伊藤忠商事 CITICへの出資提携 CPグループと折半出資の合弁を挟み、中国最大のコングロマリットへ実質10%で入った
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2015年1月20日の取締役会で、伊藤忠商事は中国最大のコングロマリットであるCITIC Limited、アジア有数の大手コングロマリットであるCharoen Pokphand Group(CPG)との3社間で、それぞれの企業価値向上を目的とした戦略的業務・資本提携を行うことを決議し、同日に契約を締結した。
これに伴い、伊藤忠とCPGが50%ずつ出資するChia Tai Bright Investment Company Limited(CTB)が、CITIC Limitedの普通株式と普通株式に転換可能な優先株式を総額803億香港ドル(約1兆2,040億円)で取得する枠組みが組まれた。
- 背景
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先に固まっていたのはCPGとの関係である。2014年7月24日の取締役会で業務提携契約を締結し、CPGの完全子会社とCPG・日本政策投資銀行が実質的に折半出資する投資事業組合に対する第三者割当で、合計約4.9%の出資を受け入れた。払込みは同年9月18日で、これに対応して7,800万株・1,007億円の自己株式を取得している。
同時に伊藤忠は、CPGの中核企業Charoen Pokphand Foodsの子会社で中国・ベトナムで飼料・畜産・水産を営むC.P. Pokphandの株式25.0%(取込比率23.8%)を取得した。中国では1972年11月に伊藤忠(中国)集団有限公司を設立している。
- 内容
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持分は三層に重なる。伊藤忠は議決権比率100%の子会社Orchid Alliance Holdings Limitedを置き、その先にCPGと折半出資するCTBがあり、CTBがCITIC Limitedの総議決権数の20%を保有する。伊藤忠から見た実質持分は10%で、CITIC LimitedはCTBの持分法適用会社となった。
取得は2回に分かれた。2015年4月30日にCITIC Polaris Limitedから普通株式約2,490百万株(総議決権数の10%相当)を344億香港ドルで取得し、同年8月に約13.4%相当の優先株式の引受と普通株式への転換を当初予定より前倒しで実行して20%に届いた。
- 含意
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取込損益は2017年3月期629億円、2018年3月期679億円と積み上がったが、2019年3月期は米中貿易摩擦を背景に持分法投資の回収可能価額が簿価を下回り、145,677百万円の減損損失を計上した。株主に帰属する当期純利益への影響は税効果を含めて1,433億円で、その期の取込損益は850億円の損失に転じている。2020年3月期には664億円へ戻った。20%を持つということは、相手の振れをそのまま引き受けるということでもある。
いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
20%を持つ、という距離の取り方
この提携の要は金額ではなく、持分の置き方にあったと推察される。伊藤忠は単独で出るのではなく、CPGと折半の合弁を挟み、さらにその手前に自社100%の保有会社を設立した。CITIC Limitedに対する持分は形のうえでは20%だが、伊藤忠から見れば実質10%である。国営企業の系譜を引く相手に対して、連結もしなければ経営を握りにも行かず、持分法で損益だけを取り込む。中国の内需を取りにいきながら、相手の経営には踏み込まない距離を、二重の器で作ったのだろう。
もっとも、距離を取っても損益は結びついたままである。2019年3月期には回収可能価額が簿価を下回り、株主に帰属する当期純利益への影響は1,433億円に達した。取込損益は679億円の利益から850億円の損失へ一気に振れ、翌々期には664億円へ戻る。20%の持分とは、相手の成長を分け合う権利であると同時に、相手の不調を毎期引き受ける契約でもある。振れを飲み込めるだけの本業の厚みを持てるかどうかが、この種の提携の成否を決めるのではないか。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
提携と出資の条件
提携と出資の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 決議と契約の締結 | 2015年1月20日 | 取締役会で3社間の戦略的業務・資本提携を決議し、同日に契約を締結した |
| 提携の当事者 | 伊藤忠商事・CITIC Limited・CPGの3社 | 伊藤忠グループ、CITICグループ、CPグループそれぞれの企業価値向上を目的とする |
| 共同保有ビークル | CTB | Chia Tai Bright Investment Company Limited。伊藤忠とCPGが50%ずつ出資する |
| 伊藤忠側の保有会社 | Orchid Alliance Holdings Limited | 議決権比率100%の子会社。主要な事業内容はCITIC Limited保有会社への投融資 |
| CTBのCITIC Limited出資比率 | 20% | 総議決権数ベース。優先株式の普通株式転換後 |
| 伊藤忠から見た間接持分 | 10% | CTBが持つ20%のうち、伊藤忠のCTB出資割合50%に対応する分 |
| 取得の総額 | 803億香港ドル | 約1兆2,040億円。CTBによる普通株式及び転換可能優先株式の取得額 |
| 第1回の取得 | 2015年4月30日 | CITIC Polaris Limitedから普通株式約2,490百万株を344億香港ドルで取得 |
| 第2回の取得 | 2015年8月 | 総議決権数の約13.4%相当の優先株式を引き受け、普通株式へ転換した |
| 伊藤忠の投融資実行額 | 約6,000億円 | 2016年3月期のCITIC Limited株式取得に係る投融資実行額 |
| 会計上の取扱い | CTBの持分法適用会社 | CITIC Limitedを持分法で会計処理する。決算期は12月で3か月の差異がある |
| 取込比率 | 100% | Orchid Alliance Holdings Limitedの取込比率。取込損益は税効果等を含む |
| 取得額と純資産持分の差額 | 11,127百万香港ドル | 2018年3月期末の貸方残高。公正価値に基づき資産及び負債へ配分している |
出所:伊藤忠商事 有価証券報告書 第91期(2015年3月期)【経営上の重要な契約等】・第92期(2016年3月期)・第94期(2018年3月期)【関連会社及びジョイント・ベンチャー】
CITIC出資会社の取込損益と連結の持分法による投資損益
伊藤忠商事:CITIC出資会社の取込損益と連結の持分法による投資損益
| (億円) | CITIC出資会社の取込損益 | 持分法による投資損益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | − | 560 | IFRSの適用初年度に比較期間として開示された数値 |
| 2015年3月期 | − | 101 | 期中の2015年1月20日に3社間の戦略的業務・資本提携を決議した |
| 2016年3月期 | 404 | 1,477 | 第3四半期からCITIC Limitedの持分法適用を開始。取込損益は翌期有報の前期欄 |
| 2017年3月期 | 629 | 1,852 | |
| 2018年3月期 | 679 | 2,162 | |
| 2019年3月期 | △850 | 981 | CITIC Limitedに対する持分法投資の減損損失を取込損益に含む |
| 2020年3月期 | 664 | 2,059 | 減損の反動で取込損益が回復した |
出所:伊藤忠商事 有価証券報告書 第91〜97期(連結損益計算書・主要な関係会社の取込損益)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- 伊藤忠商事 有価証券報告書「第91期(2015年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
- 伊藤忠商事 有価証券報告書「第92期(2016年3月期)【業績等の概要】」
- 伊藤忠商事 有価証券報告書「第94期(2018年3月期)【関連会社及びジョイント・ベンチャー】」
- 伊藤忠商事 有価証券報告書「第95期(2019年3月期)【業績等の概要】」
- 伊藤忠商事 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【持分法で会計処理されている投資】」
- 伊藤忠商事 有価証券報告書「第97期(2021年3月期)【関連会社及びジョイント・ベンチャー】」