筆者の見解
自社の意思の外で決着した撤退劇
この判断の特異な点は、決着の付き方が自社の外に委ねられたことにある。通貨安と景気減速のなかで6期連続の赤字を重ねたアフリカ事業に見切りをつけ、採算が上向いた後もなお売却へ踏み切った点に、日本本社からの遠隔管理という構造的な難しさへの危機感がうかがえる。だが最終的にその判断を覆したのは、自社の経営判断ではなく、南アフリカの競争当局という第三者の審査であった。
海外M&Aで積み上げた版図の一部を手放そうとした試みが、買収先の市場における競争環境という別の論理によって差し止められる——グローバルに事業を展開する企業にとって、売り手の意思だけでは撤退すら完結しないことを、この一件は示している。結果としてアフリカに残った関西ペイントが、毛利訓士社長の掲げる"ONE KANSAI"のもとで、この地域とどう向き合っていくかは、なお注視される論点である。
Yutaka Sugiura, 2026年7月