三菱UFJフィナンシャル・グループ ユニオンバンク売却 MUFG——米西海岸リテールからの撤退と法人取引への集中
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2021年9月21日、米州MUFGホールディングス(MUAH)が保有するMUFGユニオンバンク(MUB)の全株式をUSバンコープ(USB)へ譲渡する株式譲渡契約を締結し、2022年12月1日に完了した。譲渡した株式は40,305,115株で、議決権所有割合は100%から0%になった。
対価は現金55億米ドルとUSB株式約44百万株(USBの発行済み株式の約3%)で、加えて譲渡から5年以内にUSBから35億米ドルを受領する。移転した資産は13兆6,398億円、負債は12兆9,818億円で、子会社株式売却益6,995億円を特別利益に計上した。
- 背景
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MUBを取り巻く事業環境は、デジタル化対応によるIT投資の必要性などにより、競争力の維持・強化には一定のスケールが求められる状況にあった。MUBをより強固な事業基盤を有する米国大手銀行USBに譲渡することが、MUBの潜在的なフランチャイズ・バリューを実現するために最適な選択肢である——そう判断したのが売却の理由である。中期経営計画で掲げた経営資源の最適配置の観点からも、米国では法人取引を中心とした事業ポートフォリオへシフトすることが、資本効率を高め株主価値の最大化に資するとの結論であった。
- 内容
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譲渡の対象はMUBにおけるリテール及びコマーシャル・バンキング事業で、グローバルCIB事業(一部預金等の例外を除く)、これに関連する市場業務、一部のミドル・バックオフィス機能は含まない。これらは譲渡に先立って三菱UFJ銀行およびMUAHへ移管され、移管された資産は3兆3,109億円、負債は5,037億円となった。
譲渡実行前にMUBはMUAHへ約46億米ドルの配当を実施している。分離した事業が含まれていた報告セグメントはグローバルコマーシャルバンキング事業本部で、2023年3月期の連結損益計算書に計上された分離事業の経常収益は4,229億円、経常損失は8,496億円であった。
- 含意
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貸出金残高のうちMUAHの分は2022年3月期末の9兆1,026億円から2023年3月期末に46億円へ落ち、翌期以降は内訳の記載自体が消えた。連結従業員数も135,049人から127,122人へ減った。
一方、対価に含めたUSB株式を通じて米国リテールとの関わりは残った。2023年8月3日には三菱UFJ銀行がUSBの第三者割当増資24,000,000株を約936百万米ドルで引き受け、USBへの出資比率は4.39%となった。この追加出資と同額の資金は、USBが5年以内に支払う35億米ドルの返済資金の一部として受領している。
いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
買収し、売却し、なお株で残る
この判断は、値段の話ではなく置き場所の話だとみるほうが実態に近い。1984年に三菱銀行がバンク・オブ・カリフォルニアを買って始めた米州リテールは、38年を経てMUAHの貸出金9兆1,026億円を抱える事業に育っていた。その全量を一度に外へ出し、譲渡は帳簿上6,995億円の売却益を残したが、分離した事業そのものは同じ期に8,496億円の経常損失を計上している。買い値を回収できたかどうかではなく、店舗と預金を抱えて金利とIT投資の波を正面から受ける位置から降りること自体に、この決断の意味があった。
もっとも、MUFGは米州リテールと縁を切ったわけではない。対価に含めたUSB株式は2023年8月の追加出資で出資比率4.39%まで積み増され、売った銀行が生む収益の一部を株主として受け取る形が残った。直接の経営から降りて出資と提携で薄く関わる——リスクと資本を軽くしつつ果実の一部を手元に残すこの形は、海外事業の畳み方として一つの解を示している。地域ごとの経常収益で米国は譲渡後も伸び続けており、米州から退いたのではなく、稼ぐ場所を法人取引へ移したというのが起きたことの中身であった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
事業分離の条件
事業分離の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 分離先企業 | U.S. Bancorp | 1929年4月2日設立の銀行持株会社。本店はミネソタ州ミネアポリス |
| 分離した事業の内容 | MUBにおけるリテール及びコマーシャル・バンキング事業 | |
| 譲渡対象から除いた事業 | グローバルCIB事業等 | 関連する市場業務と一部のミドル・バックオフィス機能。三菱UFJ銀行とMUAHへ移管 |
| 株式譲渡契約の締結 | 2021年9月21日 | 当初は2022年1〜6月の実行予定。許認可取得の継続で同年7〜12月へ変更 |
| 事業分離日 | 2022年12月1日 | |
| 事業分離の法的形式 | 金銭及び株式を対価とする株式譲渡 | |
| 譲渡株式数 | 40,305,115株 | 議決権所有割合は異動前100%、異動後0% |
| 受取対価(現金) | 55億米ドル | 加えて本株式譲渡から5年以内にUSBから35億米ドルを受領する予定 |
| 受取対価(株式) | USB株式約44百万株 | USBの発行済み株式の約3% |
| 譲渡実行前の配当 | 約46億米ドル | MUBからMUAHに対して実施 |
| 移転損益 | 子会社株式売却益 699,509百万円 | 譲渡株式の連結上の帳簿価額と売却額との差額を特別利益に計上 |
| 移転した資産の額 | 13,639,869百万円 | うち貸出金7,572,598百万円、有価証券3,123,184百万円。暫定的に算定 |
| 移転した負債の額 | 12,981,874百万円 | うち預金11,801,118百万円。価格調整が未完了で暫定的に算定 |
| 分離した事業に係る損益 | 経常収益 422,914百万円 | 経常損失849,624百万円。2023年3月期の連結損益計算書に計上した概算額 |
| 分離した事業の報告セグメント | グローバルコマーシャルバンキング事業本部 | |
| 三菱UFJ銀行等へ移管した資産 | 3,310,900百万円 | うち貸出金2,741,641百万円。共通支配下の取引として処理し、暫定的に算定 |
| 三菱UFJ銀行等へ移管した負債 | 503,791百万円 | うち支払承諾337,944百万円 |
| 継続的関与 | 対価の一部としてUSB株式を受領 | Transitional Service Agreement等を締結しサービスを提供・受領 |
| 譲渡後の追加出資 | 24,000,000株・約936百万米ドル | 2023年8月3日に第三者割当増資を引き受け。USBへの出資比率は4.39% |
出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第18期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】【事業分離等関係】、第19期(2024年3月期)【経営上の重要な契約等】
MUAHの貸出金残高と連結の貸出金残高
三菱UFJフィナンシャル・グループ:MUAHの貸出金残高と連結の貸出金残高
| (億円) | MUAHの貸出金残高 | 連結の貸出金残高(末残) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 88,029 | 1,092,094 | |
| 2018年3月期 | 88,090 | 1,083,977 | |
| 2019年3月期 | 94,259 | 1,077,731 | |
| 2020年3月期 | 95,154 | 1,094,744 | |
| 2021年3月期 | 83,614 | 1,075,965 | |
| 2022年3月期 | 91,026 | 1,115,466 | 2021年9月21日にMUB株式の譲渡契約を締結。売却目的保有への分類を開始 |
| 2023年3月期 | 466 | 1,104,241 | 12月1日に譲渡が完了。MUAHの貸出金は前期末比9兆560億円の減少 |
| 2024年3月期 | − | 1,183,956 | MUAHは貸出金の内訳に掲げられなくなった |
| 2025年3月期 | − | 1,229,440 | |
| 2026年3月期 | − | 1,352,949 |
出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第12期〜第21期(財政状態の分析・貸出金)
地域ごとの経常収益の推移
三菱UFJフィナンシャル・グループ:地域ごとの経常収益の推移
| (百万円) | 米国 | 日本 | アジア・オセアニア | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 1,087,602 | 3,525,065 | 937,848 | |
| 2018年3月期 | 1,154,219 | 3,485,808 | 996,075 | |
| 2019年3月期 | 1,467,759 | 3,477,989 | 1,194,297 | |
| 2020年3月期 | 1,439,081 | 3,830,397 | 1,396,033 | |
| 2021年3月期 | 1,070,419 | 3,258,653 | 1,207,509 | |
| 2022年3月期 | 1,098,812 | 3,347,625 | 1,195,662 | 2021年9月21日にMUB株式の譲渡契約を締結 |
| 2023年3月期 | 1,971,247 | 4,613,149 | 1,756,236 | 12月1日に譲渡が完了。米国はMUB離脱後も前期比872,435百万円の増加 |
| 2024年3月期 | 2,684,445 | 5,148,480 | 2,507,082 | |
| 2025年3月期 | 2,844,831 | 5,962,665 | 2,860,030 | |
| 2026年3月期 | 2,951,839 | 6,980,597 | 2,876,818 |
出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第12期〜第21期(セグメント情報等・関連情報)
連結従業員数の推移
三菱UFJフィナンシャル・グループ:連結従業員数の推移
| (人) | 連結従業員数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2017年3月期 | 115,275 | |
| 2018年3月期 | 117,321 | |
| 2019年3月期 | 119,390 | |
| 2020年3月期 | 138,570 | |
| 2021年3月期 | 138,161 | |
| 2022年3月期 | 135,049 | 2021年9月21日にMUB株式の譲渡契約を締結 |
| 2023年3月期 | 127,122 | 12月1日に譲渡が完了。連結従業員数は前期比7,927人の減少 |
| 2024年3月期 | 145,412 | |
| 2025年3月期 | 156,253 | |
| 2026年3月期 | 161,576 |
出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書 第12期〜第21期(従業員の状況)
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参考文献
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 2023年3月期 決算短信
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 2022年3月期 決算短信
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 適時開示「MUFG Union Bank 株式の譲渡契約締結および U.S. Bancorp 株式の取得について」
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 適時開示「MUFG Union Bank 株式譲渡契約締結に伴う2023年3月期第2四半期決算(日本基準)における損失の計上について」
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 適時開示「MUFG Union Bank 株式の譲渡および U.S. Bancorp 株式の取得の完了について」
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第17期(2022年3月期)【事業等のリスク】【重要な後発事象】」
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第18期(2023年3月期)【経営上の重要な契約等】【事業分離等関係】」
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ 有価証券報告書「第19期(2024年3月期)【経営上の重要な契約等】」