大阪証券取引所との統合(2011年・日本取引所グループの決断)

更新:
論点 東西の取引所を統合するか
日本取引所グループ:業績の推移
売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)
国内2大市場の経営統合による日本取引所グループの発足

何をなぜ決めたか:国内2大市場の経営統合による日本取引所グループの発足

概要

2011年11月22日に統合契約を締結し、2012年7月11日から実施した公開買付けを経て、2013年1月1日に東京証券取引所グループと大阪証券取引所が合併し、日本取引所グループ(JPX)が発足した経営統合。法的な存続会社は大阪証券取引所で、初代グループCEOには斉藤惇氏が就任した。

背景

大西洋をまたぐ取引所の国際再編が進むなか、取引所は短い間隔でのシステム更新投資を迫られる装置産業へと性格を変えていた。1878年の設立免許以来135年にわたり別々に歩んできた東京・大阪の両取引所は、日本市場の国際的な地盤沈下への危機感を統合の動機に据えた。

内容

東京証券取引所グループが公開買付けで大阪証券取引所の普通株式179,999株を86,399百万円で取得し、議決権の66.7%を押さえて子会社化した。合併比率は旧大証1に対し旧東証グループ20.19で、合併により45,906,810株の新株式を発行した。存続会社は旧大証だが、有価証券報告書は取得企業を決定するに至った根拠として東京証券取引所グループが議決権の過半数を取得して連結子会社化したことを挙げており、会計上の取得企業は東証グループである。

含意

発生したのれん49,083百万円の原因は「主としてデリバティブ市場に期待される超過収益力」と記され、20年間で均等償却された。重複システムの統合や拠点の整理により2015年度に85億円のコスト削減を目指すと掲げ、現物は東証、デリバティブは大阪という機能分担を2014年3月までに整えた。国内で競い合ってきた二極を一本化し、海外取引所と伍する規模を確保しようとする判断であった。

いつ何が起きたか 8件
考察:一本化がもたらしたもの
考察

考察:一本化がもたらしたもの

この統合の核心には、国内で競い合うことの意味が薄れていく感覚があっただろう。取引所がシステム投資を軸とする装置産業へ変わり、世界が国境を越えて統合されていくなかで、東京と大阪が別々に規模を張り合う構図は、次第に維持しにくくなっていた。設立免許から135年独立を保ってきた両取引所が、みずからの来歴を畳んで一つの持株会社へ収まった判断には、対抗の論理から規模の論理への切り替えが表れていたといえる。ただ、統合をもってしても時価総額や売買高で海外の先頭集団との差はなお大きく、一本化は競争の出発点を整えたにとどまる面もあった。

形の上では大阪が東京を吸収し、商号だけが日本取引所グループに変わった。だが有価証券報告書が取得企業を決定した根拠に挙げたのは、東京証券取引所グループが議決権の過半数を取得して連結子会社としたことであり、会計上の取得企業は東証グループである。存続会社と取得企業が逆になるこの構図は、公開買付けで買った側が買われた会社の法人格の下に入るという、統合の実際の順序をそのまま写している。連結営業収益は2013年3月期の717億円から翌期に1,138億円へ広がり、のれん490億円は20年で費用化されていった。統合後のJPXは、機能分担の完成とJPX日経400の算出開始へ歩を進めたが、規模を確保したその先で日本市場の魅力そのものをどう高めるかという問いは、統合の枠組みだけでは答えの出ないところに残されている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

日本取引所グループ:連結営業収益と当期利益の推移

営業収益(百万円)当期利益率(%)
日本取引所グループ:連結営業収益と当期利益の推移
(百万円) 営業収益当期利益 備考
2009年3月期 20,0516,372 ジャスダック証券取引所の子会社化で連結を再開した期
2010年3月期 23,0216,298
2013年3月期 71,70810,941 日本基準。旧東証グループの連結を引き継ぎ、旧大証の業績は2012年10月から反映
2014年3月期 113,84633,304 国際会計基準。日本基準では営業収益116,251百万円、当期純利益29,835百万円
2015年3月期 106,16734,427
2016年3月期 114,77644,877
2017年3月期 107,88542,124
2018年3月期 120,71150,484
出所:大阪証券取引所・日本取引所グループ 有価証券報告書 第8期・第13期・第17期(主要な経営指標等の推移)
出所:大阪証券取引所・日本取引所グループ 有価証券報告書 第8期・第13期・第17期(主要な経営指標等の推移)

統合の条件

統合の条件
科目 概要 備考
被取得企業 株式会社大阪証券取引所 取引所金融商品市場の開設と金融商品債務引受業
統合契約の締結日 2011年11月22日 合併に係る割当ては旧東証グループ株式1株に旧大証株式0.2019株で合意
企業結合を行った主な理由 現物とデリバティブの両市場の経営統合 幅広い金融商品の提供、システムコストの削減、参加者の資本効率の向上
公開買付けの開始日 2012年7月11日 買付価格・買付予定数・応募株券数の記載は有価証券報告書にない
企業結合日 2012年8月29日 連結に含めた業績の期間は2012年10月1日から2013年3月31日まで
企業結合の法的形式 公開買付による株式取得 結合後企業の名称は株式会社大阪証券取引所のまま
取得した議決権比率 66.7% 買い付けた普通株式は179,999株。株式分割後は17,999,900株にあたる
取得企業を決定した根拠 東証グループが議決権の過半数を取得 法的な存続会社は旧大証だが、会計上の取得企業は旧東証グループとされた
取得原価 86,942百万円 公開買付による株式取得額86,399百万円とアドバイザリー費用等543百万円
発生したのれん 49,083百万円 主としてデリバティブ市場に期待される超過収益力。20年間で均等償却
受け入れた資産合計 435,243百万円 流動資産401,588百万円、固定資産33,654百万円
引き受けた負債合計 378,454百万円 流動負債375,641百万円、固定負債2,812百万円
通期換算した営業収益 10,795百万円 旧大証の2012年4月から9月の損益数値。営業利益3,365百万円、当期純利益2,012百万円
合併契約の締結日 2012年10月29日 旧大証を吸収合併存続会社、旧東証グループを吸収合併消滅会社とする吸収合併
合併の効力発生日 2013年1月1日 同日付で商号を株式会社日本取引所グループへ変更し、東証一部に上場
合併に係る割当ての内容 旧大証1に対し旧東証グループ20.19 旧大証が同日付で1株を100株に分割したことを受け、合併契約で変更した
合併により発行した新株式数 45,906,810株 旧東証グループが保有していた自己株式26,260株には割当てを行っていない
掲げたコスト削減の目標 2015年度に85億円 重複システムの統合、事業拠点の整理、業務執行体制の見直しによる
出所:日本取引所グループ 有価証券報告書 第12期(2013年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【自己株式の取得等の状況】
出所:日本取引所グループ 有価証券報告書 第12期(2013年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【自己株式の取得等の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • 日本取引所グループ 有価証券報告書 第12期(2013年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【業績等の概要】
  • 日本取引所グループ 有価証券報告書 第14期(2015年3月期)【沿革】
  • 大阪証券取引所・日本取引所グループ 有価証券報告書 第8期・第13期・第17期(主要な経営指標等の推移)
  • 日本取引所グループ 有価証券報告書「第12期(2013年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【自己株式の取得等の状況】」
  • 日本取引所グループ 有価証券報告書「第12期(2013年3月期)【対処すべき課題】【業績等の概要】」
  • 日本取引所グループ 有価証券報告書「第14期(2015年3月期)【沿革】」
  • 大阪証券取引所・日本取引所グループ 有価証券報告書「第8期・第13期・第17期(主要な経営指標等の推移)」

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