スルガ銀行 ゆうちょ銀行との個人ローン業務提携 自前の店舗網を全国へ広げる代わりの、ゆうちょ銀行の店頭を販売の窓口とし後方事務を共同出資会社に預ける機能分化

更新:

時期 2008年5月
当時の社長 岡野光喜
論点 静岡・神奈川の外へ個人ローンを広げる販売網
何をなぜ決めたか
概要

2008年5月12日、ゆうちょ銀行の3大都市圏の50店舗で、スルガ銀行の住宅ローン・カードローン・目的別ローンの取扱いが始まった。ゆうちょ銀行の直営店233店舗のうち50店舗にローン専門部署を置き、商品説明と営業を担わせる。スルガ銀行は住宅ローンに60名余り、フリーローンに30名余りの販売支援の人員を出し、営業チームリーダーとしてゆうちょ銀行へ派遣した。

商品はゆうちょ銀行向けに作り替えた専用品で、働く女性応援型・アクティブシニア応援型などを並べた。

背景

スルガ銀行は1989年にリテールバンキングへ舵を切り、2008年3月末の個人ローン残高は1兆7,468億円、平均レートは4.2%に達していた。個人ローンの残高は2004年3月期から毎年800億〜1,000億円ずつ積み上がっていた。一方のゆうちょ銀行は2007年10月の民営化で発足したばかりだった。提携の狙いは、全国に張り巡らされたゆうちょ銀行のネットワークとブランドに、20年以上培ってきたスルガ銀行のリテールノウハウを重ねることにあった。

内容

提携の芯は機能の切り分けにある。販売はゆうちょ銀行、商品開発と審査はスルガ銀行、後方事務は業務受託会社が受け持つ。業務受託会社には2008年4月、スルガ銀行の事務代行子会社をSDPセンターへ改称して第三者割当増資を行い、資本金20億円、ゆうちょ銀行とスルガ銀行が45%ずつを持つ形にした。

販売・業務・開発の全機能を1行で抱える従来型をやめ、機能ごとに最も実績のある相手を選ぶ形で、邦銀初のアンバンドリング型ビジネススキームと銘打った。

含意

2008年度の計画は住宅ローンの実行2,100億円、フリーローン27,000件だったが、実績は562億円、12,049件にとどまった。2009年度までの累計でも住宅ローンは1,303億円である。2010年5月には取扱店を全国82店舗へ広げ、2010年度は住宅ローン618億円、フリーローン13千件を上積みした。

2015年5月の時点では、ゆうちょ銀行の全233店舗で目的別ローンとカードローンの申込みを受けている。個人ローン残高は2014年3月期に2兆4,705億円へ伸びた。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

店を借りて、審査を手放さない

個人ローンを全国で売るなら、支店を出すか、ネットに賭けるかの二択に見えた。岡野光喜社長が選んだのは、民営化直後で融資の商品も審査の力も持たないゆうちょ銀行の店頭を借りる第三の道だった。販売を他行に預けながら、商品開発と審査を自ら握り、後方事務も45%の共同出資会社に置いたことで、店舗投資を負わずに全国の窓口を得る形を組んだと思われる。

もっとも、初年度の住宅ローン実行は計画2,100億円の約4分の1、562億円にとどまり、郵便局の窓口がそのまま住宅ローンの売り場になるわけではなかった。個人ローン残高は提携初年度の2009年3月期に1,229億円増と前年の782億円を上回ったが、続く2年は870億円、748億円の増加に戻っている。他者の窓口と自前の審査を組み合わせる発想は、のちに不動産業者を窓口とした投資用不動産融資でも繰り返されることになる。窓口を外に置いたまま審査の規律をどう保つかという問いが、ここですでに立っていたのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

業績の推移
個人ローン残高

スルガ銀行:個人ローン残高

(億円) 個人ローン残高 備考
2004年3月期 13,778
2005年3月期 14,727
2006年3月期 15,722
2007年3月期 16,686
2008年3月期 17,468
2009年3月期 18,697 提携の初年度。ゆうちょ経由の住宅ローン実行は562億円
2010年3月期 19,567 ゆうちょ経由の住宅ローン実行は2年累計で1,303億円
2011年3月期 20,315 取扱店を82店舗に拡大。ゆうちょ経由の住宅ローン618億円
2012年3月期 21,705
2013年3月期 23,273
2014年3月期 24,705
個人ローン残高
個人ローン残高(億円)

出所:スルガ銀行 2008年3月期 決算説明会資料(個人ローンの状況) / スルガ銀行 2012年3月期 決算説明会資料(個人ローンの状況) / スルガ銀行 2015年3月期 決算説明会資料(個人ローンの状況)

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参考文献

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