株式取得の目的 | 増収等の相乗効果が期待できるため | 航空関連事業における受委託等の提携関係について更なる増収を目指す |
| 会計上の扱い | 連結にも持分法にも含めない | 2016年3月期の【企業結合等関係】【重要な後発事象】は該当事項なし |
| 取得時の開示 | 銘柄名の個別開示なし | 非上場のため2016年3月期は131銘柄58,021百万円に合算されている |
| ANAの保有株式数 | 7,802,190株 | 2022年・2023年3月期とも同数。2020年2月に1株を25株へ分割 |
| ANAの議決権比率 | 12.93% | 2023年3月末。自己株式を除く発行済株式総数に対する割合で第2位 |
| 貸借対照表計上額 | 9,269百万円 | 2023年3月末。2022年3月末は非上場株式として775百万円 |
| 筆頭株主 | インテグラル2号投資事業有限責任組合 | 2023年3月末で19.51%。関連ファンドを合わせると23.57% |
| スカイマーク側の位置づけ | 関係会社に該当せず | スカイマークの有価証券報告書【関係会社の状況】は該当事項なし |
| 取引関係 | 航空機整備基本契約 | スカイマークの【経営上の重要な契約等】に全日本空輸との契約が載る |
| 民事再生手続の終結 | 2016年3月 | 2015年1月の申立てから約1年2か月での終結 |
| スカイマークの再上場 | 2022年12月 | 東証グロース市場。公募による払込金総額は14,268百万円 |
出所:ANAホールディングス 有価証券報告書 第73期(2023年3月期)【株式の保有状況】・第66期(2016年3月期)【企業結合等関係】【重要な後発事象】、スカイマーク 有価証券報告書 第27期(2023年3月期)【沿革】【大株主の状況】【関係会社の状況】
連結の売上高と営業利益の推移
ANAホールディングス:連結の売上高と営業利益の推移
| (百万円) | 売上高 | 営業利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 1,357,653 | 67,808 | |
| 2012年3月期 | 1,411,504 | 97,022 | |
| 2013年3月期 | 1,483,581 | 103,827 | |
| 2014年3月期 | 1,570,145 | 65,986 | |
| 2015年3月期 | 1,713,457 | 91,541 | |
| 2016年3月期 | 1,791,187 | 136,463 | スカイマークへの出資は規模が小さく、連結の数値には表れない |
| 2017年3月期 | 1,765,259 | 145,539 | |
| 2018年3月期 | 1,971,799 | 164,516 | ピーチの連結子会社化により売上高が2,065億円増えた期 |
| 2019年3月期 | 2,058,312 | 165,019 | |
| 2020年3月期 | 1,974,216 | 60,806 | |
| 2021年3月期 | 728,683 | △464,774 | 新型コロナ禍で売上高が前期の37%に落ち込んだ |
出所:ANAホールディングス 有価証券報告書 第61期〜第71期(連結損益計算書、主要な経営指標等の推移)
航空事業セグメントの推移
ANAホールディングス:航空事業セグメントの推移
| (百万円) | 航空事業の売上高 | 航空事業のセグメント利益 | 航空事業の減損損失 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2015年3月期 | 1,388,187 | 81,667 | 10 | |
| 2016年3月期 | 1,458,517 | 139,757 | 4,285 | 減損損失はスカイマークと無関係の航空事業用固定資産 |
| 2017年3月期 | 1,445,576 | 139,511 | 1,954 | |
| 2018年3月期 | 1,642,994 | 156,873 | 5,695 | ピーチの連結で売上高が197,418増えている |
| 2019年3月期 | 1,728,645 | 160,556 | − | 減損損失の計上は航空関連事業の1,997のみ |
| 2020年3月期 | 1,658,763 | 49,550 | 22,665 | 減損はピーチに係るのれん。同期の全社合計は25,159 |
| 2021年3月期 | 571,709 | △447,894 | 73,742 | 新型コロナ禍による航空機等の減損。全社合計は75,575 |
出所:ANAホールディングス 有価証券報告書 第65期〜第71期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・セグメント利益・固定資産の減損損失)
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参考文献
- ANAホールディングス 有価証券報告書(2016年3月期)
- ANAホールディングス 有価証券報告書(2023年3月期)
- スカイマーク 有価証券報告書(2023年3月期)
- ANAホールディングス 有価証券報告書「第73期(2023年3月期)【株式の保有状況】」
- ANAホールディングス 有価証券報告書「第66期(2016年3月期)【企業結合等関係】【重要な後発事象】【株式の保有状況】」
- スカイマーク 有価証券報告書「第27期(2023年3月期)【沿革】【大株主の状況】【関係会社の状況】【経営上の重要な契約等】」
- ANAホールディングス 有価証券報告書「第61期〜第71期(連結損益計算書、セグメント情報)」