上場企業の経営論点

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破談と白紙撤回

日本の経営統合は、株式の交換比率が決まれば成立するわけではない。条件が交渉で決まるのは、株式市場がその会社の支配権に値段を付けていないためである。取引先同士が互いの株式を保有する持ち合いの株は市場に出ず、市場価格は売買に回る少数の浮動株が付けた値にすぎない。加えて統合後も従業員の雇用は続く前提に立つため、賃金表と昇格の順序をどちらへ合わせるかまでが交渉の対象になる。取引価格で決着する余地が小さい分、当事者が合意すべき項目は増加する。そのうち一つで折り合わなければ、他がすべて整っていても統合は止まる。

合意を要する項目には、商号、本社の所在、持株会社の役員構成、どちらの人事制度を残すかが含まれる。いずれも市場価格からは導けず、合意を発表する時点では詰め切れていない場合が多い。1994年には経営者の側から持株会社の設立を求める声が出ており、制度が整うと持株会社の形式は広く使われた。持株会社を先に設立し、事業と人事の配分は後で決める。その結果、統合は発表しやすくなった一方で、発表後に破談となる余地も増加した。

1997年、セガとバンダイの合併は発表から4カ月で白紙に戻った。三井化学と住友化学、キリンとサントリーも、統合比率と主導権の配分で折り合わず単独路線に戻っている。三件とも、事業を組み合わせる合理性そのものは発表時から変わっていない。折り合わなかったのは、その合理性を誰の指揮のもとで実現するかという配分である。

ただし、統合を止めるのは当事者とはかぎらない。ソフトバンクグループによるアームのエヌビディアへの売却は、各国の競争当局の審査を通らずに破談となった。半導体の設計資産のように取引の影響が国境を越える場合、当事者が合意しても第三者が止める。2025年にはホンダが日産自動車との協議を2カ月弱で打ち切り、セブン&アイ・ホールディングスはクシュタールとの統合に至らないまま独立を維持した。ホンダとの協議は子会社化を含む条件が提示された時点で終わり、クシュタールの案件は買収企業と被買収企業が当初から明示されていた。当事者同士の二件でも、争点は事業の組み合わせではなく支配の形にあった。

破談は交渉の失敗として記録される。しかし同じ交渉が成立していれば、決まらなかった問題は統合後へ持ち越されていた。つまり日本の再編で最後に可否を左右してきたのは、事業の適合よりも決定権の配分である。

財務諸表のどこを見るか

破談は財務諸表にほとんど残らない。追うのは適時開示で、基本合意書の締結と解消のリリースを並べ、どちらが打ち切りを申し出たかを確かめる。数字に出るのは特別損失に計上されるアドバイザリー費用と、統合を前提に組んだ資本政策の後始末である。第三者割当増資や自己株式取得を先に実行していれば、破談後も資本構成にその跡が残る。合弁の解消なら、持分法投資損益が消えた期と関係会社株式の売却損益を見る。

2020年代

2010年代

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2009年メディパルHDメディパルHDへ移行会社分割による医薬品卸事業の切り出しと純粋持株会社への移行2009年大和証券G本社大和証券SMBCの合弁解消三井住友保有40%株の買取による完全子会社化2007年ペンタックスHOYAとの合併断念合併の断念と代表取締役の交代、のちに1株770円のTOBへの賛同2007年ファーストリテイリングバーニーズ・ニューヨーク買収断念米高級百貨店への買収提示と、その取り下げによる海外拡張の見送り2006年王子HD北越製紙へ敵対的TOB日本初の本格的な敵対的買収に踏み切った業界再編の仕掛け2006年北越コーポレーション王子製紙TOBへの防衛同業最大手からの敵対的買収提案をはねのけた自主独立の堅持2004年セガサミーHDサミーによるセガの株式取得株式取得にとどまらない共同持株会社の設立と両社の一体化2004年三井住友トラストGUFJ信託銀行との統合破談信託の規模拡大のための業務移管の合意と、UFJの転換による白紙化2003年三井化学住友化学との経営統合破談業界再編を狙った合意の解消と、単独路線への引き返し2002年ジャパンエナジー日鉱金属と持株会社設立共同持株会社・新日鉱ホールディングスの傘下入りと、自社株式の上場廃止2002年マネックスGDLJとの合併検討中断後の信用取引参入顧客保護を理由に見送ってきた貸株サービスの開始2001年MS&ADインシュアランスGHD住友海上火災保険との合併三社統合からの離脱と、財閥系2社による三井住友海上の発足2001年日本興亜損害保険興亜火災海上保険との合併三社統合構想の破談と、残る2社での合併による再出発2000年りそなHD東海・三和と統合破談3行による大型連合の構想からの離脱と、単独路線への引き返し

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