NEC3委員会設置と執行役への権限委譲:監査役会設置会社をやめ、監督と執行を分けて意思決定を速めるための組み替え

更新:

時期 2023年6月
当時の社長 森田隆之
論点 監督と執行の分離と意思決定の速さ
概要

2023年6月22日の第185期定時株主総会の決議により、NECは監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移った。移行の時点で取締役は12名、うち7名が社外取締役で、指名・報酬・監査の3委員会が法定の委員会として置かれた。取締役会は取締役および執行役の職務執行の監督と、経営の基本方針に関する重要事項の審議を担う。

監督と執行を明確に分け、取締役会から執行役へ大幅な権限を委譲することで、意思決定と事業遂行の迅速化をはかる組み替えである。

背景

社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化には監督と執行の両面からのガバナンス強化が要るという認識のもと、経営の透明性と健全性の確保、スピードある意思決定と事業遂行の実現、説明責任の明確化、迅速かつ適切で公平な情報開示の四つを基本方針に掲げてきた。

移行の検討は監査役会設置会社の時代に置いていた指名委員会が担い、指名委員会等設置会社への移行を前提とした取締役会の構成の検討とキャリア・スキルマトリックスの見直し、社外取締役候補者の選定、社長のサクセッションプランの運用を審議している。移行を見据えた役員報酬制度の改定も、同じ時期に取締役会で決まった。

内容

独立性確保の観点から取締役の過半数を独立社外取締役で構成することとし、指名委員会・報酬委員会・監査委員会の委員長はいずれも独立社外取締役が務める。指名委員会は4名のうち3名が社外取締役で、委員長は社外取締役の望月晴文氏。報酬委員会も4名中3名が社外取締役で、委員長は社外取締役の岡昌志氏。監査委員会は6名のうち5名が社外取締役で、委員長は社外取締役の岡田譲治氏が務め、常勤の委員として小幡忍氏が入る。

移行後の2023年度は、指名委員会を5回、報酬委員会を4回開いた。

含意

執行側も同時に組み替えた。全社横断的なリスクマネジメント体制の強化、経営会議を中心とした執行側の会議体の再整備による意思決定の質の高度化、内部監査機能の強化が並行して進んでいる。取締役会の議題は決議事項中心から、企業価値向上のための経営の重要事項にフォーカスしたものへ変わった。

2023年度の取締役会実効性評価では、第三者評価機関による分析を踏まえ、審議・討議の充実、権限委譲を踏まえたモニタリングプロセスの再整備、取締役間および取締役と執行役間のコミュニケーション強化の3項目で大幅な改善が認められた。一方で取締役会運営の高度化、委員会機能の明確化、事務局による支援体制の強化が必要であることも確認している。

筆者の見解

速さを買うために手放したもの

指名委員会等設置会社を選ぶということは、取締役会が業務執行の決定をどこまで手放すかを法の形で確定させることにほかならない。監査等委員会設置会社なら委任の範囲は定款と取締役会の裁量に残るが、指名委員会等設置会社は執行役への委任が制度の前提で、指名と報酬の決定権も社外が委員長を務める委員会へ移る。NECが優先したのは意思決定と事業遂行の速さであり、その対価として経営陣が握っていた人事と報酬の裁量を制度的に手放したのだとみられる。

もっとも、監督の実質はまだ問われている途中である。2023年度の実効性評価は3つの重点項目に大幅な改善を認める一方で、取締役会運営の高度化と委員会機能の明確化、事務局の支援体制の強化を課題に挙げた。権限を委ねた先をどう見るかという問いは、議題を決議事項から経営の重要事項へ移し替えただけでは片づかない。執行側の会議体の再整備と内部監査機能の強化を同時に進めたのは、委譲した権限が視界から消えないようにする備えだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行前の機関設計 監査役会設置会社 2022年7月時点で取締役10名(うち社外5名)と監査役5名(うち社外3名)
移行の決議 2023年6月22日 第185期定時株主総会の決議により、同日付で移行した
移行後の機関設計 指名委員会等設置会社 移行時の取締役は12名(うち社外取締役7名)。2024年6月には13名(うち社外8名)
取締役会の構成方針 過半数を独立社外取締役 職務経歴・専門性・国際性・ジェンダー等の多様性と適正規模を考慮して構成する
3委員会の委員長 いずれも独立社外取締役 経営の透明性・客観性の向上を狙いとして定めた
指名委員会 4名(うち社外取締役3名) 委員長は社外取締役の望月晴文氏。2023年度は5回開催
報酬委員会 4名(うち社外取締役3名) 委員長は社外取締役の岡昌志氏。2023年度は4回開催
監査委員会 6名(うち社外取締役5名) 委員長は社外取締役の岡田譲治氏。常勤の委員は小幡忍氏
執行への権限委譲 取締役会から執行役への大幅な権限委譲 監督と執行を明確に分離し、意思決定と事業遂行の迅速化をはかる
執行側の組み替え 会議体の再整備と内部監査機能の強化 経営会議を中心に再整備し、全社横断的リスクマネジメント体制も強化した
取締役会の議題 決議事項中心から経営の重要事項へ 企業価値向上のための重要事項にフォーカスしたアジェンダへ変更した
移行後の実効性評価 3つの重点項目で大幅な改善 2023年度。第三者評価機関の分析結果を2024年3月の定時取締役会で議論した

出所:日本電気 有価証券報告書 第185期(2023年3月期)・第186期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】

NEC:取締役会と監査役会の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役うち社外監査役 備考
2021年11月 12653
2022年7月 10553 移行直前の体制。取締役と監査役を合わせた役員は15名
2023年6月 127 6月22日に移行。監査役会は廃止され、監査委員会が監査を担う
2023年7月 127
2023年12月 127
2024年3月 127
2024年6月 138
2025年4月 138
2025年6月 118 社外取締役が8名となり、取締役11名の過半数を占める
2026年4月 107
2026年6月 107
取締役・監査役の人数と社外取締役の比率
取締役(名)監査役(名)うち社外取締役率(%)

出所:日本電気 コーポレート・ガバナンス報告書(2021年11月30日〜2026年6月24日の各更新時点)

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出典・参考
  • 日本電気 有価証券報告書「第185期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 日本電気 有価証券報告書「第186期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 日本電気 コーポレート・ガバナンス報告書「コーポレート・ガバナンス報告書(2023年7月14日)」

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