アマノオムロンからの駐車場設備事業の営業権譲受
1967年に始めた駐車券発行機の商売を、同業の営業権を買って国内の主力に変える
- 概要
- 2002年10月、アマノがオムロン株式会社から駐車場設備事業の営業権を譲り受けた判断。1967年の駐車券発行機「パーキングマスター」以来35年つづけてきた事業に、同業の顧客と販売網を買い足した。
- 背景
- 2002年3月期の連結売上高は630億円で、国内の主力はタイムレコーダーと集塵機であった。パーキング事業は1967年に始め、1973年にマイコン搭載の全自動料金精算機を出していたが、単独で会社を支える規模にはなかった。
- 内容
- 買ったのは工場でも会社でもなく、駐車場設備事業の営業権であった。譲受後、オムロン系の販売会社オムロンティー・エー・エスとはアマノ特約店として取引を深め、2007年4月にはその駐車場・駐輪場機器販売事業の営業権も譲り受けている。
- 含意
- パーキングシステム事業の売上高は2006年3月期に310億32百万円・全売上高の約39%となり、2026年3月期には売上構成比52.7%を占めた。祖業の時間管理機器は1.3%であった。
買ったのは顧客のいる場所であった
2002年の譲受でアマノが取得したのは、工場でも技術でもなく営業権であった。駐車場機器そのものは1967年から作っており、1973年にはマイコン搭載の全自動料金精算機まで出していたから、足りなかったのは作る力ではなく、届ける先の数であった。同じ年に武蔵電機製作所を買って国内の製造を固め、7カ月後に販売網を買っている。作る側と売る側を別々の相手から手当てした点に、この時期のアマノの割り切りがうかがえる。
相手との関係も、一度きりで終わらなかった。オムロン系の販売会社とは特約店として5年つき合い、2007年にその営業権も譲り受けている。1回目の取引が2回目の取引の前提になるという運び方は、北米でシンシナティ タイムを買ってからマクギャン&アソシエイツ、アキュタイム システムズと買い進めた順序とも重なる。2026年3月期、アマノの売上の52.7%はパーキングシステムであり、国産第1号のタイムレコーダーを作った会社の名を残す時間管理機器は1.3%であった。24年前に譲り受けた営業権が、いまの会社の姿を決めている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
パーキングマスターから35年
アマノの駐車場機器は1967年に始まっている。この年、国産第1号の駐車券発行機「パーキングマスター」の販売を開始した。公式の沿革はこれをパーキング事業のはじまりと記す。有価証券報告書の沿革は1973年4月に駐車場管理機器を発売したと記し、同じ1973年にはマイコンを積んだ全自動料金精算機を出している。時刻を打つ、時間を数える、料金を計算するという一連の技術は、タイムレコーダーと駐車場でそのまま重なっていた[1][2]。
技術の重なりは海外でも見えていた。買収前の米国シンシナティ タイムは1966年にタイムスタンプの機構を開発し、それが駐車場管理という商売の始まりとなった会社で、アマノは1991年12月にこの会社を買っている。有価証券報告書は同社を、時間管理機器およびパーキングシステムの生産・販売会社と記す。時間管理機器の会社が駐車場に出ていくという道筋は、日米で同時に起きていた[3]。
買い足しが重なった2002年
2002年3月期の連結売上高は630億円、経常利益40億円、当期純利益14億円であった。1990年代に米国で3件の買収を実行し、中国・韓国・シンガポール・インドネシアに拠点を置いたあとの数字である。海外は増えていたが、国内の主力は依然としてタイムレコーダーと集塵機であり、駐車場機器は3本目の商品群にとどまっていた[4]。
買い足しは同じ年に2件あった。2002年3月に武蔵電機製作所の株式を取得して連結子会社とし、清掃機器の国内製造を強化している。同社は2006年にアマノ武蔵電機へ商号を変えた。国内の製造と国内の販売網を、7カ月の間に別々の相手から手当てしている[5]。
決断
会社ではなく営業権を買う
2002年10月、アマノはオムロン株式会社から駐車場設備事業に関する営業権を譲り受けた。有価証券報告書の沿革と公式の沿革が、いずれも同じ月・同じ表現で記載している。買ったのは会社の株式でも工場でもなく、事業の営業権であった。製造の設備を抱え込まずに、駐車場設備を使う顧客とそこへ届く販売の経路だけを取得している[6][7]。
5年後、アマノ自身がこの取引を振り返る文章を残している。2007年4月のニュースリリースは、オムロンティー・エー・エスとの営業権譲渡契約を伝えるなかで、アマノがオムロン株式会社から2002年10月に駐車場設備事業に関する営業権を譲受しており、これ以降TAS社とはアマノ特約店として取引を深めていたと記した。2002年の譲受が、その後の取引関係の出発点であったことを当事者が書き残している[8]。
特約店から、もう一度の譲受へ
2007年2月初旬、アマノとオムロンフィールドエンジニアリングが営業権譲渡の基本合意書を結び、4月1日に子会社オムロンティー・エー・エスとの契約を取り交わした。オムロン側の事情は、親会社がサービス事業への特化の方針を打ち出したことにあり、譲渡先として取引関係の深いアマノが選ばれた。TAS社は1978年設立で、駐車場・駐輪場システムの販売と保守を含むリースを主業とし、地方自治体や区役所・市役所、民営鉄道グループ、百貨店、病院を顧客に持っていた[9]。
数字も具体的であった。TAS社の2006年3月期の駐車場・駐輪場システム販売にかかる売上高は約10億円、駐輪場では官公庁を中心に200箇所以上、駐車場でも100箇所以上の納入実績があった。アマノは2年前から駐輪場事業へ新規参入し、2007年3月期に約7億円(前年比40%増)を見込むところまで来ており、この譲受で2008年3月期には13億円へ広げる計画を示した。2002年に買った顧客基盤の上に、5年かけて次の顧客基盤を重ねている[10]。
結果
4年で全売上の約4割へ
譲受から4年後、パーキングシステム事業はアマノの最大の商品群になっていた。2006年3月期の同事業の売上高は310億32百万円で、全売上高の約39%を占めた。連結売上高は2002年3月期の630億円から2008年3月期の934億円へ、6年で約1.5倍になっている。国内の販売網を買い足したことが、この期間の伸びと重なった[11][12]。
国内で買った営業権と、海外の買収が同じ数年に重なった。2007年6月に米国テリー マクギャン&アソシエイツを買収してアマノ マクギャンへ商号を変え、2008年1月にはフランス・モロッコのホロクオルツ、ホロスマート、ピアルなどの駐車場機器メーカーを持株会社経由で買収している。国内の販売網と欧米の製造・販売会社を、2002年から2008年までの6年でひととおり揃えた[13]。
売上の半分を超えた事業
2026年3月期、パーキングシステムはアマノの売上の過半を占めた。第110期事業報告が示す事業別売上高構成比は、パーキングシステム52.7%、情報システム23.6%、環境システム14.5%、クリーンシステム7.9%、時間管理機器1.3%である。連結売上高は1,764億円、営業利益225億円、経常利益243億円、親会社株主に帰属する当期純利益201億円であった[14]。
会社の計画でも、この事業が先頭に置かれている。新しい中期経営計画は成長ドライバーの1つに「パーキングシステム:データセンターを核とした次世代製品の展開と運営受託事業の拡大」を掲げ、2029年3月期に連結売上高2,000億円という数値目標を示した。機器を売る商売から、駐車場の運営を受託する商売へ広げる方向にある[15]。
- アマノ「沿革」(公式サイト)
- アマノ 有価証券報告書(2006年3月期)【沿革】
- アマノ 有価証券報告書【沿革】
- アマノ 有価証券報告書(2002年3月期・連結)/(2008年3月期・連結)
- アマノ ニュースリリース(2007年4月2日)「アマノ オムロンティー・エー・エス(株)の『駐車場・駐輪場機器販売事業』営業権を譲受」
- Amano Cincinnati, Inc.「Our History」(公式サイト)
- アマノ 第110期事業報告 AMANO BUSINESS REPORT(2026年3月期)