積水化学工業 Ausbuild社の51%取得 豪州クイーンズランド州の宅地開発・住宅建設会社を足場にした工業化住宅の海外展開

更新:

時期 2026年9月
当時の社長 清水郁輔
論点 国内で培った工業化住宅技術の海外展開
何をなぜ決めたか
概要

2026年9月10日、積水化学工業が取締役会で、豪州クイーンズランド州(QLD州)の宅地開発・住宅建設会社Ausbuild社の持分51%の取得を決めた経営判断。取得は本買収のために設立する全額出資の子会社を通じて行い、Ausbuild社を連結子会社とする。取得対価は約335百万豪ドルで、将来は持株会社株式を追加取得して所有割合を90%に引き上げる予定である。

背景

住宅カンパニーは国内で累計68万棟を超える工業化住宅を供給してきた。中期経営計画「Accelerate 2028」(2026〜2028年度)はこの技術の海外展開を中長期の成長戦略の一つに置き、現地の住課題を解決できる市場とパートナーを探し続けてきた。QLD州は人口増加率が年2.0%(南東部地区)と高く、住宅の供給不足が深刻で、2032年にブリスベン夏季オリンピックも控える。建設労務費の高騰と人員不足のなかで、州政府は省施工・短工期のモジュラー工法に関心を示していた。

内容

Ausbuild社の2025年6月期は、Ausbuild Group Pty Ltd.の連結売上高が382,469千豪ドル、親会社株主に帰属する当期純利益が22,259千豪ドル、総資産が343,775千豪ドルで、Ausbuild Partners Pty Ltd.は土地開発を担う。創業者側3名の持株会社(Matthew Loney Ausbuild Pty Ltd.、Michael Loney Ausbuild Pty Ltd.、Matthew Bell Ausbuild Pty Ltd.)の株式を取得する形で51%を握る。

含意

狙いは三つ。①開発用地と販売・施工体制を使ったQLD州での戸建注文住宅・分譲住宅の拡大、②成長領域と位置づけるタウンハウス事業へのモジュラー工法の展開(法制度の整備を働きかけながら3年以内を目途)、③太陽光発電・蓄電池・HEMSと、排水・貯水の技術による省エネ住宅と水災害に強い分譲地の整備である。譲渡価格調整条項があり、取得価額は変動しうる。

いつ何が起きたか 2件
筆者の見解
筆者の見解

工業化住宅を海外へ出すための足場

買ったのは工場ではなく、現地で土地を持ち、売り、建てる仕組みそのものである。積水化学工業が国内で磨いてきたのは工場で箱をつくるユニット工法だが、豪州では法制度の整備を働きかけながら3年以内を目途に展開するとしており、技術をそのまま持ち込める状態にはない。まず現地で実績のある会社の持分の過半を握り、その商流の上に技術を載せる順序を選んだのは、技術の輸出より先に市場の入口を確保する判断だったと思われる。

もっとも、Ausbuild社の連結売上高は2024年6月期の400,293千豪ドルから2025年6月期には382,469千豪ドルへ減っており、対価約335百万豪ドルは同期の連結総資産343,775千豪ドルに近い大きさである。譲渡価格調整条項で取得価額が動きうる点も含め、この買収の成否は、モジュラー工法の展開が3年の目途で実現するかにかかっているのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

業績の推移
住宅事業セグメントの推移

積水化学工業:住宅事業セグメントの推移

(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2022年3月期 515,03835,318349,106 売上高は外部顧客への売上高
2023年3月期 537,06732,831376,083
2024年3月期 529,41627,729374,477
2025年3月期 523,91231,498402,712
2026年3月期 535,94437,150480,322 新築住宅市況の低迷下で増益。Ausbuild社は含まない
住宅事業の売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:積水化学工業 有価証券報告書 第100期〜第104期(セグメント情報、報告セグメントごとの外部顧客への売上高・利益・資産)

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参考文献
出典・参考
  • 積水化学工業 臨時報告書「臨時報告書(子会社取得の決定)」
  • 積水化学工業 有価証券報告書「第104期(2026年3月期)【経営方針】【セグメント情報】」

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