CSG Systems Internationalを買収(2025年・NECの決断)

更新:
論点 北米の通信向けソフトを買収で得るか
NEC:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
米国の通信事業者向け課金ソフトの取得とNetcrackerとの統合

何をなぜ決めたか:米国の通信事業者向け課金ソフトの取得とNetcrackerとの統合

概要

2025年10月29日、NECが取締役会で、北米地域統括会社NEC Corporation of Americaを通じて米国のCSG Systems International, Inc.を買収することを決め、同社と合併契約を結んだ経営判断。買収対価は1株80.7米ドル、総額約29億米ドル(1米ドル153円換算で約4,417億円)で、前営業日の株価68.75米ドルに17.38%のプレミアムを乗せた。合併目的会社との逆三角合併で完全子会社とする仕組みで、資金は手元の現預金と新規の借入で賄う。

背景

NECはテレコム事業者を顧客とする事業で、主力を専用ハードウェアの基地局から高付加価値のソフトウェア・サービスへ移していた。従来型の基地局事業は収束させ、vRAN関係へ絞る。その中核が米国子会社Netcracker Technology Corporationで、世界の250社以上の顧客にBSS/OSSを軸としたDXのソリューションを提供していた。もっとも足場は欧州・アジアに厚く、北米および中南米の売上収益は2025年3月期に1,160億円と、全体の3%台にとどまっていた。

内容

CSGは1994年設立、コロラド州イングルウッドに本社を置き、米国のテレコム/ブロードバンド事業者に請求・課金などのBSSを提供してきた。2024年12月期の連結売上高は1,197,248千米ドル、営業利益は131,333千米ドル。金融・ヘルスケアなどへのカスタマーエクスペリエンスや決済のソフトも伸ばし、テレコム/ブロードバンド以外の売上は2020年の23%から2024年に30%へ増えた。米国中心のCSGと欧州・アジアに強いNetcrackerは、地域と顧客の両面で重ならない。

含意

買収は2026年5月14日に完了し、投資額は約2,797百万米ドル、取得後の議決権比率は100%となった。資金の一部として前日に1,000億円を短期で借り入れ、翌日にはNetcrackerの株式をNEC Corporation of Americaへ現物出資して、北米の2社を同じ傘の下に置いた。テレコム事業者向けのソフトウェア・サービス事業は4月に社会インフラからITサービスのセグメントへ移っている。取得資産と負債の公正価値は第188期の有報の時点で確定しておらず、のれんの額はまだ出ていない。

いつ何が起きたか 5件
当時の取締役 13名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

考察:帳簿の10倍で買った北米の顧客
考察

考察:帳簿の10倍で買った北米の顧客

CSGの連結純資産は282,569千米ドルで、買収の投資額約2,797百万米ドルはその10倍近い。NECが払ったのは工場や設備ではなく、米国の大手通信事業者の請求・課金を長年預かってきた契約と顧客基盤だったことになる。基地局のハードウェアを収束させた会社が、同じテレコムの顧客にソフトで残る道を選んだのだと思われる。北米および中南米の売上収益が2026年3月期で1,062億円にとどまる会社にとって、CSG1社の売上はその規模を一度に上回る。

もっとも、払った額の大半は、のれんと顧客関連の無形資産として貸借対照表に積み上がるはずである。2026年3月期ののれんは4,505億円で、すでに親会社所有者帰属持分の2割に達している。買収発表時に示した、5年以内にキャッシュROICでWACCを超えるという目標が届くかどうかは、Netcrackerとのクロスセルがどこまで進むかにかかっているのだろう。取得原価の配分が確定する第189期の有報が、最初の答え合わせになる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る 4表

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図と表

NEC:CSGの業績の推移

売上高(千米ドル)営業利益率(%)

CSGの2024年12月期の売上高は11億9,724万ドル、営業利益率は11.0%

NEC:CSGの業績の推移
(千米ドル) 売上高営業利益当期純利益 備考
2022年12月期 1,089,75278,74744,060 当期純利益は親会社株主に帰属する額
2023年12月期 1,169,258123,87766,246
2024年12月期 1,197,248131,33386,852
出所:NEC 臨時報告書(2025年10月31日提出、取得対象子会社の最近3年間に終了した各事業年度の売上高・営業利益・純利益)
出所:NEC 臨時報告書(2025年10月31日提出、取得対象子会社の最近3年間に終了した各事業年度の売上高・営業利益・純利益)

NEC:キャッシュ・フローの推移

営業CF(百万円)投資CF(百万円)財務CF(百万円)

2026年3月期の営業CFは4,385億円。買収額約4,417億円とほぼ同じ規模

NEC:キャッシュ・フローの推移
(百万円) 営業CF投資CF財務CF 備考
2021年3月期 274,907△122,4911,394
2022年3月期 147,517△63,377△189,616
2023年3月期 152,127△49,591△122,786
2024年3月期 271,228△76,015△155,508
2025年3月期 344,408△131,164△103,974
2026年3月期 438,46333,686△417,950 買収を決議した期。投資CFは関連会社株式の売却などで収入
出所:NEC 有価証券報告書 第184期〜第188期(連結キャッシュ・フロー計算書)
出所:NEC 有価証券報告書 第184期〜第188期(連結キャッシュ・フロー計算書)

NEC:のれんと無形資産の推移

のれん(百万円)無形資産(百万円)

2026年3月期ののれんは4,505億円で、親会社所有者帰属持分の約2割

NEC:のれんと無形資産の推移
(百万円) のれん無形資産親会社所有者帰属持分 備考
2021年3月期 300,530368,8581,308,151 無形資産はのれんを含まない純額
2022年3月期 335,978374,7031,513,503
2023年3月期 355,572378,2501,623,817
2024年3月期 392,290371,7621,915,613
2025年3月期 393,881351,9041,952,018
2026年3月期 450,501368,9452,196,578 買収を決議した期。CSGはまだ連結されていない
出所:NEC 有価証券報告書 第184期〜第188期(連結財政状態計算書、主要な経営指標等の推移)
出所:NEC 有価証券報告書 第184期〜第188期(連結財政状態計算書、主要な経営指標等の推移)

NEC:北米および中南米の売上収益の推移

北米および中南米(百万円)

北米・中南米の売上は2026年3月期に1,062億円、売上収益の3%にとどまる

NEC:北米および中南米の売上収益の推移
(百万円) 北米および中南米売上収益 備考
2021年3月期 132,4552,994,023 外部顧客の所在地で分けた売上収益
2022年3月期 121,3323,014,095
2023年3月期 160,5233,313,018
2024年3月期 145,8923,477,262
2025年3月期 116,0973,423,431
2026年3月期 106,1993,582,733 買収を決議した期
出所:NEC 有価証券報告書 第184期〜第188期(地域別情報、外部収益)
出所:NEC 有価証券報告書 第184期〜第188期(地域別情報、外部収益)
当時の取締役 13名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • NEC 臨時報告書「臨時報告書(子会社取得の決定)」
  • NEC 説明会資料「テレコム/ブロードバンド事業者向けソフトウェア企業 米国CSG Systems International, Inc.を買収」
  • NEC 有価証券報告書「第188期(2026年3月期)【経営方針】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【後発事象】」
  • NEC 有価証券報告書「第184期〜第188期(2022年3月期〜2026年3月期)」

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