売上高で5倍以上の差がある相手と共同株式移転を組んだところに、この統合の性格が出ていると推察される。マクニカが富士エレクトロニクスを買えば話は早いが、買われた側の営業組織は買収先の一部門になり、中堅・中小顧客との関係を支えてきた担当者の立ち位置も変わる。この統合で欲しかったのは工場でも技術でもなく、相手が数十年かけて作った顧客名簿と、その名簿を持つ人であった。人が動いてしまえば取りに行った価値は消える。持株会社という横並びの形は、その消失を避けるための時間の買い方であったといえる。
ただし横並びのまま置けば、統合の効き目は仕入交渉力までで止まる。事業会社を1社にまとめる作業は2020年10月まで持ち越され、持株会社の商号から富士エレの名が消えるのは2022年8月であった。合意から数えて8年をかけて、二つの会社は一つの名前になっている。統合の是非は初年度の決算ではなく、この8年をかけた手順の全体で測るしかない。2014年3月期に2,559億円だったマクニカの売上高は2023年3月期に連結で1兆293億円へ達し、国内の半導体商社で1兆円を超えたのはこの1社だけである。