相次ぐ不祥事とガバナンス強化策(2019年・大和ハウス工業の決断)

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論点拡大に追いつかない統治をどう再構築するか
大和ハウス工業:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
中国子会社の不正など相次ぐ不祥事と事業本部制への移行2019年3月13日に中国の関連会社における不正行為が、4月12日に戸建住宅・賃貸住宅商品の一部における建築基準に関する不適合等が公表された。この2つの事案には第三者委員会と外部調査委員会が置かれ、11月にはグループのガバナンス強化策が策定された。

何をなぜ決めたか:中国子会社の不正など相次ぐ不祥事と事業本部制への移行

概要

2019年3月13日に中国の関連会社における不正行為が、4月12日に戸建住宅・賃貸住宅商品の一部における建築基準に関する不適合等が公表された。この2つの事案には第三者委員会と外部調査委員会が置かれ、11月にはグループのガバナンス強化策が策定された。

ところが12月には、施工管理技士の技術検定試験における実務経験の不備が新たに公表される。2020年1月に外部調査委員会が設置され、4月に調査報告書を受領して国土交通省へ報告した。

背景

第5次中期経営計画の最終年度にあたる2019年3月期の売上高は4兆1,435億円、営業利益は3,721億円で、いずれも前年を上回っていた。賃貸住宅・商業施設・事業施設を成長の軸とし、不動産開発投資を積極的に続けてきた時期である。

一方で各事業の規模とグループ会社の数が拡大する中、事業の成長に経営体制の整備が追いついていなかった。かつて売上高が1兆円を超えた頃に当時の経営陣が掲げた「攻めと守りのバランス経営」へ立ち戻ることが、強化策の出発点に置かれている。

内容

強化策は4つの基本方針からなる。第一の「経営体制及び管理・監督のあり方の再検討」では、2020年6月26日の株主総会の決議により取締役会を社内9名・社外5名の14名とし、社外取締役比率を3分の1以上へ引き上げた。あわせて代表取締役69歳、取締役・社内監査役・執行役員67歳の上限年齢を設けている。

第二の「業務執行の機動性及びリスク対応体制の強化」では、国内の業務執行体制を7つの事業本部へ再編し、関連するグループ会社を傘下に配置した。第三・第四の方針として、リスク報告基準の明確化と内部通報の外部窓口の新設、リスク・コンプライアンス教育の継続実施が置かれた。

含意

取締役会の人数は2018年3月期までの19名から14名へ絞られ、社外取締役は2名から5名へ増加した。2019年11月にはコンプライアンス推進部が立ち上げられ、本社部門と現場をつなぐ役目を担っている。事業本部制は2020年4月に導入され、本格運用は2021年4月からとされた。

それでも決着は先へ延びた。施工管理技士技術検定試験の実務不備問題については、2021年12月に22日間の営業停止という行政処分を受けている。2022年度は受注残高が前年度の期首と比べて少ない状況からの出発となった。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役16名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 樋口武男:会長
  • 石橋民生:副社長
  • 土田和人:専務執行役員
  • 山本誠:常務執行役員
  • 香曽我部武:副社長
  • 芳井敬一:社長
  • 藤谷修:専務執行役員
  • 木村一義:取締役
  • 重森豊:取締役
  • 田辺吉昭:常務執行役員
  • 大友浩嗣:常務執行役員
  • 籔ゆき子:取締役
  • 浦川竜哉:常務執行役員
  • 出倉和人:常務執行役員
  • 有吉善則:常務執行役員
  • 下西佳典:常務執行役員
考察:取締役会を5人減らした意味
考察

考察:取締役会を5人減らした意味

この強化策の芯は、不正の再発を防ぐ仕組みを足したことではなく、取締役会の構成そのものを作り替えた点にあるだろう。取締役会は19名から14名へ絞られ、社外取締役は2名から5名へ増加した。人数を減らして社外を増やすということは、内部の事情に通じた者の席を削減し、事情を知らない者に問わせる体制へ移すということである。あわせて代表取締役69歳・取締役67歳の上限年齢が置かれた。長く座り続けられる席をなくしたこの一手は、監督の形式を整えるより徹底している。

もっとも、機関設計を替えることと現場が変わることは別である。3件の不祥事はいずれも本社ではなく事業の現場で起き、なかでも施工管理技士の実務経験不備は、2021年12月の22日間の営業停止として二年後に跳ね返ってきた。国内を7つの事業本部へ割り、それぞれに業績とリスク管理とコンプライアンスの権限と責任を一貫して持たせた設計は、監督を上から足すのではなく、執行に守りを埋め込もうとしたものだろう。その狙いが効いたかどうかは、処分を受けたあとの受注をどう積み直したかにしか表れない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

数字で見る

図と表

大和ハウス工業:取締役会の構成の推移

社外取締役(名)社外以外の取締役(名)社外取締役率(%)
大和ハウス工業:取締役会の構成の推移
(名)取締役社外取締役備考
2015年3月期192
2016年3月期193
2017年3月期193
2018年3月期193
2019年3月期163不正行為と不適合等の公表の後。ガバナンス強化策の策定はこの年の11月
2020年3月期1452020年6月26日の株主総会の決議により社外取締役比率が3分の1以上となった
2021年3月期145
2022年3月期155
2023年3月期135
2024年3月期146
2025年3月期136
出所:大和ハウス工業 有価証券報告書 第76〜86期(コーポレート・ガバナンスの概要)。員数は各期の有価証券報告書提出日現在
出所:大和ハウス工業 有価証券報告書 第76〜86期(コーポレート・ガバナンスの概要)。員数は各期の有価証券報告書提出日現在

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
中国の関連会社の不正行為の公表2019年3月13日「中華人民共和国の関連会社における不正行為に関するお知らせ」として公表した
建築基準の不適合等の公表2019年4月12日戸建住宅・賃貸住宅商品の一部で建築基準に関する不適合等が判明したもの
2事案の調査体制第三者委員会と外部調査委員会根本的な原因を究明し、抜本的な再発防止策とガバナンス強化策の策定につなげた
ガバナンス強化策の策定2019年11月4つの基本方針。2021年度までをグループガバナンス再構築の一定期間と定めた
コンプライアンス推進部の新設2019年11月本社部門と現場をつなぎ、リスク事案や違反事案の発生を未然に防ぐ部署
施工管理技士の実務経験不備の公表2019年12月「施工管理技士の技術検定試験における実務経験の不備について」として公表
外部調査委員会の設置2020年1月実務経験の不備について事実関係の調査と原因分析にあたった
調査報告書の受領2020年4月外部調査委員会から受領し、国土交通省へ報告した
業務執行体制の再編国内を7つの事業本部へ2020年4月に導入。関連するグループ会社を各事業本部の傘下に配置した
取締役会の構成社内9名・社外5名2020年6月26日の株主総会の決議により、社外取締役比率が3分の1以上となった
役員の上限年齢代表取締役69歳・取締役67歳社内監査役と執行役員にも67歳の上限年齢を設定した
リスク情報の収集と共有内部通報の外部窓口を新設リスク報告基準を明確化したうえで、基本方針3として実施したもの
経営基盤への投資1,000億円第6次中期経営計画の設備投資2,500億円のうち働き方改革と技術基盤整備に充てる枠
行政処分22日間の営業停止2021年12月。施工管理技士技術検定試験の実務不備問題に対するもの
出所:大和ハウス工業 有価証券報告書 第80期(2019年3月期)・第81期(2020年3月期)・第83期(2022年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【沿革】
出所:大和ハウス工業 有価証券報告書 第80期(2019年3月期)・第81期(2020年3月期)・第83期(2022年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【沿革】
当時の取締役16名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

  • 樋口武男:会長
  • 石橋民生:副社長
  • 土田和人:専務執行役員
  • 山本誠:常務執行役員
  • 香曽我部武:副社長
  • 芳井敬一:社長
  • 藤谷修:専務執行役員
  • 木村一義:取締役
  • 重森豊:取締役
  • 田辺吉昭:常務執行役員
  • 大友浩嗣:常務執行役員
  • 籔ゆき子:取締役
  • 浦川竜哉:常務執行役員
  • 出倉和人:常務執行役員
  • 有吉善則:常務執行役員
  • 下西佳典:常務執行役員
参考文献

参考文献

参考
  • 大和ハウス工業 有価証券報告書「第80期(2019年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大和ハウス工業 有価証券報告書「第81期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大和ハウス工業 有価証券報告書「第81期(2020年3月期)【沿革】」
  • 大和ハウス工業 有価証券報告書「第83期(2022年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 大和ハウス工業 有価証券報告書「第76〜86期【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • 大和ハウス工業 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「2021年12月1日提出」

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