LSGアジア太平洋の機内食15社取得(2026年・神戸物産の決断)

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論点 未経験の機内食事業へ買収で参入するか
神戸物産:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
グルメ杵屋との合弁を通じた機内食への参入と海外調達網の拡充

何をなぜ決めたか:グルメ杵屋との合弁を通じた機内食への参入と海外調達網の拡充

概要

2026年3月31日、神戸物産が取締役会で、グルメ杵屋との共同出資による合弁会社を設立し、その合弁会社を通じてカナダ・香港・韓国・ニュージーランド・タイ・グアム・サイパンで機内食事業等を営む15社の株式を直接又は間接に取得することを決議し、同日付で株式譲渡契約を結んだ経営判断。合弁会社のMEAL HUBは4月8日に加古川市の本社所在地で設立され、8月3日に株式取得を実行して15社を連結子会社とした。取得原価は現金で307百万ユーロ、円換算で56,957百万円となる。

背景

グループ目標に掲げる「食の製販一体体制」に向け、神戸物産は国内の食品メーカーを相次いで取り込んできた。2025年4月には上原食品工業の全株式を現金700百万円で取得し、フラワーペーストや餡、レトルト調理食品を作る業態をグループに加えている。ただし機内食事業は営んでおらず、外食店と機内食事業を手がけるグルメ杵屋と組むことで、自社の工場運営と食材調達の機能を対象会社群に持ち込む形を選んだ。

内容

対象はLSGグループでアジア太平洋地域を受け持つLSG APACの15社で、2025年の売上高は3億5,000万ユーロ、機内食数は3,130万食、従業員は約3,500人にのぼる。取得した議決権比率はニュージーランド・カナダ・グアムなどの各社が100.0%、韓国が80.0%、香港の持株会社が86.9%で、カナダと香港の一部は実行日に航空会社から少数株を買い増した。合弁会社への出資比率は当初82%程度とされたが、6月25日に両社が計57,999百万円を払い込んだ増資の後は神戸物産75%・グルメ杵屋25%となった。

含意

対価は相手先との取り決めで決議時には開示されず、短信で初めて取得原価が示された。のれんの金額と取得関連費用はなお確定していない。第2四半期までに計上したM&A費用は約4.5億円で、連結への寄与は第4四半期から始まる。PB商品をメニューへ落とし込むには航空会社の見直しの時機を待つ必要があり、会社は 『ここに関しての収益化は、少なくとも来期以降かと考えています』 と答えて、売上と利益の合算を超える効果は来期以降とみている。9月には600億円のユーロ円建転換社債の発行を決め、手取金のうち約300億円をこの株式取得の資金に充てる。

いつ何が起きたか 6件
当時の取締役 11名

当時の取締役(2026年1月株主総会決議)

考察:機内食という名の新しい出口
考察

考察:機内食という名の新しい出口

この取得を外食への多角化と読むと、神戸物産の自己規定とずれる。会社は自らを小売ではなく食品製造業・食品卸とみており、作ったPB商品をどの出口へ流すかを収益の源泉に置いている。業務スーパーと外食・中食に続き、機内食をその3つ目の出口として買ったと読むのが筋だろう。取得原価56,957百万円は2025年10月期の営業CF42,113百万円を上回る規模だが、資金を一社で抱えずに機内食の経験を持つグルメ杵屋を25%で引き込んだのは、運営の知見を外から補うためと思われる。

もっとも、買った15社の稼ぐ力はそろっていない。韓国の会社は2024年12月期に営業利益率が5.6%まで下がり、ニュージーランドの会社は1.5%にとどまる。会社は利益率の高い事業になると見込むが、のれんの額も償却年数も確定しておらず、償却の重さ次第で寄与は大きくも小さくもなる。PB商品が機内のメニューに載るまでには航空会社の見直しの時機を待つ必要があり、効果を測れるのは早くても2027年10月期以降になるだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
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図と表

神戸物産:LSG Sky Chefs New Zealandの業績の推移

売上高(千ニュージーランドドル)営業利益率(%)

ニュージーランドの会社は2024年12月期に売上高185,990千NZドル、営業利益率1.5%

神戸物産:LSG Sky Chefs New Zealandの業績の推移
(千ニュージーランドドル) 売上高営業利益当期純利益 備考
2023年12月期 152,6351,6951,215 営業利益は臨報の表記で営業利益(税引前利益)
2024年12月期 185,9902,740△2,634
出所:神戸物産 臨時報告書(2026年4月6日提出、取得対象子会社の最近3年間の経営成績及び財政状態)
出所:神戸物産 臨時報告書(2026年4月6日提出、取得対象子会社の最近3年間の経営成績及び財政状態)

神戸物産:LSG Sky Chefs Koreaの業績の推移

売上高(千ウォン)営業利益率(%)

韓国の会社の営業利益率は35.5%から5.6%へ下がり、売上高も8%減った

神戸物産:LSG Sky Chefs Koreaの業績の推移
(千ウォン) 売上高営業利益当期純利益 備考
2023年12月期 68,158,51924,224,74618,803,567 営業利益は臨報の表記で営業利益(税引前利益)
2024年12月期 62,590,8483,480,3248,405,726
出所:神戸物産 臨時報告書(2026年4月6日提出、取得対象子会社の最近3年間の経営成績及び財政状態)
出所:神戸物産 臨時報告書(2026年4月6日提出、取得対象子会社の最近3年間の経営成績及び財政状態)

神戸物産:キャッシュ・フローの推移

営業CF(百万円)投資CF(百万円)財務CF(百万円)

2025年10月期の営業CFは42,113百万円で、取得原価56,957百万円に届かない

神戸物産:キャッシュ・フローの推移
(百万円) 営業CF投資CF財務CF 備考
2021年10月期 21,261△17,407△16,526
2022年10月期 21,582△12,483△3,752
2023年10月期 30,343△6,82180
2024年10月期 30,772△10,184△5,595
2025年10月期 42,113△8,918△11,100 上原食品工業を現金700百万円で取得
出所:神戸物産 有価証券報告書 第40期(主要な経営指標等の推移)
出所:神戸物産 有価証券報告書 第40期(主要な経営指標等の推移)

神戸物産:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

のれんは2025年10月期で483百万円、取得原価56,957百万円の1%に満たない

神戸物産:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2021年10月期 17884156,737
2022年10月期 121,041180,275
2023年10月期 71,509211,891
2024年10月期 2521,504233,392
2025年10月期 4831,731260,193 上原食品工業の取得でのれんが増加
出所:神戸物産 有価証券報告書 第36期・第38期・第40期(連結貸借対照表)
出所:神戸物産 有価証券報告書 第36期・第38期・第40期(連結貸借対照表)
当時の取締役 11名

当時の取締役(2026年1月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

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