連続買収による総合コンサルティンググループ化
持株会社という器に、製造業SIから経営戦略コンサルまで——独立系はどこまで守備範囲を広げたか
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- 概要
- 2017年から2024年にかけて、フューチャーが製造業向けSI・情報セキュリティ・デザイン・経営戦略コンサルティングの会社を連続して買収し、ITコンサルを中核としながら経営戦略コンサルまで守備範囲を広げて総合コンサルティンググループ化した経営判断。
- 背景
- 2016年の持株会社化で機能・業種別子会社を束ねる器は整えたが、ITコンサルとシステム実装だけでは顧客の経営課題を丸ごと引き受けるには守備範囲が狭く、器を満たす中身が課題として残っていた。
- 内容
- 2017年のワイ・ディ・シー(製造業SI)、2018〜19年のディアイティ(セキュリティ)、2022年のネイロ、2023年のキュリオシティ(デザイン)、2024年のリヴァンプ(経営戦略・実行コンサル)を順に取り込み、上流の戦略から下流の実装までを一貫して担う体制へ拡張した。
- 含意
- 独立系のまま経営とITを一体で引き受ける総合性を得た一方、収益は一貫して本業のITコンサルに集中する二層構造が続き、広げた守備範囲を稼ぐ力に育てられるかは今後の課題として残る。
守備範囲を広げることと、稼ぎ方を変えること
この連続買収は、単一事業から総合コンサルティンググループへ、という物語として読める。2016年に用意した持株会社という器に、製造業SI・セキュリティ・デザイン・経営戦略コンサルという中身を、七年ほどをかけて順に満たしていった歩みであった。系列に頼らず顧客の経営課題を丸ごと引き受けるという創業以来の発想が、買収の選び方にも通っているようにみえる。
ただし、守備範囲を広げることと、稼ぎ方そのものを変えることは同じではない。取り込んだ隣接領域の多くは、いまのところ本業ほどの利益率を生むには至っておらず、グループの収益はなおITコンサルティングが支えている。総合化が顧客の経営課題をより深く引き受ける力に育つのか、それとも本業を核とした緩やかな周辺配置にとどまるのか。生成AIへの集中投資という次の一手とあわせて、この総合化の実質はこれから問われていくとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
持株会社という器と、満たすべき中身
2016年4月、フューチャーはITコンサルティング本業を新設のフューチャーアーキテクトへ承継させ、本体を持株会社へ移した。機能別・業種別の子会社を束ねる器がここで整った。しかし器を組み替えただけでは、成長を支える中身までは生まれない。創業以来のITコンサルとシステム実装だけでは、顧客の情報システムは引き受けられても、経営そのものを丸ごと引き受けるには守備範囲が狭かった。金丸恭文氏が率いる同社は、この空白をどう埋めるかという課題を抱えていた[1]。
独立系という出自が、この課題を切実にしていた。特定メーカーの系列に属さない同社は、後ろ盾を持たない代わりに、提案の質と成果だけで案件を勝ち取ってきた。顧客の課題を上流の戦略から下流の実装まで一貫して引き受けられる幅は、そのまま競争力の源泉になる。2010年代前半にもメディア・EC・教育といった領域を小型買収で取り込んでいたが、いずれも本業のコンサルとは離れた実験場にとどまり、機能はばらけたままであった[2]。
決断
IT隣接領域から順に取り込む
守備範囲の拡張は、本業に近い領域から始まった。2017年1月、同社は横河電機から株式会社ワイ・ディ・シー(現フューチャーアーティザン)を取得し、連結子会社化した。ワイ・ディ・シーは製造業向けの技術コンサルティングとエンジニアリングサービスを手がけ、フューチャーが強かった流通・金融とは異なる製造業の現場に接点を持っていた。2018年10月には横河電機から株式を追加取得して完全子会社化し、製造業向けSIの能力をグループへ組み込んだ[3]。
次に取り込んだのは、情報セキュリティであった。2018年9月、持分法適用関連会社だった株式会社ディアイティ(現フューチャーセキュアウェイブ)の株式を追加取得して連結子会社化し、2019年8月にさらに追加取得して完全子会社化した。基幹システムの刷新を担うコンサルにとって、セキュリティは顧客に一体で提供すべき機能であり、外部に委ねずグループ内へ抱え込む選択であった。買収は本業の周辺に隣接機能を継ぎ足していく形で、段階を踏んで進んだ[4]。
デザインを経て、経営戦略コンサルまで
2020年代に入ると、買収の矛先はITの外側へも向かった。2022年10月にゲーム開発のネイロ株式会社を、2023年4月には商業デザインや工業デザインを手がけるデザインスタジオの株式会社キュリオシティを、それぞれ子会社化した。キュリオシティの買収では、グループのITコンサルティング力と、リアルな空間で培われたデザイン力を掛け合わせる狙いが掲げられた。顧客との接点を、画面のなかのシステムから店舗や製品の体験へと広げる試みであった[5][6]。
連続買収の到達点となったのが、2024年3月の株式会社リヴァンプの子会社化であった。リヴァンプは企業の経営改革や再生を支援する会社で、ロッテリアの経営再建やクリスピー・クリーム・ドーナツの日本事業を手がけた実績を持つ。フューチャーが得意とするデジタル改革と、リヴァンプが小売業などで培った経営支援のノウハウを共有し、相互に事業を広げる狙いが掲げられた。ITコンサルを出発点とした同社は、ここに至って経営戦略・実行コンサルティングまで守備範囲を広げ、総合コンサルティンググループの形を整えた[7][8]。
結果
上流から実装まで、独立系の総合コンサルへ
一連の買収を経て、フューチャーは経営の上流にある戦略から下流のシステム実装までを、独立系のまま一貫して引き受けられる体制を築いた。案件単位ではなく、顧客の経営課題単位で機能別子会社を束ねるという持株会社化のねらいは、買収によってようやく中身を伴った。業績も拡大し、連結売上高はセグメント開示の始まった2015年12月期の353億円から、リヴァンプを取り込んだ2024年12月期には699億円へ伸び、翌2025年12月期には760億円に達した。当期純利益も同じ期間に27億円から103億円へ積み上がった[9]。
もっとも、収益の構造は一貫して本業のITコンサルティングに集中していた。セグメント開示が始まった2015年12月期でも、ITコンサル事業が売上215億円・利益46億円を稼ぐ一方、買収で取り込んだメディアなどの周辺事業は赤字を抱えていた。連続買収で広げた守備範囲は、収益の柱を並べ替えるというより、本業のコンサルを軸に据えつつ顧客接点と新しい技術・技能の実験場を外側へ広げるものであった。上流から下流までを揃えた総合性は、あくまで本業の高い収益性に支えられていた[10]。
- フューチャー 有価証券報告書 第37期(2025年12月期)【沿革】
- 日本経済新聞(2024年1月24日)「フューチャー、リヴァンプ完全子会社化 支援事業拡大」
- M&A Online(2023年3月23日)「フューチャー、デザインスタジオのキュリオシティを子会社化」
- フューチャー 有価証券報告書(連結・セグメント情報)