制服販売業務の独占禁止法違反(2018年・伊藤忠商事の決断)

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論点制服販売の法令遵守をどう立て直すか
伊藤忠商事:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
4件の排除措置命令と、調査が始まる前に自ら取り止めた違反行為2018年1月と2月、西日本旅客鉄道と東日本電信電話向け制服の販売業務について、独占禁止法に違反する行為があったとして、公正取引委員会から独占禁止法第7条第2項に基づく排除措置命令を受けた。続く7月には全日本空輸向け制服の販売業務で同じ命令を受け、10月にはNTTドコモ向け制服の供給業務について排除措置命令と課徴金納付命令を受けている。納付すべき課徴金の額は429万円だった。

何をなぜ決めたか:4件の排除措置命令と、調査が始まる前に自ら取り止めた違反行為

概要

2018年1月と2月、西日本旅客鉄道と東日本電信電話向け制服の販売業務について、独占禁止法に違反する行為があったとして、公正取引委員会から独占禁止法第7条第2項に基づく排除措置命令を受けた。続く7月には全日本空輸向け制服の販売業務で同じ命令を受け、10月にはNTTドコモ向け制服の供給業務について排除措置命令と課徴金納付命令を受けている。納付すべき課徴金の額は429万円だった。

4件はいずれも2016年度以前に行っていた制服販売業務に関する一連の事案で、別々の違反ではなく同じ業務から出た同じ問題として扱われている。

背景

制服の販売は繊維部門が長く手がけてきた業務で、鉄道・通信・航空といった大口の発注者に対し、納入業者が固定されやすい性質を持つ。4件の相手先はいずれも全国規模の事業者であり、入札や見積り合わせの機会も限られる。

2016年度までに行われた行為が2018年に相次いで処分の対象となった形で、最初の2件の命令を受けた時点では、まだ後の2件の命令は出ていない。

内容

命令を受けて策定したのは、独占禁止法等遵守に係る社内ルールの整備、違反行為の自主申告の促進、独占禁止法遵守教育の強化・充実を含む再発防止策である。会社はこれを既に策定・実行しており、十分かつ効果的な独占禁止法遵守の体制を整備したとする立場をとった。

4件はいずれも、この再発防止策の策定と実行の過程で、公正取引委員会の調査が始まる前に自ら違反行為を取り止めたものだった。最初の処分が次の自主的な取止めを呼び、それがまた処分につながるという順序になっている。

含意

課徴金429万円は、2019年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益5,005億円に照らせば財務的な意味を持たない。処分の重みは金額ではなく、社外役員が取締役会で果たした役割の記述に表れている。村木厚子取締役・望月晴文取締役・川名正敏取締役は平素から法令遵守の重要性を発言しており、本件の判明後は再発防止策の策定について積極的な提言を行ったと記録された。

再発防止の対象は伊藤忠商事単体にとどまらず、グループ会社における独占禁止法遵守を含むコンプライアンスの徹底まで広げられている。

いつ何が起きたか7件
考察:429万円という処分の軽さ
考察

考察:429万円という処分の軽さ

課徴金429万円は、総合商社の規模からすればないに等しい。それでも4件の命令が1年のうちに続いたことには別の意味がある。同じ制服販売業務から4つの発注者ごとに違反が切り出され、最初の2件が処分された後も、残りの2件は処分を待たずに自ら取り止められていた。会社の記述に従えば、再発防止策の実行が進むなかで違反が次々に自己申告の対象となり、その結果として命令が積み上がったことになる。処分の件数が増加することは、必ずしも統制の悪化を意味しない。

もっとも、2016年度以前という時期の書き方は、いつから続いていた行為なのかを明かしていない。制服の販売は繊維の祖業に近い商いで、相手も鉄道・通信・航空という固定客である。エタノール取引の不適切会計と同じく、長く同じ相手と同じ商いを続ける現場でこそ、外からは見えにくい慣行が残るのだろう。社外役員の提言が再発防止策の策定に及んだと記されたことは、取締役会がこの事案を現場の問題として片づけなかった証しなのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
対象となった業務制服の販売業務および供給業務2016年度以前に行っていた一連の業務。4件はいずれも同じ業務から出ている
命令の根拠独占禁止法第7条第2項公正取引委員会による排除措置命令。NTTドコモ向けのみ課徴金納付命令を伴う
西日本旅客鉄道向け2018年1月排除措置命令。最初に処分の対象となった案件
東日本電信電話向け2018年2月排除措置命令。ここまでの2件が第94期の有価証券報告書に載る
全日本空輸向け2018年7月排除措置命令。販売業務に関する違反行為として認定された
NTTドコモ向け2018年10月排除措置命令および課徴金納付命令。こちらは供給業務に関する違反行為
課徴金429万円NTTドコモ向けの案件に対するもの。他の3件に課徴金納付命令はない
違反行為の取止め公正取引委員会の調査開始前4件とも、再発防止策の策定および実行の過程で自ら取り止めたとされる
再発防止策社内ルールの整備・自主申告の促進・遵守教育独占禁止法等遵守に係る3本柱。策定・実行済みで体制は整備したとの立場をとる
対象範囲グループ会社を含む伊藤忠商事単体にとどまらず、グループのコンプライアンス徹底まで広げた
社外取締役の関与再発防止策の策定への提言村木厚子取締役・望月晴文取締役・川名正敏取締役が積極的な提言を行った
社外監査役の関与法令遵守の更なる徹底の提言第94期では各社外監査役が取締役会で同趣旨の発言を行ったと記録される
取締役会での位置づけ2018年度の主な検討事項経営計画・役員報酬・コーポレートガバナンスと並ぶ検討事項に挙げられた
出所:伊藤忠商事 有価証券報告書 第94期(2018年3月期)・第95期(2019年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
出所:伊藤忠商事 有価証券報告書 第94期(2018年3月期)・第95期(2019年3月期)【対処すべき課題】【コーポレート・ガバナンスの状況等】
参考文献

参考文献

参考
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第94期(2018年3月期)【対処すべき課題】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【対処すべき課題】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第94期(2018年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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