鹿島建設の直近の動向と展望

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鹿島建設の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

営業利益が3年で12倍になった構造的要因

2011年の東日本大震災以降、復興需要と東京五輪関連投資で建設需要が回復したのに対し、技能労働者の高齢化と若年層の建設業離れが深刻な供給制約を生み、需給ギャップが拡大した。よって需要が供給を上回る構造が定着し、ゼネコン各社は採算の悪い案件を断る「選別受注」が可能になり、資材価格の上昇分を発注者に転嫁する価格交渉力も手にした。鹿島の営業利益はFY14の127億円からFY15に1,111億円、FY16に1,554億円へと3年で急伸した。売上高は1兆7,427億円から1兆8,218億円への微増にすぎず、利益率が0.75%から8.5%へ構造的に改善した。すなわち、過当競争の終焉と労働力の構造不足という市場環境の変化が、長年続いた低収益構造を数年で反転させた点に、収益回復の本質があった。

この収益構造の転換は、景気循環ではなく労働力の構造的不足に支えられている点で、バブル期の一時的な好況とは質が異なった。2024年4月施行の時間外労働上限規制は供給制約をさらに強め、鹿島を含むゼネコン各社の価格交渉力を後押ししている。FY24の連結売上高は2兆9,118億円、営業利益は1,519億円に到達し、過去の低収益期との差は明白となった。その理由は、売上高がFY07比1.5倍に対し営業利益が84倍へ拡大したように、量ではなく質の改善が2015〜2024年の利益成長を支えた点にある。2015年以降は、鹿島にとって「受注世界一」の看板と実際の収益力がようやく一致した時期であり、20年に及ぶ低収益期の清算を意味する構造転換だった。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY24(2025/5)
  • 決算説明会 FY25-2Q(2025/11)
  • 決算説明会 FY25-3Q(2026/2)
  • 経済界ウェブ 2021/9
  • 時事ドットコム 2026/3
  • KAJIMAダイジェスト 2015/7

開発事業1兆2,000億円 ── 建設の外に利益源を持つ

2015年に就任した押味至一社長は「施工現場が当社にとって最重要部署であり主役」(KAJIMAダイジェスト 2015/7)と現場第一主義を掲げる一方、中期経営計画(2018〜2020)で開発事業を中心に3年間5,000億円の投資計画を示した。建設請負だけに依存しない収益構造への転換が狙いで、請負業の景気変動リスクを開発事業の資産収益で緩和するポートフォリオ経営が目標となった。米国では子会社Core5を通じて流通倉庫の開発・売却を短期回転型で手がけ、年間15件程度の売却でキャッシュを回収しながら再投資する仕組みを組み上げた。欧州では太陽光発電施設を中心に18件・発電総量1,300MWの再エネ開発を手がけ、開発・売却型の事業モデルで収益を上げている。2025年2月時点で国内外合算の開発事業資産残高は約1兆2,000億円に達した。

2024年7月には米国建設会社ロジャーズ・ビルダーズ(年間売上高約800億円)を買収し、海外建設事業のポートフォリオも拡充した。海外建設と海外開発の両面を同時に手がけるのは、請負とストックの二つの収益源を海外でも確保する狙いに沿った布石である。中期経営計画(2024〜2026)では2026年度当期純利益1,300億円以上を目標に掲げ、3年間の株主還元は当初2,000億円から2,300億円に引き上げて株主価値の向上を加速させている。国内建設の利益率向上と海外開発事業の利益拡大の双方で、連結当期純利益1,500億円の早期達成を目指す方針が示されており、開発事業資産の積み増しと財務規律の維持を同時に追う方針が貫かれている。過去の低収益構造からの脱却は、新しい収益モデルとして定着した。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY24(2025/5)
  • 決算説明会 FY25-2Q(2025/11)
  • 決算説明会 FY25-3Q(2026/2)
  • 経済界ウェブ 2021/9
  • 時事ドットコム 2026/3
  • KAJIMAダイジェスト 2015/7

社長急逝と現場重視の継承

2021年に就任した天野裕正社長はDX・自動化施工・脱炭素を経営の柱に据え、技術蓄積を次世代の競争力に転換する方針を示した。成瀬ダムでは自動化施工技術「クワッド・アクセル」により遠隔操作での配置人員削減と24時間施工を実現し、「現在保有している有効な特許の数は建設会社の中で一番です」(経済界ウェブ 2021/9)と語った。半導体・医薬品関連の生産施設やデータセンターの建設需要を成長ドライバーに位置づけ、再開発・原子力関連など多様な分野で案件を獲得した。単体建築の売上総利益率は10%を超え、12〜13%も視野に入る水準まで改善が進んだ。その結果、過当競争時代には考えられなかった利益率水準が、現場発のDXと選別受注によって現実のものとなりつつあった。

しかし2026年1月に天野が急逝し、前任の押味至一が暫定的に社長に再任するという異例の事態となり、現場重視の経営姿勢の継承が急務となった。同年6月には現場35年のキャリアを持つ桐生雅文が社長に就任予定で、「受け継いだ技術を次世代に伝承することは経営の軸の一つだ」(時事ドットコム 2026/3)と述べ、技術伝承を経営の中心に据える方針を示している。天野が進めた技術革新と押味が整えた開発事業の投資路線は新体制でも継承される見通しで、土木の売上総利益率は16%以上の維持を目指す方針が示されている。186年の歴史を持つ鹿島建設は、技術と現場を軸にした経営哲学を世代交代のなかで継承しつつ、請負と開発の両輪による収益構造のもとで次の成長段階へ向かおうとしている。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY24(2025/5)
  • 決算説明会 FY25-2Q(2025/11)
  • 決算説明会 FY25-3Q(2026/2)
  • 経済界ウェブ 2021/9
  • 時事ドットコム 2026/3
  • KAJIMAダイジェスト 2015/7

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11/1
決算説明会 FY24(2025/5)
決算説明会 FY25-2Q(2025/11)
決算説明会 FY25-3Q(2026/2)
経済界ウェブ 2021/9
時事ドットコム 2026/3
KAJIMAダイジェスト 2015/7
経済界ウェブ
時事ドットコム
KAJIMAダイジェスト