ビックカメラの起点は、1968年に新井隆司氏(現名は新井隆二氏)[1]が群馬県高崎市で創業した『高崎DPセンター』である[2]。当時の地方都市では写真フィルムの現像・プリント(DP)が成長分野で、新井隆司氏は写真関連サービスから事業基盤を築いた。1970年代に入ると同社はカメラ販売へ業態を拡張し[3]、地方の写真愛好家を主要顧客とする商売を続けた。これは戦後の日本でカメラが『ハレの日の高額品』から大衆の購買対象へ移行する局面と重なり、地方の専門店としては比較的早期に量販志向を取り入れた事業者であった。
1978年、新井隆司氏は本拠を東京・池袋へ移し、写真機・カメラの量販店として再出発する[4]。池袋という選択は当時の電気店激戦区である秋葉原や新宿西口を避け、巨大ターミナル駅で潜在需要が捌けきれていない場所を取りに行く判断であった。1980年6月には株式会社ビックカメラを正式に設立し[5]、同年11月に東京都豊島区に池袋店(後の池袋北口店)を開店してカメラ等の物品販売事業を開始した。『BIC』は同社公式の説明によると『偉大さの意味を含むスラング』[引用元]で[6]、創業者の商売に対する野心が社名そのものに残された。
1980年代の日本の家電量販業界では、ヨドバシカメラ・コジマ・ヤマダ電機が郊外型あるいは数千平方メートル規模の店舗モデルで売上を伸ばしていた。1989年12月に渋谷店(現渋谷ハチ公口店)[7]、1991年4月に横浜西口店[8]、1992年9月に池袋本店[9]、1993年2月に渋谷東口店[10]と、首都圏のターミナル駅前への集中出店を進めた。
本社や物流の運営子会社として1981年に東京カメラ流通協同組合[11]、1992年に株式会社東京羽毛工房(後の生毛工房)、1996年に株式会社ビックカメラビルディング(後の東京計画)[12]を相次いで設立し、グループ内に出店・物流・金融サービスを内製化する体制を整えた。1999年4月の福岡・天神店出店で初めて関東圏外へ進出し、同年8月には日本ビーエス放送企画株式会社(後の日本BS放送)を設立して放送事業へも事業領域を広げた。
1999年から2001年にかけてビックカメラは関東圏外への多店舗展開を本格化させた。1999年6月の新横浜店[13]、2001年1月の立川店[14]、同年5月の大阪・なんば店[15]、6月の有楽町店[16]、7月の札幌店[17]と、半年余りで全国の主要ターミナル駅前に旗艦店を配置した。2001年11月には株式会社ビック酒販を設立し[18]、家電量販業の枠を超えて酒類・食品・薬の総合小売へ事業領域を広げる方針を見せ始めた。2002年5月の新宿西口店[19]、9月の池袋西口店[20]で都心の重複立地を厚くし、2003年10月にはインターネットショッピングサイト『ビックカメラ.com』を開設して通販事業に参入[21]、同年11月の名古屋駅西店と大宮西口そごう店で中京圏と埼玉県主要駅前を押さえた。[22]
ターミナル駅前という立地に密集出店する戦略は、1店舗あたりの売場面積(数千坪規模)と取扱品目数(カメラ・パソコン・白物家電・時計・酒・薬まで)の両方を最大化する点で、同時期の郊外ロードサイド型ヤマダ電機・コジマとは別系統の業態を形作った。家電量販業界のなかでも、ヨドバシカメラと並ぶ『都心ターミナル型』の代表格として、ビックカメラの全国展開モデルが2000年代前半に定着した。
2004年6月の豊島ケーブルネットワーク株式会社の連結子会社化[23]、2005年1月の本店移転(東京都豊島区西池袋から同区高田へ)[24]と、同月の株式会社ソフマップとの資本業務提携契約締結[25]が、ビックカメラのグループ拡張の起点となる。ソフマップは秋葉原に本拠を置くPC専門店として中古PC流通や同人誌売場で独自顧客を持っていたが[26]、PC専業ゆえに家電量販大手との価格競争で経営が悪化していた。新井隆司氏率いるビックカメラは2006年2月にソフマップの増資を引き受けて子会社化し[27]、自社の家電・カメラ品揃えと相互補完するPC・サブカルチャー領域の流通拠点を取り込んだ。
2006年8月には株式会社ジャスダック証券取引所に株式を上場[28]、2008年6月には東京証券取引所市場第一部に株式を上場した。[29]上場による調達資金は出店投資に振り向けられ、2006年8月の藤沢店[30]、9月のラゾーナ川崎店[31]、2007年11月の岡山駅前店[32]、2008年11月の浜松店[33]、2009年2月の新潟店[34]と、地方政令市・準政令市の駅前への展開を続けた。2008年4月には環境省の『エコ・ファースト制度』第1号企業に認定され[35]、家電リサイクル・省エネ家電販売を含む環境施策で業界内のプレゼンスを確立した。
2010年1月、ビックカメラは株式交換により株式会社ソフマップを完全子会社化した[37]。同年2月から11月にかけて船橋駅店・鹿児島中央駅店・新宿東口駅前店・相模大野駅店・JR八王子駅店[38]と[39]、首都圏と地方主要駅前への出店を続け、駅前ターミナル網の密度を一段と高めた。2011年6月の水戸駅店[40]、同年8月の有楽町店でのドラッグ事業開始[41]は、家電量販業の枠を超えた『都市生活者の総合インフラ』への業態転換の一手であった。
2012年3月に株式会社ソフマップを新設分割設立会社と分割会社に分離し、旧社[42]をビックカメラが吸収合併、新社(株式会社ソフマップ)を連結子会社として残す再編を実行した。同年5月、ビックカメラはコジマと資本業務提携契約を締結[43]、6月には増資引受によりコジマを子会社とした。[44]コジマは栃木県宇都宮市発祥の郊外型家電量販大手で、ヤマダ電機との価格競争で2011年5月期に純損失73億円を計上していた。ビックカメラはコジマ買収によって自社が手薄だった地方郊外・ロードサイド型店舗網を一気に取り込み、家電量販業界での売上規模・店舗ネットワーク両面で上位の地位を固めた。2013年6月には2社連名の看板を冠した『コジマ×ビックカメラ1号店』を開店し[45]、両ブランドの相互送客を可視化した。
2012年9月の新宿東口『ビックロ新宿東口店』開店は、ユニクロとの共同店舗という業界初の試みで[46]、家電量販店がアパレルと共同で集客する出店であった。2013年3月にはPC関連商品サポート・買取・下取・修理をワンストップで提供する『サービスサポートカウンター』を設置[47]、2014年6月には格安SIMカード『BIC SIM』の専用受付カウンターを設置し[48]、家電販売の周辺サービス領域を広げた。
2012年8月、創業者の新井隆司氏が[49]3年間の経営離脱を経て同社会長に復帰した。日刊工業新聞は『ビックカメラ、創業者・新井氏会長に復帰』[引用元](2012年8月24日)として、66歳での経営復帰を報じた。この時期のビックカメラはコジマ・ソフマップ買収で売上規模を急拡大させた一方、グループ全体の収益力・統合運営に課題を残しており、創業者の現場復帰はグループ統治の引き締めを意図していた。
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|---|---|---|---|---|
| 1968〜2003年高崎の写真館から池袋の家電量販店へ | 会社設立、池袋店を開店しカメラ等の物品販売事業に参入 | ★ | ||
| 東京カメラ流通協同組合を設立 | ★ | |||
| 渋谷店を開店 | ★ | |||
| 東京羽毛工房(1995年生毛工房に商号変更)を設立 | ★ | |||
| 池袋本店を開店 | ★ | |||
| ビックポイントカードを導入しポイントサービスを開始 | ★★ | |||
| 天神店を開店 | ★ | |||
| 日本ビーエス放送企画を設立、後にBSデジタル放送「BS11」を開始 | ★★ | |||
| 有楽町店を開店 | ★ | |||
| ビック酒販を設立 | ★ | |||
| インターネットショッピングサイト「ビックカメラ.com」を開設 | ★★ | |||
| 2004〜2014年ソフマップ・コジマ取り込みによるグループ拡張 | 宮嶋宏幸 | ソフマップの増資引受により同社が子会社に | ★★ | |
| 宮嶋宏幸 | ジャスダック証券取引所に株式を上場 | ★ | ||
| 宮嶋宏幸 | ソフマップの段階的な取り込みと完全子会社化 2005年から2010年にかけて、ビックカメラが中古パソコンの雄ソフマップを、資本業務提携・増資引受・株式交換の3段階で取り込み、完全子会社化した経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 宮嶋宏幸 | ドラッグ事業を有楽町店で開始 | ★ | ||
| 宮嶋宏幸 | コジマの子会社化と「都市×郊外」の家電量販連合 2012年、ビックカメラがコジマの第三者割当増資141億円を引き受けて議決権の50.06%を握り、子会社化した経営判断。ヤマダ電機に次ぐ売上高1兆円規模・業界2位の家電量販グループが生まれた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 宮嶋宏幸 | ビックロ新宿東口店を開店 | ★ | ||
| 宮嶋宏幸 | オリジナルSIMカード「BIC SIM」の専用受付カウンター設置 | ★ | ||
| 2015〜2025年グループ統合とサーキュラー・エコノミー型小売への転換 | 宮嶋宏幸 | ビックカメラ日本橋三越を開店 | ★ | |
| 木村一義 | ソフマップがじゃんぱらの株式を取得 | ★ | ||
| 秋保徹 | ラネットがTDM準備会社を設立、後にTDモバイル事業を吸収分割で承継 | ★ | ||
| 秋保徹 | 中期経営計画「ビックカメラグループ中期経営計画~Vision 2029~」を策定 | ★ |
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事実根拠:出所(ビックカメラ)