C&FロジのTOB失敗(2024年・AZ-COM丸和ホールディングスの決断)

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論点 低温食品物流事業の取り込みと同意なき買収という手法の選択
売上高(億円)営業利益率(%)
低温食品物流の取り込みを狙った同意なき買付けと、下限に届かなかった応募

低温食品物流の取り込みを狙った同意なき買付けと、下限に届かなかった応募

概要

2024年5月1日、AZ-COM丸和ホールディングスは取締役会において、低温食品物流大手のC&Fロジホールディングスを完全子会社とするための一連の取引の一環として、同社株式を公開買付けにより取得することを決議した。買付価格は1株3,000円、買付予定数は21,646,698株、買付予定数の下限は10,811,204株とし、5月2日から6月19日まで33営業日にわたり実施した。しかし応募株券等の数は728,900株にとどまり、下限に満たなかったため応募株券等の全部の買付けを行わず、不成立に終わった。

背景

丸和HDはEC物流・低温食品物流・医薬医療物流の3つをコアの事業ドメインに据え、中長期の経営戦略として各ドメインの業容拡大を掲げていた。低温食品物流では、スーパーマーケット向けの物流ノウハウを集約したサービスメニュー「AZ-COM7PL」を発展させた調達ネットワークの構築や、多様な輸送モードに対応した産直プラットフォームの構築を中期重点施策としていた。C&Fロジ株は、同社が低温物流ネットワークを保有していることから業界動向把握のために24,296株を保有していた。

内容

公開買付けの目的として丸和HDは、低温食品物流市場において強いプレゼンスを発揮し持続可能な物流システムを構築するために何が必要かを検討した結果、非常に大きなシナジーが期待できる相手として同社を選んだことを挙げた。対象者取締役会の同意を得ないまま開始した買付けに対し、SGホールディングスによる対抗の公開買付けが行われ、丸和HDは買付価格を3,000円に据え置いたまま期間の満了を迎えた。

含意

応募株券等の数728,900株は、買付予定数の下限10,811,204株の1割にも満たなかった。丸和HDは自ら保有していたC&Fロジ株24,296株をSGホールディングスの公開買付けへ応募して売却している。第52期(2025年3月期)は株式公開買付関連費用が影響して営業利益が前期比20.8%減の10,969百万円となり、第53期には同費用の減少もあり8.3%増の11,864百万円へ戻した。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解 資金力の限界と、変わらぬ成長志向
筆者の見解

資金力の限界と、変わらぬ成長志向

C&Fロジホールディングスをめぐる攻防は、丸和HDが本業で培ってきた採算重視の経営哲学と、資金力にものを言わせる買収競争との間にある距離を映し出したといえる。対象者取締役会の同意を得ないまま踏み切った買付けは、1株3,000円という価格を据え置いたまま期間の満了を迎え、応募株券等は買付予定数の下限の1割にも満たなかった。丸和HDが自ら保有していたC&Fロジ株をSGホールディングスの公開買付けへ応募して売却した事実は、この一件の帰結をそのまま示している。

低温食品物流という成長領域への関心自体は失われておらず、有価証券報告書もM&Aを経営戦略として推進し、実行にあたっては投資効果の算定やシナジーの検証、企業文化に融合できるかを総合的に勘案すると記している。第52期に負担した株式公開買付関連費用は、価格を追わないという判断の代価として決算に残った。次にどの相手をどのような手法で狙うのかが、この経験を踏まえた同社の課題として残ると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

数字で見る 3表
公開買付けの条件

公開買付けの条件

科目 概要 備考
対象者の名称 株式会社C&Fロジホールディングス 貨物運送事業、倉庫事業等を行う傘下子会社及びグループ会社の経営管理
対象者の概要 代表取締役社長執行役員 綾宏將 資本金4,000百万円(2024年3月31日現在)、2015年10月1日設立、東京都新宿区
取締役会の決議日 2024年5月1日 完全子会社とするための一連の取引の一環として公開買付けによる取得を決議
公開買付けの目的 低温食品物流市場全体での付加価値創造 当社グループとの非常に大きなシナジーが期待できる対象者グループとの本公開買付
買付け等の価格 普通株式1株につき3,000円
買付予定数 21,646,698株 買付予定数の上限は設定していない
買付予定数の下限 10,811,204株 下限に満たない場合は応募株券等の全部の買付け等を行わない条件を付した
買付け等の期間 2024年5月2日から6月19日まで 33営業日。決済開始日は2024年6月26日の予定であった
応募株券等の数 728,900株 買付予定数の下限に満たず、応募株券等の全部の買付け等を行わなかった
取得した議決権比率 取得なし 完全子会社化は実現せず、企業結合等関係の注記は無い
当社が保有していた対象者株式 24,296株(74百万円) 第51期末の保有。第52期にSGホールディングスの公開買付けへ応募し売却
株式公開買付関連費用の金額 記載なし 第52期の減益要因として挙げられるのみで、金額そのものの開示は無い

出所:AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【重要な後発事象】・第52期(2025年3月期)【株式の保有状況】

連結業績の推移

AZ-COM丸和ホールディングス:連結業績の推移

(百万円) 売上高営業利益経常利益 備考
2020年3月期 98,3487,1947,392
2021年3月期 112,1138,0198,262
2022年3月期 133,0008,6499,139
2023年3月期 177,82911,36211,949
2024年3月期 198,55413,84514,498 公開買付けの決議は2024年5月1日で、この期の重要な後発事象に記載された
2025年3月期 208,37010,96911,645 株式公開買付関連費用が影響し、営業利益は前期比20.8%減
2026年3月期 230,53111,86412,530 前年に発生した株式公開買付け関連費用の減少もあり、営業利益は8.3%増
営業利益(百万円)経常利益(百万円)

出所:AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第47〜53期(主要な経営指標等の推移・連結損益計算書)

本公開買付けの株数

AZ-COM丸和ホールディングス:本公開買付けの株数

(株) 株数 備考
買付予定数 21,646,698 買付予定数の上限は設定していない
買付予定数の下限 10,811,204 下限に満たない場合は応募株券等の全部の買付け等を行わない条件を付した
応募株券等の数 728,900 下限に満たず、応募株券等の全部の買付け等を行わなかった
株数(株)

出所:AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)重要な後発事象

参考文献
出典・参考
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【重要な後発事象】
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第52期(2025年3月期)【株式の保有状況】
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第47〜53期【主要な経営指標等の推移】・連結損益計算書
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書「第51期(2024年3月期)【重要な後発事象】㈱C&Fロジホールディングスに対する公開買付けの実施」
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書「第51期(2024年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書「第52期(2025年3月期)【株式の保有状況】保有目的が純投資目的以外の投資株式」
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書「第47〜53期【主要な経営指標等の推移】・連結損益計算書・【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」

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