神戸物産クックイノベンチャーなど外食関連11社の売却と本業回帰
創業者が買収で広げた外食を、2代目はなぜ手放したのか
- 概要
- 2020年6月、神戸物産の沼田博和社長が、2013年に傘下へ入れた外食事業の中核クックイノベンチャーを同社経営陣へ売却し、関連11社を連結から外した。本業の業務スーパーより利益率が6ポイント近く低い外食を切り離し、自社で作って自社で売る本業へ経営資源を集めた判断。
- 背景
- 神戸物産は2013年に外食のクックイノベンチャーやジー・テイストを傘下へ入れ、業務スーパーに次ぐ売上規模の事業へ育てた。だが外食事業の利益率は本業を一貫して下回り、店舗網を広げるほど本業との収益差が開いた。
- 内容
- 2020年6月30日、クックイノベンチャーの全株式を同社と社長の杉本英雄氏へ譲渡し、傘下の外食関連11社を連結範囲から外した。譲渡価額は公表していない。事業構成を業務スーパー・エコ再生エネルギー・外食中食の3本柱へ絞った。
- 含意
- 2019年10月期に約2%だった外食の利益率に対し、業務スーパーは約8%。低収益事業の切り離しで連結の営業利益率は2019年10月期の6.4%から2021年10月期の7.5%へ上がり、本業集中が数字に表れた。
買って広げるより、作って売る本業へ
この売却の意味は、創業家の2代目が、父である創業者の広げた事業を自らの判断で畳んだ点にある。神戸物産の強さは、問屋を介さず自社の工場で作って自社の値段で売る製販一体にあった。買収で他社の外食を抱える多角化は、その強さの外側にある事業で、利益率の差がそれを数字で示していた。沼田博和社長は、規模を追って広げた事業を切り、本業の一点へ資源を戻す道を選んだ。
買収した事業を売る判断は、買ったときの経緯や社内の情への配慮から遅れやすい。神戸物産の場合、外食を手放したのが業務スーパーの伸びが際立った時期と重なり、本業へ資源を集める動きが増収増益として早く表れた。作って売る本業の外へどこまで手を広げるべきか——創業者が築いた事業を2代目が整理したこの判断は、多角化と本業集中の間で揺れるほかの企業にも通じる論点を残している。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
開いていく収益差
しかし外食事業の利益率は、本業の業務スーパーを一貫して下回った。クックイノベンチャー事業の売上高営業利益率は2015年10月期の約4%から2019年10月期の約2%へ下がり、同じ期に業務スーパー事業が約8%まで高めた収益力との差は6ポイント近くに開いた。店舗を増やすほど人件費や賃料が重く、外食は業務スーパーのように製造から握って安さを作る仕組みにはなじまなかった。多角化で広げた事業が、本業の収益力を薄める要因になっていた[3]。
決断
沼田博和社長による外食売却
2020年6月30日、沼田博和社長はクックイノベンチャーの全株式を、同社と社長の杉本英雄氏へ譲渡した。この譲渡でクックイノベンチャーと傘下の外食関連会社あわせて11社が神戸物産の連結範囲から外れた。適時開示では、一連の経営改善を経てクックイノベンチャーが自らの判断で事業を広げられる状態になったことを譲渡の理由に挙げている。譲渡価額は公表していない。創業者が買収で築いた事業を、2代目が経営陣へ引き渡す売却だった[4][5]。
3本柱への集約
外食の中核を手放したことで、神戸物産の事業構成は業務スーパー、エコ再生エネルギー、外食・中食の3本柱へ整理された。売却後も残した外食・中食は、焼肉「プレミアムカルビ」や惣菜「馳走菜」など自社で企画したブランドが中心で、他社を買って広げた外食とは性格を分けた。経営資源は、FC網で全国へ広げてきた業務スーパーと、製造を担う国内外の自社工場網へ振り向けられた[6]。
結果
本業集中と収益の改善
外食を切り離した神戸物産は、業務スーパーへ人と資金を集めて増収増益を続けた。連結の売上高営業利益率は、売却前の2019年10月期の6.4%から2021年10月期の7.5%へ上がった。業務スーパー事業の営業利益率も2021年10月期に約8.7%へ高まり、低収益の外食を抱えていた時期より収益構造は軽くなった。売上高は2020年10月期の3,409億円から2021年10月期の3,621億円へ伸びた[7][8]。
業務スーパーへの集中と店舗網の拡大
外食を切り離して身軽になった神戸物産は、人と資金を業務スーパーのFC出店へ振り向けた。2021年2月には宮崎大塚店の開店で業務スーパーが47都道府県すべてへの出店を果たし、2000年のFC1号店から21年で全国をカバーする網を築いた。同年8月には大阪市西成区に直営の天下茶屋駅前店を開き、FC一辺倒だった業態に直営を併用する形も加えた。2022年10月には函館田家店の開店で店舗数が1,000店に達し、国内のFC食品スーパーとして最大規模へ並んだ。低収益の外食を抱えていた時期には資源を割きにくかった規模の拡大が、本業への集中を通じて速まったとみることができる[9][10][11]。
売却の時期も、結果として本業への集中を後押しした。全株式を譲渡した2020年6月は、新型コロナウイルスの感染拡大で外食への需要が落ち込む一方、家庭で調理する内食への回帰が業務スーパーの売上を押し上げた時期と重なっていた。実際に業務スーパー事業の売上高は2020年10月期に前期の2,641億円から3,201億円へ伸び、外食を手放した神戸物産は市場の落ち込みを被らずに内食の伸びを本業で取り込む側に回った。買収で広げた事業を畳んだ判断が、需要の変化と重なって早く数字に表れたとみられる[12][13]。
- MAonline(2020年6月30日)
- MAonline(2020年9月18日)
- 神戸物産「連結子会社の異動(株式譲渡)」(2020年6月30日開示)
- 神戸物産 有価証券報告書【沿革】
- 神戸物産 有価証券報告書(連結)