NEC消防救急無線と電力機器の受注調整:排除措置命令と課徴金納付命令を受け、公正取引の審査と教育を組み直した対応
更新:
- 概要
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2015年5月に東京電力との、2016年2月に中部電力との電力保安通信用機器の取引について、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けた。2016年7月には東京電力との取引に独占禁止法違反行為があった旨の認定を受け、2017年2月2日に消防救急デジタル無線機器の取引で、同月15日に中部電力とのハイブリッド光通信装置および伝送路用装置の取引で、それぞれ排除措置命令および課徴金納付命令を受けている。
課徴金の額は有価証券報告書に記載がない。
- 背景
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二度の立入検査が続いた2016年3月期、NECは社会ソリューション事業のグローバル化を掲げ、セーフティ、グローバルキャリア向けネットワーク、リテール向けITサービスを注力事業と定めて成長軌道への回帰を急いでいた。従来からコンプライアンスを経営上の重要課題の一つと捉え、その徹底に努めてきたはずの足元での検査だった。
NECはこれらの事実を厳粛かつ真摯に受け止め、公正取引委員会の調査に全面的に協力した。あわせてコンプライアンスのさらなる徹底と内部統制システムの整備・運用への継続した取組みを、対処すべき課題に掲げている。
- 内容
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命令を受けた2017年3月期の決算では、経営トップからコンプライアンスに関するメッセージを繰り返し発信し、公正取引教育の内容・方法の見直しと、公正取引に関する社内審査・モニタリング制度の強化を行った。
翌2018年3月期には、従業員一人ひとりがコンプライアンスの重要性を再確認する日として「NECコンプライアンスの日」を制定し、執行役員社長とCCO、全事業部長、国内連結子会社の社長がメッセージを発信した。違反と認定された行為の内容と教訓を扱う集合教育をグループで約140回実施し、内部監査では不正会計と競争法違反に関する特別監査を加えている。
- 含意
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重点対策リスクには不正会計・競争法違反・建設業法違反が選ばれ、リスク・コンプライアンス委員会と経営会議で対策を決めて取締役会へ報告する形が取られた。内部者通報制度「コンプライアンス・ホットライン」の社内認知度は96.9%に達し、2018年3月期の利用実績は118件、翌期は121件となっている。
2019年3月期からは、スタフ部門が施策を立案して事業部門へ展開する形を改め、事業部門長が自部門のリスク特性を踏まえて施策を検討・立案・実施する体制に変えた。企業倫理フォーラムでは、公正取引委員会の調査に実際に対応した従業員が当時の状況を共有している。
教訓を制度に変える手つき
この事案でNECが選んだのは、違反の当事者を切り離して幕を引く道ではなく、調査に対応した従業員の経験そのものを社内の教材に据える道だったとみられる。企業倫理フォーラムで公正取引委員会の対応にあたった従業員が当時の状況を語り、違反と認定された行為の内容と教訓を扱う集合教育をグループで約140回重ねた。処分の重さを人事で示すのではなく、何が違反に当たるのかを現場が言葉で共有できる状態にすることに資源を割いたわけである。日付を刻んだ「NECコンプライアンスの日」は、その記憶を毎年呼び戻すための仕掛けだろう。
もっとも、教育は違反の温床そのものには届かない。受注調整が生まれるのは、発注者が限られ、仕様が個別で、価格の比較が働きにくい取引の構造にある。官公庁の消防救急デジタル無線も電力保安通信用機器も、まさにそうした市場であり、NECはそこから撤退したわけではない。2019年3月期に施策の立案を事業部門長へ移したのは、この構造を知る者に責任を持たせる組み替えだとみられる。効き目が問われるのは、次に同種の入札が並んだときである。
Yutaka Sugiura, 2026年9月
経緯と対応
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 立入検査(東京電力との取引) | 2015年5月 | 電力保安通信用機器の取引に独占禁止法違反の疑いがあるとして実施された |
| 立入検査(中部電力との取引) | 2016年2月 | 同じく電力保安通信用機器の取引についての立入検査 |
| 違反行為の認定 | 2016年7月 | 東京電力(現東京電力ホールディングス)との電力保安通信用機器の取引について |
| 排除措置命令・課徴金納付命令 | 2017年2月2日 | 消防救急デジタル無線機器の取引に係る違反として命令を受けた |
| 排除措置命令・課徴金納付命令 | 2017年2月15日 | 中部電力とのハイブリッド光通信装置および伝送路用装置の取引に係る違反 |
| 経営トップの対応 | コンプライアンスに関するメッセージの反復 | 2017年3月期。執行役員社長・CCO・全事業部長・国内子会社社長が発信した |
| 教育と審査の見直し | 公正取引教育の内容・方法の見直し | あわせて公正取引に関する社内審査・モニタリング制度を強化した |
| 記念日の制定 | NECコンプライアンスの日 | 2018年3月期に制定。従業員がコンプライアンスの重要性を再確認する日 |
| 集合教育 | 約140回 | 違反と認定された行為の内容と教訓を扱う教育をグループで実施(2018年3月期) |
| 内部監査 | 不正会計と競争法違反の特別監査 | 組織ごとの監査に加えて実施した |
| 重点対策リスクの選定 | 不正会計・競争法違反・建設業法違反 | リスク・コンプライアンス委員会と経営会議で対策を決め取締役会へ報告 |
| 内部者通報の社内認知度 | 96.9% | 2018年3月期。コンプライアンス・ホットラインの周知を継続した結果 |
| 推進体制の変更 | 事業部門長による立案・実施 | 2019年3月期から。スタフ部門が立案し事業部門へ展開する形を改めた |
出所:日本電気 有価証券報告書 第178期(2016年3月期)・第179期(2017年3月期)・第180期(2018年3月期)・第181期(2019年3月期)【対処すべき課題】【訴訟等】【内部統制システムの運用状況】
NEC:内部通報制度の利用実績
| (件) | コンプライアンス・ホットラインの利用実績 | 備考 |
|---|---|---|
| 2012年3月期 | − | |
| 2013年3月期 | − | |
| 2014年3月期 | − | |
| 2015年3月期 | − | |
| 2016年3月期 | − | |
| 2017年3月期 | − | 2017年2月に命令を受けた期。この期まで利用実績は有価証券報告書に載らない |
| 2018年3月期 | 118 | 社内認知度は96.9%。この期から利用実績の開示が始まった |
| 2019年3月期 | 121 | |
| 2020年3月期 | 90 | |
| 2021年3月期 | 76 | |
| 2022年3月期 | 62 |
出所:日本電気 有価証券報告書 第180〜184期(内部統制システムの運用状況)
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