コムシスホールディングスNDS・SYSKEN・北陸電話工事の3社を株式交換で同時に完全子会社化

中部・九州・北陸の上場通信工事会社を一度に取り込み、全国の施工体制を揃えた2018年10月

時期 2018年5月
意思決定者(推定) 加賀谷卓 社長
論点 全国の施工体制の確保と発注者依存の分散
概要
2018年10月1日、コムシスホールディングスは株式交換によりNDS・SYSKEN・北陸電話工事の上場3社を同時に完全子会社化した。名古屋・熊本・金沢を地盤とする通信工事会社が一度にグループへ入った。
背景
NTT向け工事会社の集約は2000年代に東日本で進み、西日本はほとんど動いていなかった。2018年4月下旬から5月上旬にかけては、大手を含む電気通信工事10社が相次いで経営統合を発表した。
内容
現金を使わず株式交換で3社を取り込み、株主資本は183億円増えた。連結従業員は前期末比5,119名増の16,700名となり、NDS3,066名・SYSKEN981名・北陸電話工事717名が加わった。
含意
連結売上高はFY17の3,800億円からFY18の4,817億円へ、営業利益は303億円から353億円へ増えた。取得は簿価を下回り、負ののれん発生益5,159百万円が特別利益に立った。
筆者の見解

名前を消さなかった統合

この統合を、買い手が主導した拡大とだけ読むのは難しい。同じ時期に電気通信工事10社が示し合わせたように統合を発表し、その組み合わせは2年前から組まれていた共同企業体と重なっていた。当時の誌面が何らかの力が働いたとみるのが自然だと書いたのは、発注者であるNTTの発注作業が集約によって効率化される事情を指している。工事の採算が発注者の原価管理に守られている以上、各社が流れの外に立つ選択肢は乏しかったとみられる。

それでも実行の側は買い手の設計であった。現金を使わず自己株式103億円分と資本剰余金80億円で3社を引き受け、負ののれん発生益5,159百万円を計上し、連結従業員は1年で5,119名増えた。そして2018年10月に加わった会社の名は、2025年3月31日現在の有価証券報告書にもNDS・SYSKEN・北陸電話工事のまま並んでいる。7年を経ても、合併によって消した社名は一つもない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

西日本だけが手つかずで残っていた

NTT向け工事会社の再編は、東日本が先に済んでいた。2000年代に東日本で集約が進んで大手3社が生まれた一方、西日本の地域会社はほとんど動いていない。コムシスホールディングス自身も、2003年に東日本を地盤とする3社の株式移転で発足し、2010年10月に北海道のつうけんを株式交換で子会社にしたところで止まっていた。中部から西の各県には、それぞれの地域でNTTの工事を請け負う上場会社が残っていた[1][2]

工事の中身も変わり目に来ていた。次世代の移動通信である5G向けの工事が動き出す一方、固定電話については光ファイバーへの移行が一段落し、今後の縮小は避けられないとみられていた。1982年に初めて光ファイバーケーブル工事を受注してから36年、置き換えるべき銅線がほぼ尽きようとしていた。地域ごとに分かれた工事会社にとって、目の前の工事量が細る前に規模を確保する必要が生じていた[3]

10社が同じ時期に統合を発表した

動いたのはコムシスホールディングスだけではなかった。2018年4月下旬から5月上旬にかけて、同社と協和エクシオ、ミライト・ホールディングスの大手を含む電気通信工事10社が相次いで経営統合を発表している。被統合会社7社のうち6社はNTT西日本の地域を地盤とする会社であった。同時代の誌面は、各社の経営陣が同じ時期に同じ考えへ至るとは思えないとして、何らかの力が働いたとみるのが自然だと書いている[4]

組み合わせにも下地があった。各社は工事の採算向上を狙って2年ほど前から3つの共同企業体を作っており、大手3社が元請け、ほかが下請けという関係にあった。これが機能すればNTTの発注作業は大幅に効率化される。2018年の統合により、共同企業体の顔ぶれがそのままグループの顔ぶれになった。NTTの工事は長年の経験から原価管理がしやすく採算割れがまず起きないため、利益面での依存度は売上高に表れる以上に高いとも指摘された[5][6]

決断

3社を1日で子会社にする

2018年10月1日、コムシスホールディングスは株式交換によりNDS・SYSKEN・北陸電話工事の3社を完全子会社化した。NDSは名古屋、SYSKENは熊本、北陸電話工事は金沢を本拠とし、いずれも上場会社であった。1社ずつ順に取り込むのではなく、同じ日付で3件の株式交換を成立させている。前年6月に社長へ就いた加賀谷卓氏にとって、就任から1年余りでの実行にあたる[7]

人の数がその規模を示している。2019年3月31日現在の連結従業員は16,700名で、前期末から5,119名増えた。有価証券報告書は増加の主な理由として3社の完全子会社化を挙げている。セグメント別の内訳はNDSグループ3,066名、SYSKENグループ981名、北陸電話工事グループ717名で、日本コムシスグループの6,396名、つうけんグループの1,988名に次ぐ人員が一度に加わった[8]

現金を使わない対価と、簿価を下回った取得

対価に現金は使わなかった。連結株主資本等変動計算書に計上された「株式交換による増加」は合計18,326百万円で、うち10,317百万円は保有していた自己株式の交付でまかなわれ、残る8,009百万円が資本剰余金の増加となった。2018年3月期時点の有利子負債はごくわずかで、資金の手当てを理由に統合の時期を選ぶ必要はなかった。統合にともなって有利子負債は117億円まで増えたものの、規模に照らせば軽い水準にとどまった[9][10]

取得の値段も、相手の純資産を上回らなかった。2019年3月期の特別利益には負ののれん発生益5,159百万円が計上されている。特別利益の合計5,375百万円のほとんどがこの1項目であった。買収でのれんが資産に積み上がり、あとで減損を迫られる型とは逆の入り方となる。上場3社をまとめて引き受けながら、貸借対照表に将来の損失要因を持ち込まずに済んだ[11]

結果

売上が1,000億円増えた年度

数字は統合の翌期にすぐ表れた。連結売上高はFY17の3,800億円からFY18の4,817億円へ1,000億円余り増え、営業利益は303億円から353億円、経常利益は307億円から361億円、親会社株主に帰属する当期純利益は203億円から280億円になった。増収の幅に対して利益率が落ちなかった点が、この統合の性格を示している。工事量を安く買い集めたのではなく、同じ発注者を相手に同じ採算で仕事をしてきた会社が加わった結果であった[12]

事業の区分ごとに見ると、増え方は一様ではなかった。NTT設備事業は2018年3月期の1,859億円から2019年3月期に2,268億円へ、社会システム関連事業は992億円から1,367億円へ伸びている。加わった3社が地元でNTT以外の官公庁工事や電気工事も抱えていたため、統合はNTT向けの積み増しであると同時に非通信領域の積み増しでもあった。ITソリューション事業も590億円から750億円へ増えた[13]

全国体制のうえで動いた5年

統合の翌2019年5月、中期経営計画「コムシスビジョン NEXT STAGE 2023」が策定され、売上高6,000億円以上・営業利益500億円以上が5年間の目標に置かれた。5G基地局の整備と楽天モバイルの全国展開が重なったFY21には、売上高5,890億円・営業利益429億円で過去最高を更新している。全国に施工拠点が並んだ状態が、この時期の工事量を受け切る条件になった[14]

5Gの投資が峰を越えたFY22には、売上高5,632億円・営業利益321億円へ落ち込み、中期計画は「NEXT STAGE 2023+1」として1年延長された。それでもFY24には売上高6,146億円・営業利益460億円まで戻している。NTT設備事業が売上に占める比率はFY2024で38.5%となり、持株会社を設けた直前の54.1%から下がった。社会システム関連事業は2,114億円、ITソリューション事業は1,248億円で、非通信の2事業が過半を占めた[15][16]

出典・参考
  • コムシスホールディングス 有価証券報告書【沿革】
  • コムシスホールディングス 有価証券報告書(2019年3月期・従業員の状況)
  • コムシスホールディングス 有価証券報告書(2019年3月期・連結損益計算書)
  • コムシスホールディングス 有価証券報告書(2019年3月期・連結株主資本等変動計算書)
  • コムシスホールディングス 有価証券報告書(連結財務諸表)
  • コムシスホールディングス 決算説明資料
  • コムシスホールディングス 統合報告書2025
  • 週刊東洋経済 2018年6月2日号「ニュース深掘り 上意下達の再編 「電電ファミリー」いまだ健在」

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