三菱UFJフィナンシャル・グループ バンクダナモン子会社化 インドネシア大手行の3段階での取得による議決権94.1%の掌握

更新:

時期 2017年12月
当時の社長 平野信行
論点 海外事業投資とアジアの成長取り込み
何をなぜ決めたか
概要

2017年12月26日、三菱UFJフィナンシャル・グループは平野信行社長のもと、子会社の三菱東京UFJ銀行を通じ、インドネシアの商業銀行バンクダナモンの発行済株式総数の73.8%を取得することを目的とする条件付株式売買契約を締結した。関係当局等からの許認可取得を条件に、取得は3段階に分けて実行された。

第一段階で19.9%を約1,334億円、第二段階で20.1%を約1,323億円、第三段階で54.0%を約3,970億円。2019年4月29日に議決権の過半を握って連結子会社とし、取得原価は6,645億円、取得後の議決権比率は94.1%となった。

背景

国内の預金と貸出の利ざやが細るなか、三菱東京UFJ銀行はタイのアユタヤ銀行の約77%、ベトナムのヴィエティンバンクの約20%、フィリピンのセキュリティバンクの約20%を保有していた。ASEAN最大の経済規模を持つインドネシアだけが空いていた。

進出から50年を数えながら、置けていたのはジャカルタ支店とスラバヤ出張所、そのほか9つの出張所にとどまる。出資の目的に掲げたのは、拡大する同国内のリテール及び中堅中小企業取引の基盤を確立することだった。当期利益でインドネシア第5位のバンクダナモンは、その基盤をまとめて手にできる相手だった。

内容

売り手はシンガポールのFullerton Financial Holdingsの完全子会社Asia Financial (Indonesia)ほかで、テマセクの傘下にある。価格はいずれの段階も純資産に対するPBR2.0倍へ一定の調整を加えた水準で、1株あたり第一段階8,323IDR、第二段階8,921IDR、第三段階9,590IDR。

第二段階で40.0%を握って持分法適用関連会社とし、第三段階で54.0%を積み増した。同じ日にアコムほかからバンクビーエヌピーの92.1%を約241億円で取得し、2019年5月1日にこれをバンクダナモンへ吸収合併させたことで、所有割合は94.1%に固まった。

含意

企業結合で認識したのれんは218,342百万円。受け入れた資産1,698,833百万円のうち貸出金が948,933百万円、引き受けた負債1,219,844百万円のうち預金が861,690百万円で、のれん以外の無形固定資産141,351百万円には代理店との関係79,552百万円が含まれる。

上場子会社であるバンクダナモンの株価は取得原価に比べ大幅に下落し、のれんは2020年3月期末に未償却残高の全額が償却された。一方で連結従業員数は19,180人増え、ASEANを中心とした商業銀行のプラットフォームが揃った。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

高い入場料と、保有の理屈

この判断の値段は、6,645億円という取得原価よりも、連結初年度に消えた2,128億円ののれんに出ている。純資産のPBR2.0倍という値付けは、支配権と将来の超過収益力にそれだけ払うという宣言であり、上場子会社を丸ごと抱える以上、株価が下がれば会計がそれを咎めることは初めから織り込めたはずだ。それでもMUFGがダナモンを提携先ではなく子会社として取りにいったのは、進出から半世紀を経てなお支店ひとつと出張所しか置けなかった国で、リテールと中堅中小企業の基盤を連結の内側に据える以外に手がなかったからだと推察される。

もっとも、償却を終えた帳簿は、その後の利益からのれんの重しを外す。連結初年度に受け入れた貸出金9,489億円と、19,180人の行員はそのまま残った。タイ、ベトナム、フィリピンに続いてインドネシアを埋めたことで、ASEANを中心とした商業銀行のプラットフォームは揃った。問いは、人口2億を超える市場に置いたこの一角が、過去最高益を重ねるアユタヤ銀行のような稼ぎ手へ育つかどうかに移っている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
段階取得の条件

段階取得の条件

科目 概要 備考
被取得企業 PT Bank Danamon Indonesia, Tbk. インドネシアの商業銀行。当期利益で同国第5位
売り手 Asia Financial (Indonesia) Pte. Ltd.等 テマセク傘下Fullerton Financial Holdingsの完全子会社。ダナモン株73.8%を保有
条件付株式売買契約の締結 2017年12月26日 関係当局等からの許認可取得を条件に、合計73.8%の取得を目的として締結
第一段階(2017年12月29日) 19.9%を約1,334億円で取得 1,907,344,030株を1株8,323IDR、総額15.875兆IDR。PBR2.0倍に調整を加えた価格
第二段階(2018年8月3日) 20.1%を約1,323億円で追加取得 1,926,513,316株を1株8,921IDR、総額17.187兆IDR。保有40.0%で持分法適用に
第三段階(2019年4月29日) 54.0%を約3,970億円で追加取得 5,174,089,400株を1株9,590IDR、総額49.620兆IDR。保有94.0%で連結子会社に
バンクビーエヌピーの取得 92.1%を約241億円で取得 2019年4月29日にアコムほかから取得し、5月1日にバンクダナモンへ吸収合併
企業結合日 2019年4月29日
企業結合の法的形式 株式取得による子会社化
取得後の議決権比率 94.1% 合併後の比率。企業結合直前は40.0%、追加取得分は54.1%
取得原価 664,578百万円 対価は全額現金。段階取得に係る差益2,105百万円を計上
主要な取得関連費用 2,748百万円 取得に直接要したアドバイザリー費用等
のれん 218,342百万円 当初20年の均等償却。2020年3月期末に未償却残高の全額を償却
のれん以外の無形固定資産 141,351百万円 代理店との関係79,552百万円(13年)、コア普通預金29,803百万円(9年)
受け入れた資産 1,698,833百万円 うち貸出金948,933百万円
引き受けた負債 1,219,844百万円 うち預金861,690百万円
連結に含めた業績の期間 2019年4月29日〜2019年12月31日 決算日は12月31日で連結決算日と3ヶ月異なる
通期換算した影響額 経常収益48,173百万円 経常利益4,296百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,563百万円

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第13期(2018年3月期)【経営上の重要な契約等】、第14期(2019年3月期)【重要な後発事象】、第15期(2020年3月期)【企業結合等関係】

のれんと無形固定資産の推移

三菱UFJフィナンシャル・グループ:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2015年3月期 309,1191,297,277286,149,768
2016年3月期 278,6281,254,727298,302,898
2017年3月期 267,3891,257,876303,297,433
2018年3月期 258,4171,246,676306,937,415 2017年12月に第一段階19.9%を取得。その他有価証券で、のれんは生じない
2019年3月期 237,3101,136,530311,138,903 2018年8月に40.0%へ。持分法適用関連会社のため、のれんは生じない
2020年3月期 283,6721,498,407336,571,379 ダナモン連結。のれん2,183億円は期末に全額償却し、残高には残らない
2021年3月期 273,0921,436,098359,473,515
2022年3月期 271,3531,344,225373,731,910
2023年3月期 252,0091,358,124386,799,477
2024年3月期 405,6291,671,372403,703,147
2025年3月期 530,3861,875,551413,113,501
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第10〜20期(連結貸借対照表)

アジア・オセアニアの経常収益の推移

三菱UFJフィナンシャル・グループ:アジア・オセアニアの経常収益の推移

(百万円) アジア・オセアニア経常収益日本経常収益 備考
2016年3月期 915,7453,514,541
2017年3月期 937,8483,525,065
2018年3月期 996,0753,485,808
2019年3月期 1,194,2973,477,989
2020年3月期 1,396,0333,830,397 ダナモンほか3社の連結で、連結従業員数が19,180人増えて138,570人に
2021年3月期 1,207,5093,258,653 ダナモンの貸出金残高は8,851億円と前期の10,169億円から減少
2022年3月期 1,195,6623,347,625 ダナモンの貸出金残高は9,187億円
2023年3月期 1,756,2364,613,149
2024年3月期 2,507,0825,148,480
2025年3月期 2,860,0305,962,665
アジア・オセアニアの経常収益
アジア・オセアニア経常収益(百万円)

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第11〜20期(セグメント情報等・地域ごとの情報)

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参考文献
出典・参考

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