パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスユニーの完全子会社化とPPIHへの改称——GMS最大手級を呑み2兆円企業へ
「ドン・キホーテ」の名を法人から外してまで、なぜユニーを完全子会社にしたか
- 概要
- 2019年1月、ドンキホーテホールディングスが大原孝治社長のもとで総合スーパー大手ユニーを完全子会社化し、翌2月に商号を「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」(PPIH)へ改めた経営判断。グループ店舗数は600店に達した。
- 背景
- 都市型ディスカウントとPB・電子マネーで増収増益を重ねたドンキホーテHDは、2018年6月期に連結売上高9,415億円。さらなる規模拡大には食品・地方に強い大型GMSが要り、2007年の長崎屋で得たGMS運営の型を、より大きな規模で回す相手を探していた。
- 内容
- 2017年に提携してユニー株の40%を取得、2019年1月に残る60%を282億円で取得して完全子会社化した。同時に商号から「ドン・キホーテ」を外し、環太平洋を志向するPPIHへ改称。店舗ブランドの「ドン・キホーテ」は事業会社に残した。
- 含意
- 2019年6月期の連結売上高は1兆3,289億円と前期比4割増。ユニー店舗にドンキ流の個店主義を持ち込んで不振店を立て直し、連結売上高は2024年6月期に2兆円を超えた。長崎屋で試したGMS取り込みの型を、最大規模で反復した買収である。
名を外して間口を広げる
この決断で際立つのは、規模の拡大と自社の位置づけの描き直しを同時に進めたことである。2007年の長崎屋で身につけた、総合スーパーをMEGA業態へ作り替える手法を、はるかに大きなユニーで繰り返した。200店規模だった長崎屋に対し、ユニーの取り込みでグループの店舗数は一気に600店へ届いた。自らの弱みを、相手を資産ごと抱え込んで補うというドン・キホーテのM&Aの型は、ユニーの買収で確立された。また、商号から「ドン・キホーテ」を外した判断には、国内のディスカウンターという顔を、環太平洋の小売業へ広げる宣言の意味があった。
もっとも、総合スーパーの再生は転換後の運営力に左右され、規模の拡大がそのまま収益に結びつくわけではない。連結売上高が2兆円を超えた後も、ユニー店舗の立て直しと海外事業の育成は続く。法人名から「ドンキ」を外してまで掲げた環太平洋の看板に実態が追いつくかどうかは、その後のHD傘下の事業成果にかかっており、これらの事業をどう統制するかという新しい課題に向き合うことになる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
都市型で伸びた先の規模の壁
2010年代のドンキホーテホールディングスは、都市型ディスカウントにPB「情熱価格」と電子マネー「majica」を組み合わせ、増収増益を重ねていた。2018年6月期の連結売上高は9,415億円。だが、さらに規模を伸ばすには、食品と地方に強い大型の総合スーパーが要る。2007年の長崎屋で覚えたGMS運営の型を、より大きな規模で回す相手を、同社は探していた。折しも、コンビニ最大手のファミリーマートと統合したユニー・ファミリーマートホールディングスは、傘下の総合スーパー・ユニーの扱いに悩んでいた[1]。
ユニーへの二段階の接近
接近は段階を踏んだ。2017年8月、ドンキホーテHDはユニー・ファミリーマートHDと資本・業務提携を結んだ。同年11月にはユニー株式の40%を取得して持分法適用関連会社とし、経営の一角に入り込んだ。総合スーパーをまるごと抱えるリスクを一度に負わず、まず4割で経営の実態を見極める。長崎屋のときとは違い、上場グループ傘下の大型GMSを段階的に取り込む、慎重な入り方だった[2]。
決断
残る60%を282億円で取得し完全子会社化
2018年10月、ドンキホーテHDはユニーの完全子会社化を発表した。持分法適用会社としていたユニーの残る株式を取得し、100%子会社とする決断だった。2019年1月4日、ユニー・ファミリーマートHDからユニー株式の60%を取得し、完全子会社化が完了した。取得額は282億円。株式取得の完了に伴い、ユニーの代表取締役会長には、ドンキホーテHD代表取締役社長兼CEO兼ドン・キホーテ代表取締役社長の大原孝治氏が就いた。この買収でグループ店舗数は600店に達した[3][4]。
「ドン・キホーテ」の名を外す——PPIHへ
買収と並んで、同社はもう一つの決断を下した。2019年2月1日、商号を「株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」(PPIH)へ改めた。日本で広く知られる「ドン・キホーテ」の名を法人名から外し、環太平洋地域のグローバルグループにふさわしい商号へ変える判断だった。店舗ブランドとしての「ドン・キホーテ」は事業会社に残し、持株会社の名だけを国際的なものへ替えた。国内の総合小売グループから、環太平洋の小売業へと、自らの立ち位置を広げる改称であった[5]。
結果
600店・2兆円企業への軌道
ユニーの取得で、グループ店舗数は600店に達し、売上規模は一段と跳ね上がった。ユニーを2019年1月から連結した2019年6月期の連結売上高は1兆3,289億円と、前期の9,415億円から4割増えた。その後もユニーの店舗にドンキ流の個店主義を持ち込み、権限を現場へ委ねる運営で不振店を立て直した。連結売上高は2024年6月期に2兆円を超え、GMS・ディスカウント・海外を束ねる小売グループへ規模を広げた[6][7]。
ダブルネームでユニーを作り替える
取り込んだ総合スーパーを、PPIHはそのままの形では残さなかった。アピタ・ピアゴの店舗を「MEGAドン・キホーテUNY」といったダブルネームへ切り替え、ドンキ流の個店主義を注ぎ込んだ。本部が一律に棚割りを決めるチェーン運営を改め、個店ごとに品ぞろえと売り方を変える。生鮮の売場を広げ、「驚安」のPOPと山積みのワゴンで価格の訴求を前に出した。まず商勢圏の広がる約20店を2019年に転換し、約100店を5年以内に作り替えて、5年後に営業利益で約200億円の上積みを見込んだ[8][9]。
改造の効果は、規模の面にも早く表れた。2019年12月6日、ドン・キホーテ13店(大阪市)の開業で、グループの店舗数は700店に達した。1989年に1号店を開いてから、ちょうど30年目にあたる。ユニーの子会社化で東海地方を中心に店舗網が一気に広がり、2020年6月期に売上高1兆円・店舗数500店としていた中期目標を、前倒しで達成した。都市型ディスカウントだけでは届かなかった規模と地盤を、GMSの取り込みで一足飛びに手にしたとみることができる[10]。
- 日本経済新聞(2018年10月11日)
- 流通ニュース(2019年1月4日)
- 流通ニュース(2019年1月31日)
- 日本食糧新聞(2019年2月8日)
- BCN+R(2020年3月31日)
- ダイヤモンド・チェーンストアオンライン(2019年12月9日)
- パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 有価証券報告書(連結・沿革)