ジー・コミュニケーション取得(2013年・神戸物産の決断)

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論点 外食10社の取得で外食へ本格参入するか
神戸物産:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
クックイノベンチャーを受け皿にした外食10社の取り込みと外食への本格参入

何をなぜ決めたか:クックイノベンチャーを受け皿にした外食10社の取り込みと外食への本格参入

概要

2013年、神戸物産が新設会社クックイノベンチャーを受け皿にジー・コミュニケーションの全株式を取得し、ジー・テイストなど上場3社を含む外食・教育の10社を連結子会社とした経営判断。業務スーパーに次ぐ売上規模の"クックイノベンチャー事業"セグメントが生まれ、外食への本格参入となった。

背景

神戸物産は2004年の惣菜店、2006年のビュッフェ業態と外食・中食を自前で試していたが、規模が出なかった。2013年10月期は円安で輸入仕入価格が高騰し、連結の営業利益が19億56百万円と前期比53.8%減になるなか、グループ工場で作る食材の出口を広げる必要があった。

内容

出発点は2013年2月15日にジー・コミュニケーションと結んだ支援に関する基本合意書で、スポンサーとして資金提供と資本参加を行い事業の再建を図る内容だった。企業結合日は2013年4月30日。クックイノベンチャーへの議決権比率は18.9%にとどめ、優先株式を含めると45.45%。優先株式には定款変更や合併、取締役の選解任に種類株主総会の決議を要する内容が付いていた。

含意

企業結合を行った主な理由は、神戸物産グループで生産した食材をジー・コミュニケーショングループの外食事業に対し提供することを通して更なる業績拡大を図るため、と有価証券報告書に記された。外食は第2の売上規模に育ったものの、セグメント利益率は本業の業務スーパー事業に届かず、7年後の2020年に全株式が譲渡された。買う判断と手放す判断が対で残る。

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考察:出口を買収した判断が残したもの
考察

考察:出口を買収した判断が残したもの

この買収の設計は、神戸物産の買い物の作法をよく表している。株式そのものの取得価額は5,000千円にすぎず、支配獲得日からみなし取得日までに実行した貸付金等66億17百万円と合わせて、取得のための支出は43億1百万円になった。議決権18.9%に優先株式を重ねて持分45.45%とし、重要事項には種類株主総会の決議を要する条件を付けて上場3社を含む10社を連結する——資本の量ではなく関係の設計で支配を成立させる買い方は、経営不振の食品工場を対価なしで引き受けて専用工場に組み替えた国内M&Aの連鎖と、発想の根が同じであるのだろう。円安で本業の営業利益が半減した年に、あえて売上169億円規模の出口を確保しにいった判断には、輸入依存の構造を国内の販路で補強する意図もうかがえる。

ただ、工場と違って外食は、買ってから作り替えることが難しかった。品目を絞って作ることに専念させれば済む工場に対し、外食は立地も業態も人も店ごとに違い、本部が原価と時間を握る製販一体の型に収まらない。通年で寄与した2014年10月期の売上高345億74百万円に対しセグメント利益は7億8百万円、2018年10月期には売上高274億54百万円に対し7億1百万円と、同じ期の業務スーパー事業の171億85百万円には遠く届かない。第2の売上規模に育てながら利益率で本業に並べず、7年で経営陣に譲渡した経緯は、この型の適用範囲を自ら確かめた実験であったともいえる。買収で広げ、売却で畳んだ一往復が、外食を"買って持つ"のではなく食材の供給先として付き合う現在の距離感につながっている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

神戸物産:業務スーパー事業とクックイノベンチャー事業の推移

業務スーパー事業の売上高(百万円)クックイノベンチャー事業の売上高(百万円)クックイノベンチャー事業のセグメント利益率(%)
神戸物産:業務スーパー事業とクックイノベンチャー事業の推移
(百万円) 業務スーパー事業の売上高クックイノベンチャー事業の売上高クックイノベンチャー事業のセグメント利益 備考
2008年10月期 105,540−− 外部顧客への売上高。この時点の報告セグメントは業務スーパー・リラクゼーション・神戸クックの3つ
2009年10月期 124,894−−
2010年10月期 137,158−−
2011年10月期 149,456−−
2012年10月期 155,705−−
2013年10月期 161,13416,905△51 クックイノベンチャー事業の連結は2013年4月から。業績は6か月分
2014年10月期 177,56234,574708 通年で寄与した最初の期。売上高は前期比104.5%増
2015年10月期 192,10834,4211,385
2016年10月期 203,61633,5081,184
2017年10月期 217,04032,4271,075
2018年10月期 236,62427,454701 業務スーパー事業のセグメント利益は17,185百万円
出所:神戸物産 有価証券報告書 第23期〜第33期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益)
出所:神戸物産 有価証券報告書 第23期〜第33期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
被取得企業 クックイノベンチャー・ジー・コミュニケーションほか8社 上場3社のジー・テイスト・ジー・ネットワークス・さかいを含む
被取得企業の事業内容 外食事業・教育事業 寿司・居酒屋・焼肉・ファーストフード等の業態を展開していた
企業結合を行った主な理由 グループで生産した食材の提供 ジー・コミュニケーショングループの外食事業に提供し更なる業績拡大を図るため
支援の基本合意日 2013年2月15日 スポンサーとして資金提供・資本参加等の経済的支援を行う基本合意書
企業結合日 2013年4月30日 連結財務諸表に含まれる業績期間は2013年4月1日から9月30日まで
企業結合の法的形式 株式の取得 新設したクックイノベンチャーがジー・コミュニケーションの全株式を取得
取得した議決権比率 18.9% 優先株式を含めた持分比率は45.45%
優先株式の議決権の内容 重要事項に種類株主総会の決議を要する 定款変更、合併、会社分割、株式交換・移転、事業譲渡、取締役・監査役の選解任
取得企業を決定した根拠 優先株式・貸付・役員派遣を含む関係性 議決権比率は18.9%だが、これらを勘案し企業集団各社を連結子会社とした
取得原価 4,405,107千円 対価は全額が現金及び預金
発生したのれん 43,530千円 取得価額と被取得企業に係る持分相当額との差額。一括償却
受け入れた資産合計 20,624,069千円 流動資産4,881,915千円、固定資産15,742,154千円
引き受けた負債合計 15,492,553千円 流動負債6,930,492千円、固定負債8,562,060千円
支配獲得後に実行した貸付金等 6,617,008千円 支配獲得日からみなし取得日までの間に実行された額
取得のための支出 4,301,456千円 株式の取得価額5,000千円と貸付金等から、受け入れた現金を控除した額
上場3社の追加取得 534,372千円 2013年7月31日。共通支配下の取引。負ののれん発生益44,080千円
ジー・テイストの追加取得 538,956千円 2013年10月31日。のれん111,988千円が生じ、翌期首に一括償却
通期換算した業績への影響 記載なし 当連結会計年度における概算額の算定が困難であるためと注記
出所:神戸物産 有価証券報告書 第28期(2013年10月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
出所:神戸物産 有価証券報告書 第28期(2013年10月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 神戸物産 有価証券報告書 第28期(2013年10月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【業績等の概要】
  • 神戸物産 有価証券報告書 第23期〜第33期(セグメント情報)
  • 神戸物産 有価証券報告書 第35期(2020年10月期)【沿革】【事業の内容】
  • 神戸物産 有価証券報告書「第28期(2013年10月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • 神戸物産 有価証券報告書「第28期(2013年10月期)【業績等の概要】」
  • 神戸物産 有価証券報告書「第23期〜第33期(セグメント情報)」
  • 神戸物産 有価証券報告書「第35期(2020年10月期)【沿革】【事業の内容】」

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