ビックカメラ コジマの子会社化 郊外型量販店の傘下入りによる、「都市×郊外」の連合の形成

更新:

時期 2012年5月
当時の社長 宮嶋宏幸
論点 業界再編と店舗網の補完
何をなぜ決めたか
概要

2012年、ビックカメラがコジマの第三者割当増資141億18百万円を引き受けて議決権の50.06%を握り、子会社化した経営判断。全国44都道府県に202店舗を持つ郊外型チェーンがグループに入った。

背景

都市の駅前ターミナルに巨艦店を構えてきたビックカメラは郊外・地方の店舗網が手薄だった。一方のコジマは1998年に売上首位へ立ちながら、2002年にヤマダ電機へ逆転され、不採算店の閉鎖に追われていた。

内容

2012年5月11日に資本業務提携契約を締結し、6月26日に増資を引き受けてコジマを子会社化した。都市型のビックカメラと郊外ロードサイド型のコジマで店舗網を補い合い、仕入れ・物流・店舗運営の連携を狙った。

含意

翌期の連結売上高は8,054億円と前期比55.5%増になった。一方で買収時の通期換算では営業損失41億39百万円を抱えており、コジマの不採算店を閉じながら連名看板の新業態へ組み替える作業が続いた。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

自前出店ではなく、失速した同業を取り込むという選択

この判断の核心は、自力では作りにくい郊外・地方の店舗網を、増資の引受でまとめて取得した点にある。都市の駅前で伸びたビックカメラにとって、郊外ロードサイドへの新規出店を一から積み上げるには時間も資金もかかる。そこで、かつて売上首位に立ちながらヤマダ電機に対し競争劣位に立ったコジマへ141億18百万円を注ぎ、経営権と店舗改革の原資を同時に渡した。有報はこの増資の目的を、コジマの経営基盤の安定と財務体質の強化を図りつつ、仕入れ・物流・店舗運営の分野で業務提携を進めて収益性の改善と競争力の強化を図ることだと記している。2012年8月末の時点で、ビックカメラ本体の34店舗に対しコジマは44都道府県に202店舗を構えていた。

もっとも、取得したのは黒字の事業ではない。期首に結合していたと仮定した通期換算では、コジマの売上高3,121億26百万円に対して営業損失41億39百万円が立っており、払い込んだ資金の使途も不採算店舗の閉鎖だった。実際にコジマは2012年9月から2015年3月にかけて相当数の店舗を閉じている。ビックカメラは自社の取締役だった木村一義氏をコジマの代表取締役会長へ送り込み、自社流の商品選定と展示手法を持ち込んだ売場に2社連名の看板を掲げる新ブランド店舗へと転換を進めた。買った相手をそのまま連結するのではなく、店と人を入れ替えながら規模を実のあるものへ作り替える——その作業に相応の時間を割いた選択だったといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 株式会社コジマ 家電品販売業。2012年8月末に全国44都道府県で202店舗を展開していた
取得の法的形式 第三者割当増資の引受けによる株式取得 公開買付けではなく、コジマが新たに発行する株式の全てを引き受けた
取締役会の決議日 2012年5月11日 同日付でコジマとの間で資本業務提携契約を締結した
引き受けた株式 普通株式 39,000,000株 コジマが第三者割当増資により新たに発行する株式の全て
払込金額の総額 14,118百万円 コジマの資本金は7,059百万円、資本準備金は7,059百万円増加した
払込期日(企業結合日) 2012年6月26日 みなし取得日は期末日。連結損益計算書にコジマの業績は含まれていない
取得した議決権比率 50.06% 企業結合直前に所有していた議決権比率は0%
取得原価 14,342百万円 対価は現金14,118百万円、取得に直接要したアドバイザリー費用等224百万円
負ののれん発生益 462百万円 時価純資産が取得原価を上回った差額。のれんは発生していない
受け入れた資産合計 156,775百万円 流動資産93,307百万円、固定資産63,468百万円
引き受けた負債合計 127,201百万円 流動負債79,730百万円、固定負債47,471百万円
通期換算した売上高 312,126百万円 期首に結合したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
通期換算した損益 営業損失 4,139百万円 同じ概算で経常損失4,048百万円。監査証明を受けていない
増資資金の使途 不採算店舗の閉鎖 相当数の閉鎖を2012年9月から2015年3月に実施する予定と記している
結合の理由 経営基盤の安定と財務体質の強化 仕入れ・物流・店舗運営等で業務提携を進め、収益性の改善と競争力の強化を図る

出所:ビックカメラ 有価証券報告書 第32期(2012年8月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【事業等のリスク】

連結売上高と当期純利益の推移

ビックカメラ:連結売上高と当期純利益の推移

(百万円) 売上高当期純利益 備考
2007年8月期 542,2948,146 コジマは連結前。独立した上場会社だった
2008年8月期 604,8044,112
2009年8月期 589,1775,094
2010年8月期 608,2745,965 2010年1月にソフマップを株式交換で完全子会社化
2011年8月期 612,1149,049
2012年8月期 518,0574,007 2012年6月26日にコジマを子会社化。みなし取得日が期末のため損益は未連結
2013年8月期 805,3782,436 コジマの損益を通年で連結し前期比55.5%増。減損損失等の特別損失65億82百万円
2014年8月期 829,8339,850
2015年8月期 795,3686,804
2016年8月期 779,08111,985
2017年8月期 790,63913,505
連結売上高と当期純利益率
売上高(百万円)当期純利益率(%)

出所:ビックカメラ 有価証券報告書 第27期〜第37期(主要な経営指標等の推移・連結損益計算書)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • ビックカメラ 有価証券報告書 第32期(2012年8月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【事業等のリスク】
  • ビックカメラ 有価証券報告書 第33期(2013年8月期)【業績等の概要】【役員の状況】
  • 日経ビジネス 1999年8月30日号 ケーススタディ(日経BP社)
  • ビックカメラ 有価証券報告書「第32期(2011年9月1日〜2012年8月31日)有価証券報告書」
  • ビックカメラ 有価証券報告書「第33期(2012年9月1日〜2013年8月31日)有価証券報告書」

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