上場企業の経営論点>M&A・業界再編
破談と白紙撤回
経営統合は合意の発表では決まらない。1997年、セガとバンダイの合併は電撃発表から4カ月で白紙に戻った。三井化学と住友化学、キリンとサントリーはいずれも統合比率と主導権の配分で折り合わず、単独路線へ引き返している。止めるのが当事者とはかぎらない。ソフトバンクGによるアームのエヌビディアへの売却は各国の競争当局の審査で崩れた。2025年にはホンダが日産との協議を2カ月弱で打ち切り、セブン&アイHDはクシュタールとの統合を実らせないまま独立を続けた。日本の再編は統合の是非よりも、誰が主導権を握るかで壊れてきた。
財務諸表のどこを見るか
破談は財務諸表にほとんど残らない。追うのは適時開示で、基本合意書の締結と解消のリリースを並べ、どちらの側が打ち切りを申し出たかを確かめる。数字に出るのは特別損失に計上されるアドバイザリー費用と、統合を前提に組んだ資本政策の後始末である。第三者割当増資や自己株式取得を先に実行していれば、破談後も資本構成にその跡が残る。合弁の解消なら、持分法投資損益が消えた期と関係会社株式の売却損益を見る。
2020年代
ローム株式取得提案の撤回 パワー半導体の垂直統合をめざした株式取得提案と、その取り下げ クシュタールと統合破談 経営統合構想が実らずに終わり、独立した経営体制を続ける選択 牧野フライスへのTOB撤回 同意なき買収提案という手段の選択と、実現に至らぬままの取り下げ 日産との統合協議打切 経営の一体化構想へ踏み込みながら二カ月弱で引き返した判断 C&FロジのTOB失敗 低温食品物流の取り込みを狙った同意なき買付けと、佐川急便との争奪戦での撤退 ウエスタンデジタルと破談 メモリ大手同士の経営統合交渉と、合意に至らなかった結末 アクゾへのアフリカ事業譲渡撤回 いったん公表した事業譲渡の白紙撤回と、対象事業の手元への残留 CVC非公開化提案の破談 外資ファンドによる非公開化提案の受け止めと、その頓挫 三菱日立パワー合弁を解消 火力発電事業の合弁からの離脱と、単独運営への切り替え エヌビディアへのアーム売却 米——最大400億ドルの契約と、規制が壊した世紀のディール
2010年代
三洋化成工業との統合破談 合意発表にまで至りながら実現しなかった経営統合の白紙撤回 富士ゼロックス完全子会社化 持ちかけた買収構想の破談と、その後に選んだ持分の全量取得 ココカラファインとの統合協議 規模拡大を狙った同業大手との経営統合の模索と、2019年の破談 ぺんてる株の取得試み 37%の取得から子会社化を狙い、45.6%の全株をプラスへ手放す幕引き 三井造船との統合が破談 経営統合構想の白紙撤回と、単独での造船事業の継続 アプライドマテリアルズと経営統合 2013年の合意から2015年の破談に至った経営統合の頓挫 サントリーとの統合破談 巨大再編を狙った経営統合構想の頓挫と、単独路線への回帰 新生銀行との合併破談 同業大手との統合による規模拡大構想と、その白紙撤回
2000年代
メディパルHDへ移行 会社分割による医薬品卸事業の切り出しと純粋持株会社への移行 大和証券SMBCの合弁解消 三井住友保有40%株の買取による完全子会社化 HOYAとの合併撤回 白紙化に伴う社長の解職と、最後に受け入れることになったTOB バーニーズ・ニューヨーク買収断念 米高級百貨店への買収提示と、その取り下げによる海外拡張の見送り 北越製紙へ敵対的TOB 日本初の本格的な敵対的買収に踏み切った業界再編の仕掛け 王子製紙TOBへの防衛 同業最大手からの敵対的買収提案をはねのけた自主独立の堅持 サミーによるセガの株式取得 株式取得にとどまらない共同持株会社の設立と両社の一体化 UFJと信託統合破談 信託事業の統合による規模拡大構想と、2004年の破談 住友化学との経営統合破談 業界再編を狙った合意の解消と、単独路線への引き返し 日鉱金属と持株会社設立 共同持株会社・新日鉱ホールディングスの傘下入りと、自社株式の上場廃止 DLJ破談後の信用取引参入 顧客保護を理由に見送ってきた貸株サービスの開始 住友海上火災保険との合併 三社統合からの離脱と、財閥系2社による三井住友海上の発足 興亜火災海上保険との合併 三社統合構想の破談と、残る2社での合併による再出発 東海・三和と統合破談 3行による大型連合の構想からの離脱と、単独路線への引き返し
1990年代
1980年代
1960年代
M&A・業界再編のほかの問い
- 海外企業の買収 182
- 外資の傘下入り 33
- 合併と経営統合 220
- 同意なき買収への対応 30
- MBO による非公開化 24
- 連続買収による成長 99
- 救済型の買収 75
- 買収・合併後の統合 85