キリンHDキリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営統合
2010年破談- 概要
- 2009年、国内首位のキリンと2位のサントリーが経営統合を交渉し、売上高約3.8兆円の世界最大級の飲料連合をめざしたが、約半年で破談した案件。
- 背景
- 国内市場の縮小と、ベルギー・インベブによる米アンハイザー・ブッシュ買収など世界的な飲料再編を前に、両社は規模拡大とグローバル展開を共通の課題としていた。
- 内容
- 共同持株会社方式が想定されたが、キリンが提示した統合比率1:0.5(後に0.75)とサントリー側の0.6以上の主張が折り合わず、加えて非上場の創業家資産管理会社・寿不動産がサントリー株の約89.3%を握る支配構造が新会社のガバナンスをめぐる対立を生んだ。
- 含意
- 統合の経済合理性よりも、統合比率という条件面と、創業家支配と公開会社の独立性・透明性という統治観の相違が決着を左右した。条件と統治の土台を欠いたまま規模を急いだ大型ディールの典型例である。
筆者の見解
条件と統治、二つの土台
この破談では、統合の経済合理性そのものよりも、統合比率という条件面と、資本のかたちに根ざした統治観の相違が前面に出たとみられる。収益力に差のある二社が対等に近い形で組もうとすれば、比率の設定は避けて通れない難問となる。さらに一方が非上場のオーナー企業であれば、創業家の支配と公開会社に求められる独立性・透明性をどう両立させるかという、数字に還元しにくい問いが残る。規模やシナジーの魅力が大きいほど、こうした土台の調整が後回しにされやすい点に、大型再編の難しさがあるのだろう。
破談それ自体を失敗と断じる材料は乏しい。条件と統治という二つの土台で折り合えないまま無理に統合へ進めば、より大きな摩擦を後年に持ち越した可能性もある。前のめりに規模を求める主導側と、自社の経営権を譲らない相手側という非対称、上場会社と非上場オーナー企業という資本の出自の違い——成立に至らなかったこの案件にも、企業の統治と再編の力学を読み解く手がかりは多く含まれているとみられる。
- キリンホールディングス株式会社 ニュースリリース(2010年2月8日)「サントリー社との経営統合交渉の終了について」
- Kirin Holdings ニュースリリース(2009年7月14日)「Comments on business merger discussions with Suntory Holdings Limited」
- AFPBB News 2009年7月13日
- GLOBIS知見録 2010年2月10日(川上慎市郎)
- PRESIDENT 2010年7月1日(松崎隆司)