不二製油世界3位の業務用チョコレート会社ブラマーの買収
- 概要
- 2018年11月、不二製油グループ本社は米Blommer Chocolate Companyの株式取得を決議し、2019年1月28日に子会社化を完了した。取得原価は587百万米ドル(645億95百万円)で、アドバイザー等への報酬・手数料などの取得関連費用12億77百万円を別に計上している。
- 背景
- 油脂・大豆たん白に続く柱として業務用チョコレートを育てるため、2015年にブラジルのハラルド社、2016年にマレーシアのチョコレート会社、2018年にオーストラリアのIndustrial Food Servicesを取得していた。残っていたのが、業務用チョコレート市場110万トン程度と単一市場で世界最大の米国の生産基盤であった。
- 内容
- 米国の企業再編法制に基づく逆三角合併により、BLOMMER CHOCOLATE COMPANY他12社の議決権100%を取得した。同社は世界3位の業務用チョコレートメーカーであり、ココア豆加工では世界5位にあたる。取得原価の配分が確定した後ののれんは233億71百万円で、15年にわたる均等償却である。
- 含意
- 株式取得により環太平洋を主軸に世界10カ国16カ所のチョコレート製造工場を持つ体制となり、世界3位の業務用チョコレートメーカーとなった。一方でブラマー社はコロナ禍の影響と原材料価格・金利の上昇による収益悪化から、2024年3月に2028年度までの構造改革を公表し、5月にシカゴ工場を閉鎖した。2025年3月期は業務用チョコレート事業のセグメント損益が158億33百万円の損失となっている。
順位を買うことと、事業を持つこと
この買収で不二製油グループが手に入れたのは、北米の顧客基盤と、世界3位という位置であった。地域ごとに会社を買い足してきた進め方の最後に、単一市場で世界最大の米国の生産設備を押さえた判断だが、狙いは順位そのものよりも、自社の油脂技術をチョコレートへ持ち込める場を確保することにあったと思われる。素材メーカーが川下の加工まで抱えるとき、買っているのは工場ではなく、その工場に自社の技術を載せる権利なのだろう。買収後の5年で業務用チョコレート事業の売上高は3倍を超え、取り込んだ事業の大きさは数字にも表れた。
ただ、規模を持つことは損益の振れ幅を持つことでもあった。カカオ豆の高騰と固定費の増加で収益性は落ち、買収から5年でシカゴ工場を閉じ、2025年3月期には営業損失へ転じている。ここで注意が要るのは、のれんが大きく減った期があっても、それが連結の減損ではないことだ。親会社が子会社株式を減損した分が一時償却として現れているだけで、事業そのものの価値を切り下げた判断ではない。とはいえ、原料相場に業績が振られる構図は買う前から見えていたはずで、それを承知で世界3位を取りにいったのだろう。順位を得ることと、その事業を稼げる形で持ち続けることは別の課題であり、北米の立て直しは3代の社長に引き継がれている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
買収の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 被取得企業 | BLOMMER CHOCOLATE COMPANY 他12社 | 事業の内容は業務用チョコレートの開発・製造・販売 |
| 取得の法的形式 | 米国の企業再編法制に基づく逆三角合併 | |
| 企業結合日 | 2019年1月28日 | 株式取得日。みなし取得日は2019年1月27日 |
| 取得した議決権比率 | 100% | |
| 取得原価 | 64,595百万円 | 587百万米ドル。対価の種類は現金及び預金(未払金を含む) |
| 取得関連費用 | 1,277百万円 | アドバイザー等に対する報酬・手数料等 |
| 取得のための支出 | 63,173百万円 | 株式取得代金の未払額878百万円と被取得企業の現金及び現金同等物543百万円を控除した純額 |
| 受け入れた資産 | 67,101百万円 | 内訳は流動資産48,442百万円、固定資産18,659百万円 |
| 引き受けた負債 | 45,880百万円 | 内訳は流動負債26,490百万円、固定負債19,390百万円 |
| のれん | 23,371百万円 | 15年にわたる均等償却。第92期に取得原価の配分が確定した後の金額 |
| のれん(暫定計上額) | 43,374百万円 | 第91期は識別可能資産の時価の見積りが未了で暫定的に算定した金額 |
| 取得原価の配分の見直し | △20,003百万円 | 無形固定資産へ22,832百万円、有形固定資産へ4,281百万円を配分 |
| 無形固定資産の償却期間 | 20年 | 顧客関連資産・商標権とも20年にわたる均等償却 |
| 連結に含めた業績の期間 | 貸借対照表のみ | みなし取得日と連結決算日の差が3か月以内のため第91期はBSのみ連結 |
出所:不二製油グループ本社 有価証券報告書 第91期(2019年3月期)・第92期(2020年3月期)【企業結合等関係】
不二製油:業務用チョコレート事業の業績(報告セグメント)
| (百万円) | 売上高 | セグメント利益 | 減損損失 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | − | − | − | 報告セグメントは油脂・製菓製パン素材・大豆の3区分 |
| 2015年3月期 | − | − | − | 業務用チョコレートを独立した報告セグメントとしていない |
| 2016年3月期 | − | − | − | ハラルド社を取得。区分は製菓・製パン素材のまま |
| 2017年3月期 | − | − | − | 業務用チョコレートを独立した報告セグメントとしていない |
| 2018年3月期 | − | − | − | 業務用チョコレートを独立した報告セグメントとしていない |
| 2019年3月期 | 72,100 | 7,756 | 55 | 第92期が区分変更後に組み替えた前期列。Blommerの業績は未連結 |
| 2020年3月期 | 180,068 | 8,324 | 69 | Blommerが通年で加わり売上高は2.5倍 |
| 2021年3月期 | 162,445 | 7,608 | 167 | |
| 2022年3月期 | 185,540 | 7,548 | − | 当セグメントの減損損失は該当事項なし |
| 2023年3月期 | 228,513 | 4,973 | − | 減損損失は全社で該当事項なし |
| 2024年3月期 | 253,408 | 1,840 | 3,709 | 米国の業務用チョコレート製造設備の減損3,706百万円を含む |
| 2025年3月期 | 334,696 | △15,833 | − | カカオ豆の調達価格の上昇でセグメント損失。当セグメントの減損損失は該当事項なし |
出所:不二製油グループ本社 有価証券報告書 第90期(2018年3月期)【セグメント情報等】 / 不二製油グループ本社 有価証券報告書 第92〜97期【セグメント情報等】
不二製油:のれんと無形固定資産の推移
| (百万円) | のれん | 無形固定資産合計 | 総資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | − | 1,119 | 202,206 | のれんの計上なし。無形固定資産は内訳を区分せず一括掲記 |
| 2015年3月期 | − | 1,311 | 223,625 | のれんの計上なし。ハラルド社の取得はこの期の後 |
| 2016年3月期 | 13,133 | 22,528 | 266,877 | ブラジルのハラルド社を取得し、のれんを初めて計上 |
| 2017年3月期 | 12,898 | 23,210 | 272,109 | |
| 2018年3月期 | 11,647 | 22,077 | 270,731 | 総資産は税効果基準改正の遡及修正後。第90期の原表示は272,034 |
| 2019年3月期 | 34,083 | 67,140 | 390,524 | 暫定処理の確定を反映した第92期の前期列。第91期の原表示はのれん54,086 |
| 2020年3月期 | 29,227 | 59,679 | 367,365 | のれん償却額は2,399。残る減少は円換算の影響とみられる |
| 2021年3月期 | 25,590 | 52,712 | 358,511 | のれん償却額は2,071 |
| 2022年3月期 | 27,008 | 55,697 | 416,617 | のれん償却額は2,160。円換算額が増え残高は前期より増加 |
| 2023年3月期 | 27,245 | 57,322 | 468,789 | のれん償却額は2,614。減損損失の計上はない |
| 2024年3月期 | 21,840 | 55,221 | 470,221 | 償却額9,091のうち6,467は子会社株式の減損処理に伴う一時償却 |
| 2025年3月期 | 18,602 | 51,185 | 596,564 | 償却額は2,225。Blommer分の未償却残高は12,813 |
出所:不二製油 有価証券報告書 第86〜87期(連結貸借対照表) / 不二製油グループ本社 有価証券報告書 第88〜97期(連結貸借対照表) / 不二製油グループ本社 有価証券報告書 第92〜97期【セグメント情報等】報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報
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