米モチアイス最大手My/Mochiの買収(2026年・森永製菓の決断)

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論点 米国冷菓のバリューチェーンを買収で得るか
森永製菓:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
赤字続きの米国最大手モチアイス会社の取得と米国冷菓市場への参入

何をなぜ決めたか:赤字続きの米国最大手モチアイス会社の取得と米国冷菓市場への参入

概要

2026年3月6日、森永製菓が取締役会で、米国最大手のモチアイス製造企業The Mochi Ice Cream Company, LLC(My/Mochi)の全持分を間接的に保有するMyMo Holdco, Inc.の全株式を、MyMo Parent, LPから取得すると決議し、同日付で株式譲渡契約を締結した経営判断。対価は普通株式の130百万米ドルで、アドバイザリー費用等の概算5百万米ドルを加えて135百万米ドル。2026年4月1日に株式を取得し、議決権100%の子会社とした。

背景

2021年に掲げた「2030経営計画」は、2030年に売上高3,000億円以上、海外売上高比率25%以上を目標に置き、米国事業を重点領域の一つに定める。米国事業の芯は「HI-CHEW」で、森永アメリカフーズでは現地生産を広げる第2工場の建設を進めていた。ただ2026年3月期の米国事業は、売上高が前年から3.5%減の20,214百万円、営業利益は米国の関税政策の影響や販売促進費の増加で57.3%減の1,310百万円に落ちた。

内容

My/Mochiの前身は老舗の和菓子店MIKAWAYAで、創業は1910年。高品質で多様なフレーバーのプレミアムモチアイスを主力に、全米の大手小売への配荷と米国内の製造体制を持ち、米国モチアイス市場でシェア1位にある。取得の目的は米国におけるバリューチェーンの獲得で、国内の冷菓で培った知見と、2008年に始めた米国事業で築いた小売との関係を組み合わせ、既存商品の魅力向上と安定供給、コストの最適化、高付加価値の新商品開発を図る。取得前に資本・人的・取引の関係はなかった。

含意

買った会社は3期続けて営業赤字で、売上高は2023年6月期の73百万米ドルから2025年6月期の60百万米ドルへ減り、営業損失は△12、△25、△13百万米ドルと推移した。2025年6月末の純資産は26百万米ドル、総資産は126百万米ドルで、対価130百万米ドルは純資産の5倍にあたる。資金は取得日に三菱UFJ銀行から23,937百万円を期間1年で借り入れた。のれんの額と取得資産の公正価値は2026年3月期の有価証券報告書の時点で確定していない。

いつ何が起きたか 6件
当時の取締役 9名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

考察:利益ではなく冷凍の販路を買う
考察

考察:利益ではなく冷凍の販路を買う

3期続けて営業赤字の会社に、純資産26百万米ドルの5倍の対価を払った。この取得は利益を買う判断ではなく、米国で冷菓を作り、全米の店頭まで届ける仕組みを買う判断とみるべきだろう。「HI-CHEW」は常温の菓子で、国内で強い冷菓を米国へ持ち込むには、冷凍の製造と配荷の網が別に要る。それを一から築く年月を、1910年創業の和菓子店に始まる会社の工場と販路で置き換えた。米国事業の減益の年に踏み切ったのは、HI-CHEW一本の米国事業の限界を会社自身が認めたからとも読める。

もっとも、引き受けたのは損失でもある。My/Mochiの営業損失は2025年6月期に13百万米ドルで、取得時の支払レートで換算すれば、2026年3月期の米国事業の営業利益1,310百万円を上回る規模になると思われる。売上高は3期で73百万米ドルから60百万米ドルへ減っており、商品力と供給の立て直しが先に立つ。のれんの額はまだ確定しておらず、取得の資金は1年の借入で賄った。2027年3月期の海外売上高比率16%以上という中計目標に、赤字の売上がどう効くかが最初の試金石になる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
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図と表

森永製菓:MyMo Holdcoの業績

売上高(百万米ドル)営業利益率(%)

売上高は3期で60百万米ドルへ減り、営業損失は2025年6月期に13百万米ドル

森永製菓:MyMo Holdcoの業績
(百万米ドル) 売上高営業利益 備考
2023年6月期 73△12 親会社株主に帰属する当期純利益は△19
2024年6月期 61△25 親会社株主に帰属する当期純利益は△32
2025年6月期 60△13 親会社株主に帰属する当期純利益は△19。純資産26、総資産126
出所:森永製菓 臨時報告書(2026年3月6日提出、子会社取得の決定)
出所:森永製菓 臨時報告書(2026年3月6日提出、子会社取得の決定)

森永製菓:米国事業の売上高と営業利益

売上高(百万円)営業利益率(%)

2026年3月期の米国事業は営業利益が1,310百万円へ57.3%減った

森永製菓:米国事業の売上高と営業利益
(百万円) 売上高営業利益 備考
2024年3月期 19,1873,240
2025年3月期 20,9563,064
2026年3月期 20,2141,310 関税政策の影響と販売促進費の増加で減益。My/Mochiは含まない
出所:森永製菓 有価証券報告書 第176期〜第178期(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、米国事業)
出所:森永製菓 有価証券報告書 第176期〜第178期(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、米国事業)

森永製菓:連結キャッシュ・フローの推移

営業CF(百万円)投資CF(百万円)財務CF(百万円)

2026年3月期の営業CFは23,637百万円、期末の現金同等物は25,726百万円

森永製菓:連結キャッシュ・フローの推移
(百万円) 営業CF投資CF財務CF 備考
2021年3月期 12,127△19,862△4,084
2022年3月期 24,8259,312△5,943
2023年3月期 △2,966△14,209△7,348
2024年3月期 30,174△5,345△14,073
2025年3月期 10,763△9,837△18,008
2026年3月期 23,637△14,289△13,236 米国第2工場の建設で投資CFが膨らむ。取得の支払は翌期
出所:森永製菓 有価証券報告書 第176期・第178期(主要な経営指標等の推移)
出所:森永製菓 有価証券報告書 第176期・第178期(主要な経営指標等の推移)

森永製菓:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

のれんは2023年3月期から0で、この取得で再び計上される

森永製菓:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2021年3月期 −−202,910 のれん・無形固定資産はCSVのみ。有報の逐語で照合できていない
2022年3月期 −−214,300 のれん・無形固定資産はCSVのみ。有報の逐語で照合できていない
2023年3月期 0839205,226 のれんは当期に償却98を終え、期末残高なし
2024年3月期 02,015223,644
2025年3月期 04,075209,986
2026年3月期 03,710225,921
出所:森永製菓 有価証券報告書 第176期〜第178期(連結貸借対照表、報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報)
出所:森永製菓 有価証券報告書 第176期〜第178期(連結貸借対照表、報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報)
当時の取締役 9名

当時の取締役(2025年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

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