昭和電工がTOBで買収(2019年・日立化成の決断)

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論点親会社の応募契約下でTOBに賛同するか
日立化成:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
1株4,630円の公開買付けへの賛同と、東証1部上場の廃止

何をなぜ決めたか:1株4,630円の公開買付けへの賛同と、東証1部上場の廃止

概要

2019年12月18日、日立化成の取締役会は、昭和電工の完全子会社HCホールディングスによる公開買付けが開始された場合には賛同の意見を表明し、株主に応募を推奨することを決議した。買付価格は1株4,630円、買付予定数の下限は議決権の3分の2にあたる138,812,200株で、上限は設けられなかった。2020年3月24日から4月20日までの買付けにより182,412,507株が集まり、4月28日の決済開始日をもって議決権保有割合は87.61%となった。

背景

日立化成は日立製作所が議決権の51.4%、発行済株式の51.24%にあたる106,699千株を保有する上場子会社であった。2020年3月期の売上収益は6,314億円、税引前当期利益は239億円で、前期の6,810億円・405億円から売上収益も利益も減少している。2019年3月期には製品の一部で不適切な検査等が判明し、外部の専門家等で構成する特別調査委員会を設置して原因究明と再発防止策を策定し、その費用を特別調査費用として計上していた。

内容

買付けの結果を受け、HCホールディングスを唯一の株主にする手段として、会社は2020年6月5日の臨時株主総会で株式併合を諮り、承認を得た。26,027,000株を1株に併合して発行済株式総数は208,216,013株から8株となり、株式は6月5日から6月18日まで整理銘柄に指定されたうえ、6月19日に東証1部を上場廃止した。6月23日には、HCホールディングスがみずほ銀行から借りた買付資金について、会社と国内完全子会社が連帯保証し子会社株式等を担保に供している。

含意

会社は昭和電工をパートナー企業として選定したと記し、上流の素材設計力と自社の材料・プロセス・評価技術を融合してワンストップ型先端材料パートナーをめざすと書いた。買い手の昭和電工は取得原価9,640億円のうち3,651億円をのれん、2,159億円をのれん以外の無形固定資産に配分し、2020年12月期に親会社株主に帰属する当期純損失763億円を計上している。会社は2020年10月に昭和電工マテリアルズへ商号を変更し、2023年1月に発足したレゾナックの中核事業となった。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役10名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 田中一行:会長
  • ジョージオルコット:取締役
  • 猿丸雅之:取締役
  • 新宅祐太郎:取締役
  • リチャードダイク:取締役
  • 松田千恵子:取締役
  • 北松義仁:取締役
  • 丸山寿:取締役
  • 森田守:取締役
  • 山下祐行:取締役
考察:誰の判断だったのか
考察

考察:誰の判断だったのか

日立化成は議決権の51.4%という距離のもとで経営を任され、グループ外へ材料を売る自主独立の会社として歩んできた。その独立性ごと化学専業の傘下へ移った点に、この取引が親会社の資本政策に主導された性格が表れている。昭和電工と公開買付応募契約を締結したのは日立製作所であり、日立化成の取締役会が決議したのは、開始された買付けに賛同し株主へ応募を推奨することであった。売る相手を先に決めたのは日立化成ではない。

ただ、被買収を一方的な不運と片づけるのも実態には合わない。会社は昭和電工をパートナー企業として選定したと書き、上流の素材設計力と自社の材料・プロセス・評価技術を合わせて世界トップレベルの機能性化学メーカーをめざすと対処すべき課題に掲げた。買い手が取得原価9,640億円のうち3,651億円をのれんに配分したことは、機能材料が化学再編の主役になりうると値づけされたことを示す。世界で戦う体制に入る機会と、独立を失う代償とが、一つの判断のなかに同居していた。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

日立化成:売上収益と利益の推移

売上収益(百万円)税引前当期利益率(%)
日立化成:売上収益と利益の推移
(百万円)売上収益税引前当期利益親会社株主に帰属する当期利益備考
2015年3月期526,68734,69222,587第70期有価証券報告書の組替後の数値
2016年3月期546,46853,68238,512
2017年3月期554,14454,38040,186
2018年3月期669,23448,94136,324
2019年3月期681,02540,50028,723製品の一部で不適切な検査等が判明し、特別調査費用を計上した期
2020年3月期631,43323,96016,4012019年12月18日に公開買付けへの賛同と応募推奨を決議した期
2020年12月期429,23814,8217,321決算期変更に伴い2020年4月から12月までの9か月の変則決算
2021年12月期635,03331,27219,316昭和電工マテリアルズとして提出した最後の有価証券報告書
出所:日立化成 有価証券報告書 第70期(2019年3月期)・第71期(2020年3月期)・第72期(2020年12月期)・第73期(2021年12月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:日立化成 有価証券報告書 第70期(2019年3月期)・第71期(2020年3月期)・第72期(2020年12月期)・第73期(2021年12月期)【主要な経営指標等の推移】

公開買付けの条件

公開買付けの条件
科目概要備考
公開買付者HCホールディングス株式会社昭和電工の完全子会社。2019年12月9日設立、資本金1億円
買付価格1株につき4,630円株式併合で生じる1株未満の端数の売却額も同額に設定した
買付期間2020年3月24日〜4月20日20営業日。決済の開始日は2020年4月28日
買付予定数の下限138,812,200株議決権2,082,182個の3分の2。完全子会社化が目的のため上限なし
買い付けた株式数182,412,507株決済開始日時点の議決権保有割合は87.61%
対象会社取締役会の意見賛同し、応募を推奨2019年12月18日の取締役会と2020年3月23日の書面決議で公表
特別委員会記載なし第71期有価証券報告書に特別委員会に関する記載はない
親会社の異動2020年4月28日日立製作所(議決権51.4%)からHCホールディングスへ
株式併合26,027,000株を1株に併合2020年6月5日の臨時株主総会で可決、6月23日に効力発生
発行済株式総数208,216,013株から8株へ株式併合により208,216,005株が減少した
上場廃止日2020年6月19日6月5日から6月18日まで整理銘柄。最終取引日は6月18日
期末配当見送り公開買付けの開始予定を理由に決定。中間配当は1株30円
債務保証と担保提供2020年6月23日HCのみずほ銀行借入を連帯保証し、子会社株式等を担保に提供
商号変更2020年10月1日昭和電工マテリアルズ株式会社へ変更した
買い手の取得原価964,040百万円のれん365,123百万円、のれん以外の無形固定資産215,918百万円
出所:日立化成 有価証券報告書 第71期(2020年3月期)【重要な後発事象】【関係会社の状況】 / 昭和電工 有価証券報告書 第111期(2019年12月期)【経営上の重要な契約等】
出所:日立化成 有価証券報告書 第71期(2020年3月期)【重要な後発事象】【関係会社の状況】 / 昭和電工 有価証券報告書 第111期(2019年12月期)【経営上の重要な契約等】
当時の取締役10名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 田中一行:会長
  • ジョージオルコット:取締役
  • 猿丸雅之:取締役
  • 新宅祐太郎:取締役
  • リチャードダイク:取締役
  • 松田千恵子:取締役
  • 北松義仁:取締役
  • 丸山寿:取締役
  • 森田守:取締役
  • 山下祐行:取締役
参考文献

参考文献

参考
  • 日立化成 有価証券報告書「第71期(2020年3月期)連結財務諸表注記31 後発事象」
  • 日立化成 有価証券報告書「第71期(2020年3月期)関係会社の状況、大株主の状況」
  • 日立化成 有価証券報告書「第71期(2020年3月期)対処すべき課題、損益計算書注記」
  • 日立化成 有価証券報告書「第70期(2019年3月期)〜第73期(2021年12月期)主要な経営指標等の推移」
  • 昭和電工 有価証券報告書「第111期(2019年12月期)経営上の重要な契約等」
  • 昭和電工 有価証券報告書「第112期(2020年12月期)企業結合等関係」
  • 日立製作所 有価証券報告書「第152期(2021年3月期)注5.事業再編等」

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