三洋化成工業との統合破談(2019年・日本触媒の決断)

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論点 三洋化成工業との経営統合構想とその破談
売上高(億円)営業利益率(%)
最終契約まで結びながら実現しなかった共同株式移転による経営統合

最終契約まで結びながら実現しなかった共同株式移転による経営統合

概要

2019年5月29日、日本触媒は三洋化成工業との経営統合の検討に関する基本合意書を締結し、同年11月29日には共同株式移転により統合持株会社「Synfomix株式会社」を設立する最終契約を締結した。2020年10月1日の効力発生を予定していたが、2020年4月13日に2021年4月1日への延期と株式移転比率の見直しを決議し、同年10月21日に両社の合意で最終契約を解約した。

背景

有価証券報告書が統合の理由に挙げるのは、両社の強みと経営上の課題が相互に補完関係にあるという認識である。日本触媒は基礎化学品から機能化学品までの一貫生産のバリューチェーンを強みとする一方で、ユーザーニーズを意識した新規事業の創出を課題としていた。三洋化成は約3,000種類のパフォーマンス・ケミカルスを扱う一方、主要原材料を日本触媒をはじめとする外部からの調達に依存することを課題としていた。

内容

統合は両社を完全子会社とする持株会社を共同株式移転で新設する枠組みで、商号はSynfomix株式会社、資本金28,000百万円、本店は京都市東山区、本社機能は大阪市と東京都に置くとした。代表取締役会長には三洋化成の安藤孝夫社長、代表取締役社長には日本触媒の五嶋祐治朗社長が就任し、効力発生の2年後を目途に両社を合併する方針も掲げた。統合を契機とする人員整理は行わないと定めた。

含意

中止の理由として有価証券報告書が挙げるのは、最終契約の締結以降に原材料価格と製品価格の著しい変動が生じ、製品需要の先行き不透明感が増して事業環境が急速かつ大きく変化したことである。株式移転比率は最終契約でいったん合意したのちに見直しが決議され、確定しないまま解約に至った。日本触媒は2021年3月期に統合中止に伴う関連費用1,713百万円を計上している。

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筆者の見解 比率が決まらないまま終わった統合
筆者の見解

比率が決まらないまま終わった統合

2019年11月29日の最終契約は、共同株式移転による統合の枠組みを細部まで定めていた。統合持株会社の商号はSynfomix株式会社、資本金は28,000百万円、本店は三洋化成の本店がある京都市東山区、本社機能は大阪市と東京都の二か所である。代表取締役は2名とし、会長に三洋化成の安藤孝夫社長、社長に日本触媒の五嶋祐治朗社長を充て、社長が株主総会と取締役会の議長を務める。統合を契機とする人員整理は行わず、効力発生後数年間は処遇の不利益な変更も行わないと定めた。対等の統合として形は整っていた。

唯一決まらなかったのが株式移転比率である。最終契約ではいったん合意していたが、2020年4月13日の覚書で両社は効力発生日を2021年4月1日へ延ばすとともに比率の見直しに合意し、見直し後の比率は公表されないまま終わった。有価証券報告書は中止の理由を、最終契約の締結以降に原材料価格と製品価格の著しい変動が生じ、製品需要の先行き不透明感が増して両社を取り巻く事業環境が急速かつ大きく変化したことに求めている。交換比率は統合の技術的な細目ではなく、両社の企業価値が釣り合っているという前提そのものであった。その前提が動いたとき、残りの条件がどれだけ詰まっていても統合は成り立たなかった。日本触媒は2021年3月期に統合中止に伴う関連費用1,713百万円を計上し、同じ期に欧州子会社ニッポンショクバイ・ヨーロッパN.V.の有形固定資産の減損11,903百万円とシラス,Inc.ののれん等の減損9,282百万円が重なって、親会社の所有者に帰属する当期損益は10,899百万円の赤字となった。高吸水性樹脂を抱える機能性化学品事業の立て直しに、日本触媒は単独で向き合うことになった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

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統合の条件

統合の条件

科目 概要 備考
統合の方式 共同株式移転 両社を完全子会社とする統合持株会社を新設。効力発生の2年後を目途に両社を合併
統合持株会社の商号 Synfomix株式会社 読みはシンフォミクス。本店は京都市東山区、本社機能は大阪市と東京都23区内
統合持株会社の資本金 28,000百万円 純資産額と総資産額は有価証券報告書の提出日時点で未定とされた
統合持株会社の社長 五嶋祐治朗(日本触媒社長) 代表取締役会長は三洋化成の安藤孝夫社長。社長が株主総会と取締役会の議長
統合を行う主な理由 強みと経営課題の相互補完 日本触媒は新規事業の創出、三洋化成は原材料の外部調達依存を課題としていた
基本合意の締結 2019年5月29日 両社の臨時取締役会で決議。同日、各社社長を共同委員長とする統合準備委員会を設置
最終契約の締結 2019年11月29日 両社の臨時取締役会で決議。国内外の競争当局の承認を前提とする契約であった
株式移転比率 記載なし 最終契約で合意したのち2020年4月13日に見直しを決議し、以後の比率の開示はない
当初の効力発生日 2020年10月1日 2020年4月13日の覚書で2021年4月1日へ延期。株主総会と計画書作成の時期は未定に
上場の扱い 統合持株会社を東証一部へ新規上場 両社は効力発生日に先立ち上場廃止。当初の上場廃止予定日は2020年9月29日
従業員の扱い 統合を契機とする人員整理は行わない 効力発生後数年間は処遇の不利益な変更を行わないことを基本方針とした
統合の中止 2020年10月21日 両社の臨時取締役会で中止を決議し、同日付で最終契約を合意解約した
中止の理由 事業環境の急速かつ大きな変化 原材料価格と製品価格の著しい変動、製品需要の先行き不透明感を挙げている
中止に伴う関連費用 1,713百万円 2021年3月期の連結ではその他の営業費用、個別では特別損失に計上

出所:日本触媒 有価証券報告書 第107期(2019年3月期)【重要な後発事象】・第108期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】・第109期(2021年3月期)【経営上の重要な契約等】

連結売上収益と当期利益の推移

日本触媒:連結売上収益と当期利益の推移

(百万円) 売上収益親会社帰属当期利益 備考
2015年3月期 374,87319,089 2017年3月期までは日本基準。IFRSへの移行日は2017年4月1日
2016年3月期 323,12426,003
2017年3月期 293,97019,361
2018年3月期 313,93922,641 IFRSによる最初の期。日本基準では売上高322,801、当期純利益24,280
2019年3月期 338,86923,849
2020年3月期 302,15011,094 2019年5月に基本合意、11月に最終契約を締結した期
2021年3月期 273,163△10,899 NSEの減損11,903とシラス,Inc.の減損9,282、統合中止費用1,713を計上
2022年3月期 369,29323,720
2023年3月期 419,56819,392
2024年3月期 392,00911,008
2025年3月期 409,34617,394
売上収益(百万円)当期利益率(%)

出所:日本触媒 有価証券報告書 第108期・第113期(主要な経営指標等の推移)

参考文献
出典・参考
  • 日本触媒 有価証券報告書 第107期〜第109期【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】
  • 日本触媒 有価証券報告書「第107期(2019年3月期)【重要な後発事象】」
  • 日本触媒 有価証券報告書「第108期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • 日本触媒 有価証券報告書「第109期(2021年3月期)【経営上の重要な契約等】【経営成績等の状況】」
  • 日本触媒 有価証券報告書「第108期・第113期(2020年3月期・2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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