三井住友トラストグループの直近の動向と展望

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三井住友トラストグループの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

政策保有株式ゼロ方針とプロダクト与信シフト

2020年6月に社長に就任した高倉透は、PBR向上とROE10%以上の達成を中期経営計画の柱に据えた。2021年5月に政策保有株式ゼロ保有方針を公表し、国内金融機関として先行する形で削減を進めた。2023〜25年度の3年間で取得原価1500億円の削減目標を掲げたが、株価・物価上昇を活用して削減を早め、2024年度に目標を1年前倒しで達成する見通しとなった。2024年3月末の売却済・売却合意先は58%、継続対話先は39%に到達した。国内金融機関として先行して政策保有株式の削減に踏み込んだ姿勢は、機関投資家や海外投資家からのESG・ガバナンス評価を高める要因にもなった。日本の他の金融機関に先駆けた判断が、後に国内の標準的な対応を引き上げる方向に機能する。

資本効率改革はB/S構造の入替にも及んだ。コーポレート与信から利の厚いプロダクト与信へのシフトが進み、2024年度上期はコーポレート貸出残高の減少が先行してRWAが圧縮された。2024年度通期の経常利益は3676億円、親会社株主純利益は2576億円となり、マイナス金利解除後の金利上昇も取り込んで回復した。中期経営計画の主要KPIは1年前倒しで達成した。マイナス金利解除後の金利上昇と政策保有株式の売却益が同時に寄与する環境を捉え、高倉体制の中期計画は想定を上回る速度で実現に近づいた。長期にわたる停滞からの脱却が数字として示されたかたちになる。マイナス金利時代の受動的な運用から能動的なB/Sマネジメントへ、経営の姿勢そのものが切り替わる転換点でもあった。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY2023
  • 決算説明会 FY2024-2Q
  • 決算説明会 FY2024
  • ITmediaエグゼクティブ 2026/1/28

プライベートアセット民主化と事業ポートフォリオ入替

成長領域として、プライベートアセットの民主化とインパクトエクイティ投資が据えられた。国内総合型インフラファンドは2023年度に第1号を組成し、2024年度に第2号、2030年度までに第3号へと広げる計画である。2024年10月には個人投資家向け新型金銭信託「フューチャートラスト」の提供を開始し、元本補てん型の信託商品を通じてプライベートアセット投資の裾野を広げる取り組みに踏み出した。米Apolloグループが運営するオルタナティブアセットポートフォリオへの投資も続く。戦後の長期資金供給機関として出発した信託銀行の業態が、2020年代には個人向け運用商品の設計者としても機能する方向に広がっている。

事業ポートフォリオの入替も実行段階に入った。2024年11月、子会社の三井住友トラスト・ローン&ファイナンスの持分85%をコンコルディア・フィナンシャルグループへ売却し共同事業化、2025年4月には北米貨車リース事業の株式譲渡契約を締結した。高倉は「政策保有株式の売却益がなくなった後も、持続的な利益成長を実現するために、様々な投資を行うことを決断した」(決算説明会 FY2024)と述べ、売却益依存からの脱却を強調した。2025年就任の大山一也は「毎年物価が2%から3%上がっている状況では、預金の実質的な価値が同程度目減りしていく、ということをもっと世の中に訴えたい」(ITmediaエグゼクティブ 2026/1/28)と述べ、インフレ下の資産形成を対外発信の柱に据えた。預金中心の家計資産を運用・信託型商品へ移す長期テーマが、次期経営の基軸となる。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY2023
  • 決算説明会 FY2024-2Q
  • 決算説明会 FY2024
  • ITmediaエグゼクティブ 2026/1/28

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11/1
決算説明会 FY2024
決算説明会 FY2023
決算説明会 FY2024-2Q
ITmediaエグゼクティブ 2026/1/28
ITmediaエグゼクティブ