日立化成昭和電工による9,640億円のTOBでの完全子会社化と東証1部上場廃止
- 概要
- 2019年12月18日、昭和電工が、日立製作所が約51%を握る上場子会社・日立化成を、1株4,630円・総額最大9,640億円のTOBで完全子会社化すると発表した。日立が進めた上場子会社再編の一環で、日立化成は日立グループ"御三家"の一角から化学専業の傘下へ移り、2020年6月に東証1部の上場を廃止した。日本の化学業界で過去最大のM&Aとなった。
- 背景
- 日立製作所はIoT基盤"ルマーダ"との関わりが薄く利益率の低い子会社の売却を進め、10年前に20社を超えた上場子会社を4社まで減らしていた。2018年末には日立化成で品質データの不正が発覚し、業績も低迷しており、御三家の一角は最初の売却対象となった。
- 内容
- 昭和電工は買付主体として完全子会社HCホールディングスを設け、日立保有分を含む全株式の取得を目指した。TOBは独占禁止法の審査で当初予定から遅れ、2020年3月24日開始・4月20日まで実施して発行済み株式の約87.6%を取得。その後の手続きを経て、日立化成は6月19日に上場を廃止した。
- 含意
- 買収額は日立化成の営業利益363億円に対して割高との批判が絶えず、昭和電工は約5,000億円ののれんを抱えて2020年12月期に巨額の最終赤字を計上した。旧日立化成は2020年10月に昭和電工マテリアルズへ社名を変え、2023年に統合会社レゾナックの中核事業となった。
筆者の見解
誰の判断だったのか
日立化成は持株比率約51%という距離のもとで経営を任され、グループ外へ材料を売る自主独立の会社として歩んできた。その独立性ごと化学専業の傘下へ移された点に、この売却が親会社の資本政策に主導された性格が表れている。日立製作所はルマーダとの関わりが薄く利益率の低い子会社の整理を進めており、2018年末の品質データ不正も重なって、御三家の一角が最初の対象となった。売る相手を先に決めたのは日立化成ではなく日立であった。
ただ、被買収を一方的な不運と片づけるのも実態には合わない。売却観測が広がって株価は高騰し、営業利益363億円に対する9,640億円という価格には高値づかみの批判が絶えず、買った昭和電工は約5,000億円ののれんと巨額赤字を抱えた。それでも高く値づけされたのは、日立化成の機能材料が化学再編の主役になりうると見込まれたからである。世界で戦う体制に入る機会と、独立を失う代償とが、一つの判断のなかに同居していたといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
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