筆者の見解
比率が決まらないまま終わった統合
2019年11月29日の最終契約は、共同株式移転による統合の枠組みを細部まで定めていた。統合持株会社の商号はSynfomix株式会社、資本金は28,000百万円、本店は三洋化成の本店がある京都市東山区、本社機能は大阪市と東京都の二か所である。代表取締役は2名とし、会長に三洋化成の安藤孝夫社長、社長に日本触媒の五嶋祐治朗社長を充て、社長が株主総会と取締役会の議長を務める。統合を契機とする人員整理は行わず、効力発生後数年間は処遇の不利益な変更も行わないと定めた。対等の統合として形は整っていた。
唯一決まらなかったのが株式移転比率である。最終契約ではいったん合意していたが、2020年4月13日の覚書で両社は効力発生日を2021年4月1日へ延ばすとともに比率の見直しに合意し、見直し後の比率は公表されないまま終わった。有価証券報告書は中止の理由を、最終契約の締結以降に原材料価格と製品価格の著しい変動が生じ、製品需要の先行き不透明感が増して両社を取り巻く事業環境が急速かつ大きく変化したことに求めている。交換比率は統合の技術的な細目ではなく、両社の企業価値が釣り合っているという前提そのものであった。その前提が動いたとき、残りの条件がどれだけ詰まっていても統合は成り立たなかった。日本触媒は2021年3月期に統合中止に伴う関連費用1,713百万円を計上し、同じ期に欧州子会社ニッポンショクバイ・ヨーロッパN.V.の有形固定資産の減損11,903百万円とシラス,Inc.ののれん等の減損9,282百万円が重なって、親会社の所有者に帰属する当期損益は10,899百万円の赤字となった。高吸水性樹脂を抱える機能性化学品事業の立て直しに、日本触媒は単独で向き合うことになった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月