日本取引所グループの直近の動向と展望

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日本取引所グループの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

ROE18%以上という単一目標の意味

2025年3月、山道裕己体制は中期経営計画2027を発表した。最終年度(2027年度)の財務目標はROE18%以上のみで、売上や利益の数値目標は設定しなかった。山道は説明会で「ROEはご存じのように分母と分子、分子は業績ですけれども、分母はエクイティの金額を調整することによって出てくる」(中期経営計画2027説明会 2025/3)と語り、市場変動による業績ブレを資本政策で吸収する枠組みを前面に押し出した。同計画は、過去のシステム障害と2024年10月発覚の元社員インサイダー取引事案を受けて、人材とシステムへのリソース確保を非財務目標として正面から組み込んだ点も異例である。市場改革を主導する側の足もとを固める姿勢を、計画の構成から読み取れる。

配当性向はこれまでの「60%程度」から「60%以上」へ引き上げられ、2025年度は80%の水準で運用される計画にある。中期経営計画2027が掲げる3年間のキャッシュアウトは1,700億円程度で、うち自己株式取得分として600億円程度を見込む。その第1弾として2025年4月に上限200億円の自己株式取得を取締役会で決議した。山道は東洋経済オンラインのインタビューで「まだ1.5合目か2合目くらいだろう。コーポレートガバナンス改革は未来永劫続けるもの」(東洋経済オンライン 2025/06/21)と語り、市場改革を長期戦として進める方針を打ち出した。資本政策と株主還元を結びつけた経営計画上の主要な数字であり、ROE目標の達成を分母調整からも支える設計になっている。

参考文献
  • 中期経営計画2027説明会 2025/3
  • 決算説明会 FY24
  • 東洋経済オンライン 2025/6/21

金利ある世界と次期デリバ売買システムへの投資負担

2025年4月発表の前期通期決算は、売上収益1,622億円(前年度比+6.1%)、営業利益901億円、当期利益610億円と2期連続の過去最高益を計上した。株式等の売買代金は5.7兆円で4年連続で過去最高水準を更新した。一方、2025年度の業績予想は売上収益1,610億円、当期利益555億円という減益見通しとなっている。米国の政策動向にまつわる不透明感と、次期デリバティブ売買システムへの投資にともなう費用計上をあらかじめ織り込んだ計画である。株式売買の好環境と過去最高益という足もとの強さに、次期システム投資の負担という先行きの重さが、取引所グループの単年度業績へ同時に映し出されている。

2024年11月、新arrowheadが稼働し、現物立会市場の取引時間延伸も同時に実施された。次期デリバティブ売買システムは当初の2026年度稼働予定から2028年度後半へ見直され、調査研究と準備費用が2025年度から計上される。政策金利0.5%という「金利ある世界」の到来を受け、IRSクリアリング・OTC国債の債務引受・預託担保の運用といった金利関連サービスが新たな収益ピースとして設計されている。取引所は株式売買手数料依存から金利・情報・データへ収益源を広げる段階に入った。フィッシング詐欺を介した不正取引の拡大も論点として浮上し、山道は株式部のリアルタイム監視と自主規制法人の特別チームによる対応を進めつつ、事前防止には証券会社側の多要素認証強化が不可欠だと説明している。

参考文献
  • 中期経営計画2027説明会 2025/3
  • 決算説明会 FY24
  • 東洋経済オンライン 2025/6/21

参考文献・出所

有価証券報告書
中期経営計画2027説明会 2025/3
日経ビジネス 2021/05/28
東洋経済オンライン 2025/06/21
決算説明会 FY24-2Q
決算説明会 FY24
中期経営計画2027説明会
東洋経済オンライン