アプライドマテリアルズと経営統合(2013年・東京エレクトロンの決断)

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論点 首位級の同業と対等統合するか
東京エレクトロン:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
2013年の合意から2015年の破談に至った経営統合の頓挫

何をなぜ決めたか:2013年の合意から2015年の破談に至った経営統合の頓挫

概要

2013年9月24日、米アプライドマテリアルズと対等な経営統合の契約を締結した。両社はオランダに設立する統合持株会社の完全子会社となり、東京エレクトロンの株主は1株につき同社の普通株式3.25株を受け取る。交付される株式は582,406,373株にのぼり、東京証券取引所では上場廃止となる予定であった。

統合は両社の株主総会の承認と、日本・米国その他の国における適用ある競争法に基づく関係当局の承認等を条件としていた。この条件が満たされないまま、2015年4月27日に契約は解約された。

背景

統合の目的に掲げたのは、半導体及びディスプレイ製造装置業界における「グローバル・イノベーター」となることであった。両社の技術と製品が互いの欠けを埋め合う関係にあり、それを一体で運べば戦略上重要な先端技術を顧客へ届けられる——株式対価による統合に踏み切った理由はそこにあった。合意の直前にあたる2013年3月期は、半導体製造装置事業の売上高が3,920億円、セグメント利益が486億円と、前期の890億円から減少した谷にあった。

内容

統合持株会社はオランダ王国ナイメーヘン市に2014年1月6日、資本金1ユーロで設立された。商号はテル-アプライド ホールディングス ビーブイで、統合の実行に先立ち変更する予定とされ、2014年7月に「Eteris(エタリス)」が公表された。統合完了時のCEO兼Executive Directorにゲイリー・E. ディッカーソン氏、設立当初の取締役に東哲郎氏を置いた。

2014年5月14日には、統合の一環としてTELジャパン合同会社との株式交換契約も締結している。

含意

2015年4月27日(米国時間26日)、取締役会は統合契約の解約とTELジャパン合同会社との三角株式交換の中止を決議した。解約が連結財政状態および連結経営成績に与える重要な影響はなく、2015年3月期には経営統合に係る費用85億29百万円が全社費用に含まれている。同じ日の取締役会では、上限1,540万株・1,200億円の自己株式取得も決議された。単独経営へ切り替えた。

いつ何が起きたか 6件
考察:競争政策が決める大型クロスボーダー統合の成否
考察

考察:競争政策が決める大型クロスボーダー統合の成否

この破談で前面に出たのは、社内の合意や統合条件ではなく、競争政策との折り合いであった。株式交換比率は自社株1株に3.25株と決まり、持株会社はオランダに設立され、その代表者と設立当初の取締役の顔ぶれまで置かれていた。契約が掲げた前提は2つ、両社の株主総会の承認と、競争法に基づく関係当局の承認等である。設計が具体化するほど、後者の壁は高くなった。世界の二大供給者を一つにするという事実そのものが市場の集中を意味する以上、戦略的に望ましい統合ほど成立から遠ざかるという逆説が、この案件には凝縮されているとみることもできる。

もっとも、解約が会社に残したものは損失だけではない。解約は連結財政状態にも連結経営成績にも重要な影響を与えず、同じ日の取締役会は上限1,200億円の自己株式取得を決議している。統合を待つ側から、資本を自らの判断で使う側へ戻ったということである。その後の半導体製造装置事業の売上高は、契約を締結した2014年3月期の4,788億円から2019年3月期には1兆1,667億円へ伸びた。統合しなければ先端の開発競争に立てないという当時の見立ては、単独でも成り立ちうるものだったのかもしれない。

数字で見る 2表

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図と表

東京エレクトロン:半導体製造装置事業と連結売上高の推移

半導体製造装置 売上高(百万円)半導体製造装置以外の売上高(百万円)半導体製造装置 セグメント利益率(%)
東京エレクトロン:半導体製造装置事業と連結売上高の推移
(百万円) 半導体製造装置 売上高半導体製造装置 セグメント利益連結売上高 備考
2009年3月期 −−508,082 報告セグメントは産業用電子機器で、半導体製造装置の区分がない
2010年3月期 −−418,636 報告セグメントは産業用電子機器で、半導体製造装置の区分がない
2011年3月期 511,331120,845668,722
2012年3月期 477,87389,019633,091
2013年3月期 392,02648,600497,299 統合を合意する直前の期。セグメント利益は前期から404億円の減
2014年3月期 478,84174,284612,170 期中の2013年9月24日に経営統合契約を締結
2015年3月期 576,242135,991613,124 期末後の2015年4月27日に解約を決議。統合に係る費用8,529百万円を全社費用に計上
2016年3月期 613,032123,162663,948
2017年3月期 749,893182,709799,719
2018年3月期 1,055,234314,6021,130,728
2019年3月期 1,166,781326,7161,278,240
出所:東京エレクトロン 有価証券報告書 第46〜56期(セグメント情報等・連結損益計算書)
出所:東京エレクトロン 有価証券報告書 第46〜56期(セグメント情報等・連結損益計算書)

統合の条件と解約

統合の条件と解約
科目 概要 備考
経営統合契約の締結 2013年9月24日 対等な経営統合について合意し、アプライドマテリアルズとの間で締結した
統合の目的 グローバル・イノベーターとなること 両社の技術と製品が補い合う関係を統合の理由とし、戦略上重要な先端技術を届けることを目的とした
統合の方法 三角株式交換と三角合併 両社がオランダに設立する統合持株会社の完全子会社となり、両社の株主は同社株式を受け取る
統合持株会社 テル-アプライド ホールディングス ビーブイ オランダ王国ナイメーヘン市に2014年1月6日設立。資本金1ユーロ。商号は実行に先立ち変更する予定
株式交換比率 当社株式1株に対し3.25株 アプライドマテリアルズは同社株式1株に対し1株。2013年9月24日の契約締結時点の比率と同一
当社株主へ交付される株式数 582,406,373株 統合持株会社の普通株式の合計数
統合持株会社の代表者 ゲイリー・E. ディッカーソン氏 統合完了時のCEO兼Executive Director。東哲郎氏が設立当初の取締役に就任する
上場 当社は東京証券取引所で上場廃止 統合持株会社の株式は東京証券取引所とNasdaq株式市場へ新規上場を申請する予定
統合の条件 株主総会の承認と関係当局の承認等 日本、米国その他の国における適用ある競争法に基づく関係当局の承認等
株式交換契約の締結 2014年5月14日 統合の一環として、取締役会決議に基づきTELジャパン合同会社との間で締結
解約の決議 2015年4月27日 米国時間では4月26日。取締役会で統合契約の解約と三角株式交換の中止を決議した
解約による業績への影響 重要な影響はない 連結財政状態および連結経営成績に与える影響。違約金についての記載はない
経営統合に係る費用 8,529百万円 2015年3月期のセグメント利益の調整額に含まれる全社費用
解約と同日に決議した自己株式取得 上限1,540万株・1,200億円 取得期間は2015年5月14日から2016年5月13日。東京証券取引所における市場買付
出所:東京エレクトロン 有価証券報告書 第51期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】・第52期(2015年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
出所:東京エレクトロン 有価証券報告書 第51期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】・第52期(2015年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
参考文献

参考文献

参考
  • 東京エレクトロン ニュースリリース「東京エレクトロン株式会社とApplied Materials, Inc.が経営統合し、グローバル・イノベーターが誕生」
  • 東京エレクトロン ニュースリリース「東京エレクトロン株式会社とApplied Materials, Inc.の経営統合に関する対米外国投資委員会の承認取得」
  • Applied Materials, Inc. プレスリリース「Applied Materials, Inc. and Tokyo Electron Limited Agree to Terminate Business Combination Agreement(SEC Form 8-K Exhibit 99.1)」
  • 東京エレクトロン ニュースリリース「東京エレクトロン株式会社とApplied Materials, Inc.の経営統合契約の解約及びTELジャパン合同会社との株式交換の中止に関するお知らせ」
  • 東京エレクトロン 有価証券報告書「第51期(2014年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 東京エレクトロン 有価証券報告書「第52期(2015年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】【セグメント情報等】」

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