上場は資金を集める手段である、という前提から見ると、この判断は順序が逆に見える。資金が要らない仕組みをわざわざ組んだ会社が、その仕組みゆえに調達の必要を持たないまま市場へ出た——上場のねらいに置かれたのは、創業者の健康と、後継者の不在と、加盟店オーナーへの報い方であった。いずれも財務ではなく、会社に関わる人をめぐる問題であった。上場という制度が、資金調達の装置としてよりも、所有と承継を扱う装置として使われた例と推察される。
興味深いのは、必要としていなかった調達手段が、結果として最も効いたことである。上場の2年後に始まる国内食品工場の買収連鎖は、市場と接続していなければ同じ速度では進まなかったであろう。備えとして開けた扉から、想定していなかったものが入ってきた形になる。創業者一人に集まっていた株式を市場へ差し出す判断が、会社の続き方と成長の仕方を同時に書き換えた——2006年の上場は、その両方が動き出した地点として読み直せるといえる。