リニア談合事件で無罪主張(2018年・鹿島建設の決断)

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論点談合容疑を認めるか法廷で争うか
鹿島建設:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
競争そのものが存在しなかったとして最高裁まで争う道の選択2018年3月23日、東海旅客鉄道が発注する中央新幹線の品川駅・名古屋駅のターミナル駅新設工事をめぐり、鹿島建設と社員1名が独占禁止法違反(不当な取引制限)で起訴された。会社は起訴内容を精査したうえで主張すべき点は公判の場で主張するとし、同時に起訴された事実を重く受け止め、役員・従業員一同でコンプライアンスの更なる徹底を図り信頼の回復に努めるとした。

何をなぜ決めたか:競争そのものが存在しなかったとして最高裁まで争う道の選択

概要

2018年3月23日、東海旅客鉄道が発注する中央新幹線の品川駅・名古屋駅のターミナル駅新設工事をめぐり、鹿島建設と社員1名が独占禁止法違反(不当な取引制限)で起訴された。会社は起訴内容を精査したうえで主張すべき点は公判の場で主張するとし、同時に起訴された事実を重く受け止め、役員・従業員一同でコンプライアンスの更なる徹底を図り信頼の回復に努めるとした。

2021年3月1日、東京地方裁判所は罰金2億5,000万円の判決を言い渡し、社員1名にも執行猶予付きの有罪判決が出た。判決には承服できないとして控訴し、2023年3月2日に控訴が棄却されると、同月14日に最高裁判所へ上告の申立てを行っている。

背景

起訴を受けた2018年3月期の連結業績は、売上高1兆8,306億円・営業利益1,583億円・親会社株主に帰属する当期純利益1,267億円で、営業利益は前期の1,553億円をさらに上回った。土木事業のセグメント利益も574億円と、前期の359億円から6割増加している。

同じ時期、連結子会社の鹿島道路も独占禁止法違反の疑いを向けられていた。全国で販売するアスファルト合材の販売価格決定に関し、2017年2月28日に公正取引委員会の立入検査を受け、2019年3月6日には排除措置命令書(案)及び課徴金納付命令書(案)に係る意見聴取通知書を受領している。

内容

一貫して掲げたのは、独占禁止法の適用の前提である「競争」が存在していなかったという主張である。本件工事は類例のない難工事であり、指名競争見積手続が開始される5年ほど前から開始の直前まで、発注者が鹿島建設以外の特定の会社にのみ技術検討などを依頼していた。この事実関係を含む主張を第一審・控訴審とも通し、無罪を主張し続けた。

争いは刑事と行政の二系統に分かれる。行政では2020年12月22日に公正取引委員会から排除措置命令を受け、2021年2月12日開催の取締役会で取消訴訟の提起を決議、同年6月21日に東京地方裁判所へ訴状を提出した。

含意

起訴は受注に表れた。提出会社単独の土木工事の当期受注高は2017年3月期の3,643億円から2018年3月期に3,032億円へ17%減少し、建築工事も9,402億円から8,453億円へ減少している。翌2019年3月期は土木が3,038億円と横ばいにとどまる一方、建築は1兆740億円へ戻した。

再発防止として挙げたのは、独占禁止法遵守マニュアルの策定・改定、弁護士によるケーススタディを用いた研修会、本社および各支店における談合防止体制の遵守状況の監査である。社長を委員長とするコンプライアンス・リスク管理委員会が企業倫理の確立と法令遵守の徹底にあたる。

いつ何が起きたか8件
当時の取締役12名

当時の取締役(2017年6月株主総会決議)

考察:争ったのは競争の有無という前提
考察

考察:争ったのは競争の有無という前提

この会社が争ったのは、談合があったかどうかではなく、そこに競争があったかどうかだっただろう。掲げた根拠は、指名競争見積手続が始まる5年ほど前から直前まで、発注者が自社以外の特定の会社にのみ技術検討を依頼していたという事実関係で、これが認められれば独占禁止法の適用の前提そのものが崩れる。刑事で二度、行政で二度退けられてなお上告を重ねたのは、量刑を軽くするための争いではなく、この前提を法廷に確かめさせるための争いだったからではないか。罰金2億5,000万円という額は、この会社の年間の利益からすれば争う理由になる規模ではない。

もっとも、争う姿勢に値札がなかったわけではない。提出会社単独の受注高は起訴の期に土木で17%、建築で10%減少し、土木の受注は翌期も戻らなかった。争う限り決着は先へ延び、その間の説明は裁判手続の中にとどまる。同じ時期に子会社の鹿島道路が58億157万円の課徴金を納めながら同じく取消訴訟へ進んでいることを合わせて見れば、命令を受けたら争うという方針はグループの方針として据えられていたのだろう。それが法解釈への確信から来るのか、処分を受け入れた当事者が負う不利益を避けるためなのかは、最高裁判所の判断が出るまで分からない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る3表

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図と表

鹿島建設:土木・建築工事の当期受注高(提出会社)

土木工事の受注高(百万円)建築工事の受注高(百万円)
鹿島建設:土木・建築工事の当期受注高(提出会社)
(百万円)土木工事の受注高建築工事の受注高備考
2013年3月期241,357754,704
2014年3月期369,237841,830
2015年3月期339,908742,538
2016年3月期285,967902,092
2017年3月期364,311940,273
2018年3月期303,221845,3563月23日に起訴。土木の受注高は前期比17%減、建築も10%減で着地した
2019年3月期303,8401,074,060土木は横ばい。建築は1兆740億円へ戻した
2020年3月期327,620794,967
2021年3月期338,088867,2912020年12月に排除措置命令、2021年3月に第一審の有罪判決
2022年3月期268,559882,275
2023年3月期386,4911,102,8572023年3月に控訴審判決を受け最高裁判所へ上告
出所:鹿島建設 有価証券報告書 第116〜126期〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況
出所:鹿島建設 有価証券報告書 第116〜126期〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況

鹿島建設:土木事業の売上高とセグメント利益(連結)

土木事業の売上高(百万円)土木事業のセグメント利益率(%)
鹿島建設:土木事業の売上高とセグメント利益(連結)
(百万円)土木事業の売上高土木事業のセグメント利益備考
2013年3月期269,492△8,143
2014年3月期298,80635,044
2015年3月期276,430△15,591
2016年3月期307,96428,846
2017年3月期296,85735,994
2018年3月期366,58857,404セグメント利益は574億円。起訴は当期の業績に表れていない
2019年3月期301,06335,235
2020年3月期288,09817,195セグメント利益は172億円まで減少した
2021年3月期334,79129,858
2022年3月期271,83919,683
2023年3月期301,62229,302
出所:鹿島建設 有価証券報告書 第116〜126期【セグメント情報等】(連結・報告セグメント)
出所:鹿島建設 有価証券報告書 第116〜126期【セグメント情報等】(連結・報告セグメント)

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
対象の工事中央新幹線ターミナル駅新設工事東海旅客鉄道が発注する品川駅及び名古屋駅の地下開削工法による工事
容疑独占禁止法違反(不当な取引制限)法人としての鹿島建設と、当社社員1名の双方が対象になった
起訴2018年3月23日起訴内容を精査したうえで、主張すべき点は公判の場で主張するとした
会社の立場独占禁止法違反には該当しない適用の前提である「競争」が存在していない状況にあったことを主たる理由とする
主張の根拠発注者が特定の会社にのみ依頼指名競争見積手続の開始5年ほど前から開始直前まで技術検討などを依頼していた
第一審判決2021年3月1日 罰金2億5,000万円東京地方裁判所。当社社員1名にも執行猶予付きの有罪判決
控訴2021年3月10日東京高等裁判所。判決には承服できないとした
控訴審判決2023年3月2日 控訴棄却東京高等裁判所。同月14日に最高裁判所へ上告の申立てを行った
行政処分2020年12月22日 排除措置命令公正取引委員会。命令における違反認定も受け容れられないとした
取消訴訟の提起2021年6月21日東京地方裁判所。同年2月12日開催の取締役会で提起を決議した
取消訴訟の第一審2024年6月27日 請求棄却東京地方裁判所
取消訴訟の控訴審2025年5月15日 控訴棄却東京高等裁判所。同月26日に最高裁判所へ上告及び上告受理の申立て
子会社への行政処分2019年7月30日 排除措置命令鹿島道路。全国で販売するアスファルト合材の販売価格決定に関するもの
子会社への課徴金58億157万円2020年2月28日に納付。同社は2020年1月28日に各命令の取消訴訟を提起した
再発防止の体制独占禁止法遵守マニュアル策定・改定に加え、弁護士によるケーススタディを用いた研修会を開く
遵守状況の監査本社及び各支店で実施談合防止体制の遵守状況を対象とし、本社法務部が所管する
コンプライアンス体制コンプライアンス・リスク管理委員会社長を委員長とし、企業倫理の確立及び法令遵守の徹底を図る
出所:鹿島建設 有価証券報告書 第121期(2018年3月期)〜第129期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【偶発債務】
出所:鹿島建設 有価証券報告書 第121期(2018年3月期)〜第129期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【偶発債務】
当時の取締役12名

当時の取締役(2017年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第121期(2018年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第122期(2019年3月期)【偶発債務】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第123期(2020年3月期)【偶発債務】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第124期(2021年3月期)【偶発債務】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第127期(2024年3月期)【偶発債務】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第129期(2026年3月期)【偶発債務】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第123期(2020年3月期)【事業等のリスク】」
  • 鹿島建設 有価証券報告書「第121〜126期〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況【セグメント情報等】」

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