High Liner Foodsの買収(2026年・Umiosの決断)

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Umios:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
スケソウダラの半製品販売から北米の冷凍水産加工・販売への川下進出2026年10月26日、Umiosは取締役会で、新設する持株会社を通じてカナダのHigh Liner Foodsの発行済株式の100%を取得し、完全子会社とする手続きの開始を決めた。同日、相手方との間で合意内容を定めるArrangement Agreementを締結した。取得価額は1株27.00カナダドル、28,004,871株で約804百万カナダドル(約890億円)となり、資金には主として有利子負債と手元資金を充当する。

何をなぜ決めたか:スケソウダラの半製品販売から北米の冷凍水産加工・販売への川下進出

概要

2026年10月26日、Umiosは取締役会で、新設する持株会社を通じてカナダのHigh Liner Foodsの発行済株式の100%を取得し、完全子会社とする手続きの開始を決めた。同日、相手方との間で合意内容を定めるArrangement Agreementを締結した。取得価額は1株27.00カナダドル、28,004,871株で約804百万カナダドル(約890億円)となり、資金には主として有利子負債と手元資金を充当する。

手続きはノバスコシア州会社法に基づくPlan of Arrangementで、全株主の株式を現金で取得する。発行済株式の約45.4%を保有する株主とは議決権行使支持契約を締結したが、実行には相手方の株主総会での投票総数の75%以上の承認と、裁判所・規制当局の承認が要る。株式の取得は2027年1月の予定で、2027年3月期第4四半期にあたる。取得はまだ完了していない。

背景

北米スケソウダラ事業は米ベーリング海のスケソウダラ資源の約26%にアクセスする権利を持つ。ただし北米の川下はカニカマの加工・販売に限られ、フィレは高次加工・販売の機能を持たず、半製品での販売が中心だった。同事業は2025年3月期に営業損失を計上し、2026年3月期に30億円以上の収益改善を達成したが、同年度の水産資源セグメントのROICは約2%にとどまった。

北米の足場は二つの源流が築いた。ニチロは1979年にピーターパンシーフーズを子会社化し、大洋漁業は1985年から1990年にかけてトランスオーシャンプロダクツなど北米会社4社を設立した。2007年10月にマルハグループ本社がニチロと経営統合した。2021年にはピーターパンシーフーズの鮭鱒事業を事業譲渡で撤退し、北米事業の赤字を解消した。

内容

High Liner Foodsは1899年創業で、カナダのノバスコシア州ルーネンバーグに本店を置き、冷凍水産品・冷凍食品の調達・加工・販売を営む。米国の市販用冷凍水産品と業務用冷凍食品(水産加工)で第1位、カナダの市販用冷凍水産品で第1位にあり、生産拠点を3か所持つ。スケソウダラの取扱比率は同社事業の約3割で、ほかの水産物も幅広く扱う。

2025年12月期の連結売上高は1,026,899千米ドル、連結営業利益は60,437千米ドル、連結純資産は409,010千米ドルだった。Umiosとの資本関係・人的関係はない。取得の目的は、スケソウダラ資源を北米市場で付加価値の高い商品として届ける体制と、調達から消費者の食卓までを担う垂直統合型の事業の構築である。

含意

2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画は、成長投資に1,400億円を割り当てた。2026年5月には、その56%を主に北米を中心とした川下強化に充てる方針を示した。今回の取得は成長投資1,400億円の枠内で実行し、株主還元方針は変えない。2026年6月にはマレーシアのPet World Internationalの株式51%の取得も決議しており、同じ年に海外の買収が2件続いた。

取得後の売上高の海外比率は、Umiosの2026年3月期実績とHigh Liner Foodsの2025年12月期実績を1米ドル=158円で合算した参考値で、25%から34%へ上がる。連結業績への影響は精査中で、開示されていない。同業の日本水産は2001年10月、米国首位の「ゴートンズ」とカナダ2位の「ブルーウォーター」をユニリーバグループから買収していた。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:半製品の販売から最終製品の販売へ

この決断は、天然資源を持つ会社がその価値を原料の段階で回収するか、最終製品まで自ら担うかという問いへの答えである。Umiosは米ベーリング海のスケソウダラ資源の約26%にアクセスしながら、北米ではフィレを半製品で販売するにとどまり、水産資源セグメントのROICは約2%だった。会社は約804百万カナダドルで米国の市販用冷凍水産品第1位の会社を取得し、川下を自社で育成せず、買収で取得すると決めた。取得の実行は2027年1月の予定で、成否はまだ決まっていない。

北米の事業は、二つの源流が別々に築いた。ニチロは1979年にピーターパンシーフーズを子会社化し、大洋漁業は1985年から1990年にかけてトランスオーシャンプロダクツなど北米会社4社を設立した。2007年10月の経営統合で両者は同じグループになったが、2021年にピーターパンシーフーズの鮭鱒事業は事業譲渡で撤退した。今回の取得はその撤退と対になる。撤退は赤字事業の切り離しだったのに対し、今回は利益を上げている会社の買収で、北米の事業を鮭鱒ではなくスケソウダラの川下で広げ直す判断と読める。

同業の日本水産は2001年10月、米国首位の「ゴートンズ」とカナダ2位の「ブルーウォーター」をユニリーバグループから買収した。北米の冷凍水産品のブランドを買収で取得する方式は同じで、時期には四半世紀の開きがある。違いは順序にある。日本水産が売り場を持つブランドを先に取得したのに対し、Umiosはベーリング海の資源アクセスという川上を先に持ち、売り場を後から加える。この順序が調達の相乗効果を生むかどうかは、取得の完了後に開示される連結の数字で問われることになるだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

Umios:北米の売上高と全体に占める比率

Umios:北米の売上高と全体に占める比率

北米(百万円)北米の比率(%)

北米の売上高は2026年3月期に762億円で、全体の6.9%にとどまる

Umios:北米の売上高と全体に占める比率
(百万円)北米売上高合計備考
2022年3月期42,386866,7022021年にピーターパンシーフーズの鮭鱒事業から撤退した翌期
2023年3月期62,6921,020,456
2024年3月期52,9751,030,674
2025年3月期70,2051,078,631北米スケソウダラ事業は営業損失を計上
2026年3月期76,2601,105,890北米の比率は6.9%。前期から30億円以上の収益改善
出所:マルハニチロ 有価証券報告書 第79期〜第81期・Umios 有価証券報告書 第82期(セグメント情報等【関連情報】地域ごとの情報)
出所:マルハニチロ 有価証券報告書 第79期〜第81期・Umios 有価証券報告書 第82期(セグメント情報等【関連情報】地域ごとの情報)
Umios:のれんと無形固定資産の推移

Umios:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

決議前の2026年3月期末ののれんは76億円で、総資産の1%程度

Umios:のれんと無形固定資産の推移
(百万円)のれん無形固定資産合計総資産備考
2022年3月期7,96522,032548,603
2023年3月期8,86831,728637,227
2024年3月期7,52932,059671,801
2025年3月期5,72831,322681,211
2026年3月期7,62233,280751,702取得を決める前の期末。High Liner Foodsの連結純資産は409,010千米ドル
出所:マルハニチロ 有価証券報告書 第79期〜第81期・Umios 有価証券報告書 第82期(連結貸借対照表)
出所:マルハニチロ 有価証券報告書 第79期〜第81期・Umios 有価証券報告書 第82期(連結貸借対照表)
当時の取締役10名

取締役10名(2026年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務池見賢取締役:代表取締役業務執行:社長担当:
安田大助取締役:代表取締役業務執行:社長執行役員担当:
小梶聡取締役:取締役業務執行:専務執行役員担当:
山嵜睦取締役:監査等委員業務執行:担当:常勤
独立役員Bradley Edmister法曹取締役:取締役業務執行:担当:非常勤
奥田かつ枝金融取締役:取締役業務執行:担当:非常勤
外ノ池佳子法曹取締役:取締役業務執行:担当:非常勤
高松信彦取締役:取締役業務執行:担当:非常勤
大野泰一金融取締役:監査等委員業務執行:担当:常勤
木村吉男取締役:監査等委員業務執行:担当:常勤
この一覧は2026年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

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