日立製作所日立Astemoへのホンダ3社統合:自動車部品事業に外部資本を入れ、持分を100%から66.6%へ薄めて規模を取った統合

更新:

時期 2019年10月
当時の社長 東原敏昭
論点 自動車部品事業の規模と資本構成
概要

2019年10月30日、日立製作所と子会社の日立オートモティブシステムズは、本田技研工業並びにホンダの関連会社であるケーヒン、ショーワ、日信工業との間で経営統合契約を締結した。2021年1月1日に日立オートモティブシステムズを吸収合併存続会社、ホンダ関連会社3社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を実施し、日立Astemoが発足した。

対価は日立Astemoの普通株式196,058百万円で、現金の支出はない。統合後の日立の所有持分は66.6%となり、それまで100%だった子会社に3分の1の外部資本が入った。

背景

統合の目的に掲げたのは、CASE分野においてグローバルで競争力のあるソリューションの開発・提供を強化することである。日立のオートモティブシステム事業は外部顧客売上が2016年3月期に1兆円を超えたあと、2019年3月期まで9,000億円台で足踏みし、セグメント損益も2018年3月期の42,429百万円と2019年3月期の85,361百万円で倍近く振れていた。

2020年3月期には報告セグメントの区分変更で独立した区分を失い、ライフセグメントに含められている。単独では規模も収益も安定しない事業だった。

内容

発行した普通株式の公正価値は、ケーヒンが88,747百万円、ショーワが59,062百万円、日信工業が48,242百万円で、日立とホンダが合意した評価額に基づいて算定した。取得した資産は846,091百万円、引継いだ負債は546,213百万円、のれんは44,698百万円が損金不算入で計上された。非支配持分は103,820百万円である。

旧日立オートモティブシステムズに対する持分が100%から66.6%へ下がったことに伴い、資本剰余金が117,865百万円、非支配持分が81,242百万円増加した。取得関連費用は統合前を含めて8,192百万円を要している。

含意

統合の効果は売上に出た。オートモティブシステムの外部顧客売上は2021年3月期の982,316百万円から、通年で寄与した2022年3月期に1,591,093百万円、2023年3月期には1,915,254百万円へ伸びた。セグメント損益も2022年3月期62,346百万円、2023年3月期73,447百万円と回復している。

もっとも日立はこの事業を抱え続けなかった。2023年10月16日に株式の一部を譲渡し、日立Astemoは連結子会社ではなくなって持分法適用会社となる。2025年3月期のセグメント情報では、オートモティブシステムの欄に数値の記載がない。

筆者の見解

持分を薄めて買った時間

この統合で日立が手放したのは現金ではなく、支配の濃さである。対価は株式196,058百万円で現金の支出はなく、代わりに持分が100%から66.6%へ下がった。単独では9,000億円台で足踏みし、2020年3月期にはセグメントの独立区分すら失った事業に、規模と顧客基盤を一度に足すための選択だったとみられる。実際に通年で寄与した2022年3月期の外部顧客売上は1兆5,910億円と、統合前の1.6倍に達した。のれんが44,698百万円と取得規模のわりに小さく収まったのも、現金ではなく株式で持分を割ったからである。

もっとも、規模を取った先で日立が選んだのは保有の継続ではなかった。2023年10月16日に株式の一部を譲渡し、日立Astemoは持分法適用会社となる。統合から2年9か月である。この間に日立はABBのパワーグリッド事業とGlobalLogicを取り込み、日立建機と日立金属を手放していた。自動車部品は、規模を作ってから外へ出すという道筋の上にあったのかもしれない。100%子会社のまま抱えていたら、この持ち替えはもっと重い決断になっていたはずである。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

統合の条件

科目 概要 備考
経営統合契約の締結 2019年10月30日 日立及び日立AMSと、ホンダ並びにケーヒン、ショーワ、日信工業が締結した
統合の目的 CASE分野でのソリューションの開発・提供の強化 グローバルで競争力のあるソリューションを提供することを掲げた
結合の法的形式 日立AMSを存続会社とする吸収合併 ケーヒン、ショーワ、日信工業をそれぞれ吸収合併消滅会社とした
効力発生日 2021年1月1日 同日付で日立オートモティブシステムズは日立Astemo㈱へ商号変更した
取得の対価 196,058百万円 日立Astemoの普通株式。ケーヒン88,747、ショーワ59,062、日信工業48,242
統合後の所有持分 66.6% 統合前の旧日立AMSに対する持分は100%だった
資本剰余金の増加 117,865百万円 持分比率の低下に伴うもの。非支配持分も81,242百万円増加した
のれん 44,698百万円 損金不算入。主に超過収益力及び既存事業とのシナジー効果を反映した
取得した資産 846,091百万円 現金及び現金同等物158,503、有形固定資産231,139、その他の無形資産64,216
引継いだ負債 546,213百万円 流動負債229,550、長期債務273,791、その他の非流動負債42,872
非支配持分 103,820百万円 ホンダ関連会社の識別可能純資産の公正価値に対する持分割合相当額で測定
取得関連費用 8,192百万円 2021年3月期2,298、2020年3月期2,946、それ以前2,948の合計
プロフォーマ売上収益 9,225,776百万円 2020年4月1日に取得したと仮定した2021年3月期の連結売上収益。監査対象外
持分法適用会社化 2023年10月16日 株式の一部譲渡により連結子会社ではなくなった

出所:日立製作所 有価証券報告書 第151期(2020年3月期)・第152期(2021年3月期)・第153期(2022年3月期)【企業結合等関係】及び第155期(2024年3月期)連結財務諸表注記

日立製作所:オートモティブシステム事業の売上収益とセグメント損益

(百万円) 外部顧客に対する売上収益セグメント損益(EBIT)セグメント損益(Adjusted EBITA) 備考
2015年3月期 936,93435,019
2016年3月期 1,001,19253,947
2017年3月期 949,26865,830
2018年3月期 996,20242,429
2019年3月期 963,13185,361
2020年3月期 区分変更でライフセグメントに含められ、独立した報告セグメントの区分がない
2021年3月期 982,3164,340 2021年1月1日に統合。日立Astemoの寄与は3か月にとどまる
2022年3月期 1,591,09362,346 損益の測定値がEBITからAdjusted EBITAへ変わった期。EBITでは60,897
2023年3月期 1,915,25473,447
2024年3月期 1,160,00850,694 2023年10月16日に持分法適用会社となり、寄与は6か月余りにとどまる
2025年3月期 別掲は続いているが、持分法適用会社となり数値の記載がない
オートモティブシステム事業の外部顧客に対する売上収益
外部顧客に対する売上収益(百万円)

出所:日立製作所 有価証券報告書 第146〜156期(連結財務諸表注記 セグメント情報)

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出典・参考
  • 日立製作所 有価証券報告書「第151期(2020年3月期)【企業結合等関係】」
  • 日立製作所 有価証券報告書「第152期(2021年3月期)【企業結合等関係】」
  • 日立製作所 有価証券報告書「第153期(2022年3月期)【企業結合等関係】及び連結財務諸表注記 セグメント情報」
  • 日立製作所 有価証券報告書「第155期(2024年3月期)連結財務諸表注記 セグメント情報」

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