伊藤忠商事ユニー・ファミリーマート公開買付:持分法から連結へ移し、総合スーパーを外してコンビニだけを残した再編

更新:

時期 2018年4月
当時の社長 岡藤正広
論点 持分法適用会社にとどめるか、連結して一体で動かすか
概要

2018年4月19日の取締役会は、関連会社として持分法を適用していたユニー・ファミリーマートホールディングスを子会社とすることを目的に、公開買付を実施することを決めた。子会社の伊藤忠リテールインベストメント合同会社を通じて7月17日から買付を行い、8月16日の終了時点で当初予定どおりの株式を取得している。

この日に取得した議決権は8.6%で、既保有分と合わせた議決権は50.29%となった。株式の取得価額は119,684百万円で、すべて現金により支払われている。

背景

ユニー・ファミリーマートホールディングスは、ファミリーマートを主力としたコンビニエンスストア事業とその周辺事業を展開する会社で、伊藤忠グループで最大の顧客接点を持っていた。総合スーパーのユニーも傘下にあり、2017年8月にはドンキホーテホールディングスと資本・業務提携を締結している。

子会社化の理由に挙げたのは、小売業界の競争激化が進むなかで連携を一層強固にし、マーケティングの高度化、サプライチェーンの次世代化、店舗運営の効率化を実現して、その経験と知見を他のビジネスにも広く応用することだった。

内容

支払対価119,684百万円に既保有持分の公正価値494,699百万円と非支配持分401,579百万円を加えた1,015,962百万円に対し、取得した純資産は754,512百万円で、差額261,450百万円がのれんとして食料セグメントに計上された。受け入れた無形資産は493,752百万円にのぼる。既保有持分を公正価値へ測り直したことで167,900百万円の利益が有価証券損益に立ち、これに対する法人所得税費用26,697百万円も計上された。

同じ8月16日、ユニー・ファミリーマート経由の34%と自社保有の46%を合わせてポケットカードも議決権80%の子会社となっている。

含意

子会社化の5か月後にあたる2019年1月4日、ユニーファミリーマートは保有するユニーの全株式を譲渡した。総合スーパーが外れ、コンビニエンスストアだけがグループに残る形になっている。2019年9月1日には同社がファミリーマートを吸収合併して商号を株式会社ファミリーマートへ改め、持株会社の階層も消えた。

取得日から2019年3月期末までの収益は520,543百万円、当期純利益12,485百万円で、うち伊藤忠商事の株主に帰属する分は4,333百万円である。のれんは連結全体で129,283百万円から391,560百万円へ、総資産は8兆6,639億円から10兆987億円へ膨らんだ。

筆者の見解

買ったのは8.6%

この取引で追加した議決権はわずか8.6%、支払った現金は1,196億円にすぎない。それでも連結の姿は一変した。既に保有していた持分を公正価値で測り直した1,679億円の利益が立ち、のれんは2,614億円、無形資産は4,937億円が新たに積まれ、総資産は1兆4,000億円近く増えている。持分法から連結へ移るという会計上の一線を越えるために必要だったのは、ごくわずかな議決権の上積みだけだった。支配とは何かを、これほど端的に示す数字も少ない。

もっとも、連結に取り込んだ中身は翌年から急速に整理されていく。2019年1月に総合スーパーのユニーが手放され、9月には持株会社そのものがファミリーマートへ吸収されて商号も消えた。買ったのはコンビニエンスストアであって、ユニーファミリーマートという器ではなかったということなのだろう。2020年の完全子会社化まで含めれば、8.6%の追加取得は一連の作業の入口にすぎず、残る49.7%をどう処理するかという問いを同時に呼び込んでもいた。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 ユニー・ファミリーマートホールディングス ファミリーマートを主力としたコンビニエンスストア事業とその周辺事業を展開
公開買付の決議 2018年4月19日 取締役会。子会社とすることを目的とした公開買付の実施を決めた
公開買付者 伊藤忠リテールインベストメント合同会社 伊藤忠商事の子会社。買付はこの会社を通じて実施された
公開買付期間 2018年7月17日〜8月16日 終了時点で当初予定どおりの数の株式を取得した
取得日 2018年8月16日 同日付で子会社となった。第2四半期連結会計期間からの連結
取得した議決権比率 8.6% 既保有持分と合わせ、グループの議決権は50.29%となった
株式の取得価額 119,684百万円 すべて現金により支払われた。条件付対価はない
既保有持分の公正価値 494,699百万円 公開買付価額に含まれるコントロールプレミアムと市場価格を考慮して算出
非支配持分 401,579百万円 取得日の識別可能な純資産に、取得日時点の非支配持分比率を乗じて測定
取得原価の合計 1,015,962百万円 支払対価・既保有持分・非支配持分の合計
取得した純資産 754,512百万円 無形資産493,752百万円、有形固定資産374,692百万円などを受け入れた
のれん 261,450百万円 補完関係を活かした事業展開で期待される超過収益力。税務上は損金算入不能
のれんの帰属 食料セグメント 第8カンパニーの新設は2019年7月1日で、この時点では食料に含まれる
再評価益 167,900百万円 既保有持分の公正価値への再測定に伴い有価証券損益へ計上した
再評価益に対する税 26,697百万円 法人所得税費用として計上された
取得関連費用 335百万円 販売費及び一般管理費に計上した
取得日からの収益 520,543百万円 当期純利益12,485百万円、うち親会社の株主に帰属する分は4,333百万円
同時に子会社化した会社 ポケットカード(議決権80%) 対象会社保有の34%と自社保有の46%の合計。再評価益1,006百万円を計上
ユニーの譲渡 2019年1月4日 対象会社が保有していたユニーの全株式を譲渡した
吸収合併と商号変更 2019年9月1日 対象会社がファミリーマートを吸収合併し、株式会社ファミリーマートへ改称

出所:伊藤忠商事 有価証券報告書 第94期(2018年3月期)【関係会社の状況】・第95期(2019年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】

伊藤忠商事:のれんと無形資産の推移

(百万円) のれん無形資産総資産 備考
2014年3月期 194,934245,3127,784,851
2015年3月期 198,205290,7368,560,701
2016年3月期 144,056261,8068,036,395
2017年3月期 131,662237,7168,122,032
2018年3月期 129,283233,2888,663,937
2019年3月期 391,560736,20010,098,703 子会社化でのれん261,450と無形資産493,752が加わり、総資産は1兆4,000億円増
2020年3月期 403,940759,16710,919,598
2021年3月期 396,869728,96711,178,432 完全子会社化は資本取引のため、のれんは新たに発生していない
2022年3月期 368,989712,61812,153,658 ファミリーマートで台湾FMが子会社から関連会社へ移った
2023年3月期 366,659712,59413,115,400 総資産は第99期では13,111,652百万円。第100期の比較情報で遡及修正された
2024年3月期 383,878744,42814,489,701
のれんと無形資産
のれん(百万円)無形資産(百万円)

出所:伊藤忠商事 有価証券報告書 第90期〜第100期(連結財政状態計算書、注記 のれん及び無形資産)

同じ問いに直面した会社

持株会社方式による経営統合2016年めぶきフィナンシャルグループ株式交換の形をとった統合と、めぶきフィナンシャルグループへの商号変更地銀再編と広域連合の設計
2016年ファミリーマートサークルK・サンクスの自社ブランドへの一本化と店舗網の統合規模拡大とブランド統一
2014年マクニカホールディングス共同株式移転という対等な形での二社の統合と、新体制への移行国内半導体商社の再編と顧客層の補完
2014年KADOKAWA共同株式移転による持株会社の設立と対等統合の選択後継体制とデジタルシフト
2023年レゾナックHDレゾナックへの社名変更を伴う二社の一体化と経営基盤の再構築
出典・参考
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【企業結合等関係】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【関係会社の状況】【従業員の状況】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第94期(2018年3月期)【関係会社の状況】【経営成績等の状況】」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【沿革】」
  • 伊藤忠商事 統合報告書「統合レポート2020(2019年度・2020年3月期)」
  • 伊藤忠商事 有価証券報告書「第90期〜第100期(連結財政状態計算書)」

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