スルガ銀行 シェアハウス融資問題と業務改善計画 創業家本位・営業至上主義の企業風土を根本原因に特定した業務改善計画と、創業家との資本・融資関係の解消、投資用不動産融資の縮小
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2018年10月5日、金融庁はスルガ銀行に、銀行法第26条に基づく業務の一部停止を含む業務改善命令を出した。10月12日から2019年4月12日まで、新規の投資用不動産融資と、自らの居住部分が建物全体の50%を下回る新規の住宅ローンを止めた。11月30日には業務改善計画を提出し、以後3か月ごとに進捗を報告している。
計画は問題の根本原因を創業家本位の企業風土と特定し、創業家とファミリー企業が持つ株式の売却と、ファミリー企業向け融資の全額回収を柱に据えた。
- 背景
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発端は2018年1月、シェアハウスの運営会社スマートデイズがオーナーへの賃料支払を止めたことにある。外部弁護士による危機管理委員会の調査で、不動産業者による自己資金確認資料の偽造・改ざんが多数見つかった。事実上、営業が審査より優位に立っており、2018年4月に審査部門を分割して与信の管理を立て直している。5月に第三者委員会を設け、9月7日に調査報告書を受けた。同じ9月、取締役の有國三知男氏が代表取締役社長に就いた。2018年3月期の時点で、シェアハウス関連融資等に56,736百万円の貸倒引当金を積んでいた。
- 内容
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業務停止の期間中に投資用不動産融資の全件を外部弁護士に調べさせ、7,813件の改ざん・偽造等を認定した。抱き合わせ販売の禁止違反またはその疑いは1,372物件、銀行代理業の許可制違反の疑いは222社に上る。創業家と創業家以外の役員には損害賠償請求訴訟を起こした。
2019年6月の総会で監査等委員会設置会社へ移り、10月に創業家・ファミリー企業との資本関係を、2020年2月に融資取引を解消した。シェアハウス関連債権は2020年3月から裁判所の調停勧告に沿って一括譲渡を重ねた。
- 含意
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2019年3月期の単体の与信費用は1,370億円に膨らみ、連結では971億円の純損失となった。預金は1年で9,203億円減って3兆1,596億円になり、貸出金は2024年3月期までに約1兆1,700億円縮んだ。純利益は2020年3月期に253億円へ戻ったが、その後は貸出の縮小とともに細り、2022年3月期は79億円にとどまる。投資用不動産融資は外部の評価システムと専門チームを置いて2019年5月に再開したものの、稼ぎ頭としての規模は戻っていない。
いつ何が起きたか 12件
筆者の見解
稼ぎ頭と支配者を同時に手放す
業務改善計画は、不正をした社員を処分して融資の審査を締め直すだけの計画にもなりえた。有國三知男社長が選んだのは、根本原因を創業家本位の企業風土と書き、創業家との資本と融資の関係を断ち、旧経営陣を訴える道だった。31年続いた岡野光喜氏の体制の下で伸ばした投資用不動産融資を、利益の源泉ではなく不正の温床として扱い直したことになる。預金9,203億円の流出は、その線引きが市場に遅れて届いた代償だったと思われる。
もっとも、創業家を外した後に残ったのは、稼ぎ頭を失った地方銀行だった。経常収益は2018年3月期の1,563億円から2024年3月期に914億円まで減り、貸出金は約1兆1,700億円縮んだ。関係解消で空いた株主の席に誰を迎えるかが、次の決断として残った。ノジマ、続いてクレディセゾンという事業会社を選んだ経緯は、別稿「クレディセゾンとの資本業務提携」が扱う。
Yutaka Sugiura, 2026年10月
業績の推移
貸出金と預金の期末残高
スルガ銀行:貸出金と預金の期末残高
| (百万円) | 貸出金 | 預金 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2015年3月期 | 3,010,748 | 3,952,846 | 第205期の期末残高と前期末比から逆算 |
| 2016年3月期 | 3,137,164 | 4,049,494 | |
| 2017年3月期 | 3,253,723 | 4,095,509 | |
| 2018年3月期 | 3,248,159 | 4,079,972 | 1月にシェアハウス関連融資の問題が表面化 |
| 2019年3月期 | 2,904,387 | 3,159,604 | 業務改善命令と業務改善計画の期。預金は9,203億円減 |
| 2020年3月期 | 2,502,838 | 3,204,791 | ワンルームローンの証券化と創業家融資の回収で減 |
| 2021年3月期 | 2,319,560 | 3,245,940 | |
| 2022年3月期 | 2,148,079 | 3,307,307 | |
| 2023年3月期 | 2,090,327 | 3,349,631 | |
| 2024年3月期 | 2,076,613 | 3,244,907 |
出所:スルガ銀行 有価証券報告書 第205〜213期(2016年3月期〜2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
経常収益と当期純利益
スルガ銀行:経常収益と当期純利益
| (百万円) | 経常収益 | 経常利益 | 当期純利益 | 総資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 121,292 | 46,110 | 27,607 | 4,098,552 | |
| 2015年3月期 | 131,114 | 53,405 | 32,891 | 4,284,990 | |
| 2016年3月期 | 139,430 | 56,395 | 36,717 | 4,390,146 | |
| 2017年3月期 | 145,753 | 58,222 | 42,627 | 4,471,725 | |
| 2018年3月期 | 156,278 | 10,525 | 6,988 | 4,461,576 | シェアハウス関連融資等に貸倒引当金56,736を計上 |
| 2019年3月期 | 139,635 | △74,342 | △97,146 | 3,428,327 | 単体の与信費用は137,060 |
| 2020年3月期 | 118,008 | 41,763 | 25,324 | 3,481,579 | 創業家ファミリー企業の融資回収で引当金を取り崩し |
| 2021年3月期 | 99,791 | 23,113 | 21,433 | 3,550,415 | |
| 2022年3月期 | 92,072 | 10,596 | 7,960 | 3,589,982 | |
| 2023年3月期 | 92,403 | 13,266 | 10,576 | 3,639,910 | |
| 2024年3月期 | 91,447 | 20,641 | 15,375 | 3,560,741 |
出所:スルガ銀行 有価証券報告書 第206期(2017年3月期)・第211期(2022年3月期)・第215期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- スルガ銀行 有価証券報告書 第205〜206期(2016年3月期・2017年3月期)【主要な経営指標等の推移】
- スルガ銀行 有価証券報告書 第213期(2024年3月期)【主要な経営指標等の推移】
- スルガ銀行 有価証券報告書「第207期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【重要な会計上の見積り】」
- スルガ銀行 有価証券報告書「第208期(2019年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
- スルガ銀行 中期経営計画「中期経営計画 Re:Start 2025」
- スルガ銀行 決算説明会資料「2019年度 決算説明会資料」
- スルガ銀行 有価証券報告書「第211期(2022年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【主要な経営指標等の推移】」