エイチアンドエフとビアメカニクス買収(2025年・アマダの決断)

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論点欠けた領域を自社開発か買収か
アマダ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
自前開発ではなく687億円の買収による超大型プレスと基板の微細穴明の獲得

何をなぜ決めたか:自前開発ではなく687億円の買収による超大型プレスと基板の微細穴明の獲得

概要

2025年、アマダがカナデビアからプレス機械のエイチアンドエフを177億円で、アドバンテッジパートナーズが提供するファンド等から半導体パッケージ基板向けドリル穴明機のビアメカニクスを510億円で、相次いで100%取得した経営判断。決議はそれぞれ2025年1月24日と4月17日の取締役会で、企業結合日は5月1日と7月1日。いずれも現金を対価とする株式取得で、取得対価の合計は687億円にのぼる。

背景

2024年3月期は売上収益・営業利益・親会社の所有者に帰属する当期利益のいずれもが2期連続で過去最高を更新したが、翌2025年3月期は減収に加えて生産調整に伴う操業度の低下と人件費の増加が重なり、営業利益は前期比13.2%減の490億円へ減少した。

自社単独では届かない市場や技術、顧客との接点を一気に獲得する手段として、アマダはM&Aに長期成長戦略として注力していた。山梨貴昭社長は『挑戦しなければ企業は縮小してしまう。だからこそ私は、この2つのM&Aに踏み切りました』と、2件のM&Aに踏み切った理由を明かしている。

内容

エイチアンドエフは福井県あわら市のプレス機械・自動化装置・制御装置のメーカーで、中小型に偏っていたアマダのプレスに大型・超大型のラインナップと、自動車メーカーやTier1へ直接提案できる体制が加わった。ビアメカニクスは神奈川県厚木市で半導体パッケージ基板・プリント基板向けの高精度ドリル穴明機とレーザ加工機を手がけ、子会社7社とともにグループへ入った。

取得に伴うのれんは前者が168百万円にとどまり、後者は23,850百万円。ビアメカニクスからは顧客関連資産9,594百万円(見積耐用年数17年)と技術資産3,127百万円(同8年)も同時に受け入れている。

含意

連結した初年度の2026年3月期は、エイチアンドエフが入った金属工作機械セグメントの売上収益が前期比35.5%増の883億円、営業利益が32.8%増の91億円へ伸び、ビアメカニクスを含む「その他」の売上収益は12億円から225億円へ増加した。一方で全社の営業利益は米国の関税影響や人件費上昇といったコスト増により前期比8.7%減の447億円。総資産は1,222億円増加して7,721億円となり、親会社所有者帰属持分比率は79.9%から69.4%へ10.5ポイント下がった。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役9名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

考察:半世紀前の買収と、逆を向いた動機
考察

考察:半世紀前の買収と、逆を向いた動機

1973年から1977年にかけて天田勇氏が淀川プレス製作所や園池製作所を系列へ収めたとき、金で買っていたのは工場用地と設備と人であった。新工場を建設するより安く即戦力になるという計算で、相手はいずれも経営不振に陥っていた。2025年の2件は動機が逆を向いている。エイチアンドエフから受け入れた資産29,711百万円のうち12,280百万円は現金で、のれんは168百万円しか立たず、正味の支出は54億円にとどまった。買ったのは救済ではなく、自社に欠けていた寸法、すなわち中小型に偏っていたプレスの上限と、ハイエンド基板の微細な穴明という精度であった。

もっとも、687億円という値付けが妥当だったかは、まだ判定できない。ビアメカニクスで立てたのれん238億円は償却されず、回収可能性を毎期の減損テストで問われ続ける。半世紀前の買収は、相手の累積欠損を消して復配させれば成果が目に見えた。領域を金で埋める買い物は、自社のレーザ技術との噛み合わせが差別化商品として現れるまで答えが出ない。板金加工機で貯めた稼ぐ力を成長分野の入場券に換えた、その換算率が読めるのは、中期経営計画2030が終わる2030年度あたりになると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

アマダ:のれんと無形資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)
アマダ:のれんと無形資産の推移
(百万円)のれん無形資産総資産備考
2020年3月期5,92815,009558,595
2021年3月期6,06713,532557,298
2022年3月期6,25111,900614,439
2023年3月期6,42611,810647,562
2024年3月期6,78112,610681,053
2025年3月期6,74812,270649,8911月にエイチアンドエフの取得を決議。実行は翌期のためのれんは動いていない
2026年3月期31,10424,184772,109のれん増加分の23,850はビアメカニクス、168はエイチアンドエフ
出所:アマダ 有価証券報告書 第83期〜第88期(連結財政状態計算書、注記「のれん及び無形資産」)
出所:アマダ 有価証券報告書 第83期〜第88期(連結財政状態計算書、注記「のれん及び無形資産」)

アマダ:金属工作機械セグメントと「その他」の推移

金属工作機械 売上収益(百万円)金属工作機械 セグメント利益率(%)
アマダ:金属工作機械セグメントと「その他」の推移
(百万円)金属工作機械 売上収益金属工作機械 セグメント利益その他 売上収益備考
2020年3月期61,7446,5101,240
2021年3月期46,1763,6081,184
2022年3月期55,5136,6761,252
2023年3月期63,0287,6321,286
2024年3月期67,5827,3531,301
2025年3月期65,2136,8991,255「その他」は不動産賃貸事業等のみ。2社はいずれもまだ連結していない
2026年3月期88,3459,16122,541工作機械はエイチアンドエフ、その他はビアメカニクス。その他は1,696の営業損失
出所:アマダ 有価証券報告書 第83期〜第88期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上収益・利益)
出所:アマダ 有価証券報告書 第83期〜第88期(セグメント情報、報告セグメントごとの売上収益・利益)

2件の買収の条件

2件の買収の条件
科目概要備考
被取得企業(1件目)株式会社エイチアンドエフプレス機械、各種自動化装置、制御装置の製造・販売及びアフターサービス。売り手はカナデビア
決議と契約(エイチアンドエフ)2025年1月24日取締役会で決議し、同日付で株式譲渡契約を締結。3月に実行日を4月1日から5月1日へ変更
企業結合日(エイチアンドエフ)2025年5月1日取得した議決権付資本持分の割合は100%。現金を対価とする株式取得
取得対価(エイチアンドエフ)17,700百万円全額が現金。取得した子会社の現金12,280百万円を除く正味支出は5,419百万円
受け入れた資産・負債(エイチアンドエフ)純額17,531百万円資産29,711(うち現金12,280)、負債12,179。取得した無形資産は77にとどまる
のれん(エイチアンドエフ)168百万円既存事業とのシナジーを含む超過収益力。償却せず毎期減損テストを行う
取得関連費用(エイチアンドエフ)119百万円アドバイザリーへの報酬・手数料等。115百万円は2025年3月期の販管費に計上
被取得企業(2件目)ビアメカニクス株式会社半導体パッケージ基板・プリント基板向けの高精度ドリル穴明機/レーザ加工機
決議と契約(ビアメカニクス)2025年4月17日取締役会で決議し、同日付で株式譲渡契約を締結。売り手はアドバンテッジパートナーズのファンド等
企業結合日(ビアメカニクス)2025年7月1日取得した議決権付資本持分の割合は100%。現金を対価とする株式取得
取得対価(ビアメカニクス)51,000百万円全額が現金。取得に充てた短期借入金の増加で財務CFは13,741百万円の収入に転じた
受け入れた資産・負債(ビアメカニクス)純額27,149百万円資産52,346(うち棚卸資産17,213)、負債25,197。無形資産は14,534
取得した無形資産(ビアメカニクス)顧客関連資産9,594百万円見積耐用年数17年。技術資産3,127百万円は8年。いずれも償却対象
のれん(ビアメカニクス)23,850百万円償却せず、ビアメカニクスグループを資金生成単位グループとして毎期減損テスト
取得関連費用(ビアメカニクス)740百万円アドバイザリーへの報酬・手数料等。719百万円は2025年3月期の販管費に計上
出所:アマダ 有価証券報告書 第88期(2026年3月期)連結財務諸表注記「7.企業結合」 / 第87期(2025年3月期)【重要な契約等】「39.後発事象」
出所:アマダ 有価証券報告書 第88期(2026年3月期)連結財務諸表注記「7.企業結合」 / 第87期(2025年3月期)【重要な契約等】「39.後発事象」
当時の取締役9名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • MONOist(2026年5月18日)
  • アマダ ニュースリリース「総合プレス機械メーカーを買収」
  • アマダ 適時開示「(開示事項の変更)株式会社エイチアンドエフの株式の取得(子会社化)及び一部事業の譲受に関するお知らせ」
  • アマダ ニュースリリース「基板穴あけ加工機のリーディングカンパニーを買収」
  • アマダ 有価証券報告書「第87期(2025年3月期)【重要な契約等】・連結財務諸表注記「39.後発事象」」
  • アマダ 有価証券報告書「第88期(2026年3月期)連結財務諸表注記「7.企業結合」」
  • アマダ 統合報告書「統合報告書2025「経営トップメッセージ」「成長戦略」」

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