UFJ信託銀行との統合破談(2004年・三井住友トラストグループの決断)

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論点 UFJ信託の業務を引き受けるか
三井住友トラストグループ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
信託の規模拡大のための業務移管の合意と、UFJの転換による白紙化

何をなぜ決めたか:信託の規模拡大のための業務移管の合意と、UFJの転換による白紙化

概要

2004年5月、住友信託銀行はUFJグループと、UFJ信託銀行の業務を住友信託銀行グループへ順次統合する「協働事業」化で合意した。法人向け信託財管業務と不動産業務は2005年3月まで、リテール業務は2006年3月までに移し、住友信託銀行が新設する信託銀行にUFJホールディングスが優先出資する内容である。

しかし2004年7月14日、UFJホールディングスは協働事業化の中止を決め、同じ日に三菱東京フィナンシャル・グループへ経営統合を申し入れると発表した。住友信託銀行は仮処分を申し立て、2004年10月には旧UFJホールディングス等を被告として損害賠償を求める訴訟を起こした。

背景

相手のUFJグループは経営が悪化していた。UFJホールディングスの2004年3月期の連結当期純利益は4,028億円の赤字で、傘下銀行などで1兆3,115億円の与信関連費用を計上した。UFJホールディングスは普通株の配当を見送り、2004年5月24日に経営体制を刷新した。その際、信託を保険と並ぶ、外部との提携で補う専門機能とした。

住友信託銀行にとっては、信託の規模を一度に得る機会だった。UFJ信託銀行の2004年3月期の実質業務純益は860億円で、うち財管・不動産・リテールが350億円を占めた。証券代行ではUFJ信託銀行が大きく上回る首位で、住友信託銀行は4位だった。高橋温社長は、交渉の席で両社が 『メガバンクに匹敵するトップトラストバンク(信託銀行)を創設しよう』 と誓い合ったことを明かしている。

内容

協働事業化は約2か月で崩れた。2004年7月9日の時点でUFJホールディングスは、詳細と実施時期の月内合意に向けて協議中としていた。ところが7月14日に中止を決め、理由に自らの財務の現状と協働事業化の財務影響を挙げた。7月16日には三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合に向けた覚え書を交わした。

住友信託銀行の申立てに対し、東京地方裁判所は7月27日に仮処分を認め、UFJ側の異議も8月4日に退けられた。しかし8月11日、東京高等裁判所は第三者との情報提供・協議の禁止についてUFJ側の主張を受け入れ、8月30日の最高裁判所の決定もUFJ側は妥当と受け止めた。8月12日には両グループが経営統合で基本合意し、UFJ信託銀行は三菱信託銀行を存続会社として合併する方針となった。

含意

損害賠償の訴訟は、第一審で請求が棄却され、2006年6月の時点で住友信託銀行が控訴していた。2007年3月期、三菱UFJフィナンシャル・グループは単体の損益計算書に訴訟和解金2,500百万円を特別損失として計上し、この期の事業等のリスクからは住友信託銀行の訴訟の記載が消えた。この和解金は住友信託銀行との訴訟に係るものと推察される。

住友信託銀行は、信託の規模を別の相手と組んで獲得した。2009年11月に中央三井トラスト・ホールディングスと経営統合で基本合意し、2011年4月に株式交換で統合して三井住友トラスト・ホールディングスが発足した。2012年4月には3つの信託銀行が合併して三井住友信託銀行となり、統合後の最初の期である2012年3月期の合算信託財産額は168兆3,356億円となった。

いつ何が起きたか 12件
考察:UFJ信託を逃し、中央三井で得た規模
考察

考察:UFJ信託を逃し、中央三井で得た規模

なぜ住友信託銀行は、経営が悪化した相手の信託業務を引き受けようとしたのか。理由は、信託銀行の規模を一度に得られる機会だったからだと思われる。UFJ信託銀行の財管・不動産・リテールは、2004年3月期に350億円の実質業務純益を上げていた。証券代行のように規模が効く業務で、住友信託銀行は4位にとどまっていた。自前で首位に追いつくには長い年月がかかる。UFJ側が信託を外部との提携で補うと決めたことで、その差を一度の合意で埋める機会が生まれた。

もっとも、その機会は相手の弱さから生まれたものでもあった。UFJホールディングスは4,028億円の赤字を計上し、グループ全体を立て直す相手を必要としていた。信託の業務を移すだけの協働事業化は、その答えにはならない。より大きな相手が現れれば、UFJ側が乗り換える動機は初めからあったとみられる。住友信託銀行は仮処分で他社との協議を止めようとしたが、東京高等裁判所は第三者との協議の禁止を認めなかった。基本合意だけでは、相手を最終の契約まで縛れなかったことになる。

結果はすでに出ている。UFJ信託銀行の業務を引き受けるという判断は、失敗に終わった。UFJ信託銀行は三菱信託銀行と合併する方針に変わり、住友信託銀行に残ったのは訴訟だった。三菱UFJフィナンシャル・グループが計上した訴訟和解金は25億円で、移管されるはずだった業務が1年で上げる実質業務純益350億円に遠く及ばない。ただし信託の規模を得るという狙いは、2011年の中央三井トラスト・ホールディングスとの統合で果たし、2012年3月期の合算信託財産額は168兆3,356億円に達した。この決断は、相手の選び方では失敗し、規模の拡大では別の相手で実を結んだ部分的な成功である。

Yutaka Sugiura, 2026年6月
参考文献

参考文献

参考
  • UFJホールディングス 2004年3月期決算説明会資料(2004年5月25日)「住友信託銀行との合意内容」
  • UFJホールディングス 2004年3月期決算説明会資料(2004年5月25日)「2004年3月期 損益の概要」「与信関連費用」
  • 日経ビジネス 2004年7月19日号(日経BP)
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第2期(2007年3月期)【財務諸表】
  • UFJホールディングス ニュースリリース「UFJグループ新体制の発足にあたって」
  • UFJホールディングス 決算説明会資料「2004年3月期決算説明会<プレゼンテーション編>」
  • UFJホールディングス ニュースリリース「今朝の一部報道について」
  • UFJホールディングス ニュースリリース「住友信託銀行との協働事業化中止と当グループの新たな経営戦略について」
  • UFJホールディングス ニュースリリース「三菱東京フィナンシャル・グループとの経営統合について」
  • UFJホールディングス ニュースリリース「仮処分命令に対する異議申立て結果について」
  • UFJホールディングス ニュースリリース「仮処分命令に対する保全抗告申立ての結果について」
  • 三菱東京フィナンシャル・グループ、UFJホールディングスほか ニュースリリース「三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループの経営統合に関する基本合意について」
  • UFJホールディングス ニュースリリース「仮処分命令に対する最高裁の決定について」
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第1期(2006年3月期)【事業等のリスク】」
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第2期(2007年3月期)【財務諸表】【事業等のリスク】」
  • 三井住友トラストグループ 公式サイト「住友信託銀行の沿革」
  • 三井住友トラスト・ホールディングス 有価証券報告書「第1期(2012年3月期)【業績等の概要】」

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